2話 スキルがゴミとはいえ殺処分は嫌だ
ここはどこだろうと観察していると、どうやらどっかの狭い部屋だった。
ドアがある。
そして、ドアを見ているとガチャリと開いた。
二人の大人、男と女が入ってくる、
「ぁ」
うわ、と叫ぼうとしたがまだまだ口が未発達な時期に俺はあるらしく、何も言えなかった。
「……あらスパイク!立てるようになったの?!」
女の方が大きな声を出す。
スパイク、というのは俺の名前らしい。
「これはすごい!他の子どもが立っていてもスパイクだけ立たなくて心配していたが……さっそくどんなスキルを持ってるか見なければ!」
男の方は嬉しそうだ。
彼らは親なのだろう。
なんかテンション上がっている。
そして俺は父親らしい人物に抱きかかえられスキルを確認するためどこかに連れて行かれることになった。
その道中両親は色々な事を話していた、それによるとどうやらこの世界の人間はスキルを生まれた時から持っているらしい。例えば【刀鍛治】や【近接戦闘】などである。
そしてそのスキルが何なのかは、子どもが歩けるようになってから調べる風習があるそうだ。
しかし美男美女な両親だ、俺の容姿も期待が持てる。
そして俺は両親に病院へ連れてこられ医者から注射された。
採取された血液を謎の機械らしきものにぶち込まれ、青い光が当てられた。
しばらくすると『スパイクさんのスキルは水ひっかけです』
と機械らしきものが呟いた。
その途端、両親らしき人物たちの顔が真っ青になり母親なんか泣き出した。
「ゴミスキルですね。殺処分してはいかが?」
医者がそう平気で言った。
さ、殺処分?!転生してすぐ?!困るんだが?!
「そんな!犯罪ですよ!?」
父が慌てる。
「少し昔話をしましょう、かつて生まれたばかりの子のスキルを診断してそれがゴミなら殺すと言うのが我が国では流行っていました……それは犯罪でしたがね」
医者は語りだす。
どうやら、スキルとやらはこの世界でずいぶん重要らしい。
そして、スキルがゴミの場合、将来の期待なしとして殺されることがある。
ま、まずい。
「……おや、理解できたようですな。聡明そうな顔通りの子だ……まぁいいでしょう話を続けます」
俺の驚愕した顔に気付いたのか医者はポツリと呟いて俺の顔を覗き込む
「紆余曲折あり、子供が歩き始めるまで能力の診断は行ってはならないという法律ができました。ある程度育てれば情も移りますからね。殺されるゴミスキルの子供は減りました……しかし」
しかし……なんだろう、医者は言いにくそうにタップリとタメる。
「水ひっかけスキルは後天的なスキル習得ができなくなるんです。なのにそのスキル自体も雑魚。将来性に期待をされず殺される子は未だ多い、あなた方もどうです?」
「「絶対に自分たちの子どもは殺しません」」
両親は揃って俺を庇った。
あ、ありがたい。
「でも水ひっかけスキルはゴミです、就職も恋愛も無理。あと間違いなくいじめられますね、つらすぎて自殺する前に殺してはいかが?」
なおもべらべら喋る医者を両親は睨みつける。
医者は黙った。
そして
「……残念だよ。僕は子供を殺すのがだーいすきなのに」
医者は俺の耳元でささやき、少し歯を当てた。
どれほどの唾液で口を満たしていたのだろう、べっちりょりとおれの耳はぬれた。
「ッ!!」
俺は後ずさりする、医者の表情は無。
何を考えているのかわからない不気味さだ。
こんなやつが医者として平気でのさばれる世界なのか、ここは。
まずい。
俺はとんでもない世界に来てしまったらしい。