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俺のゴミスキル、<水ひっかけ>は実は最強  作者: ガギグゲガガギ25
二章 水ひっかけスキルの真の力
13/24

13話 父さん救出作戦開始

 とある森に囲まれたかなり大きい村で夜に見回りが行われている。

 時々不審者やモンスターが入って来るから、見つけて対処するためである。


 普段は二人一組のグループを3つ作り、担当エリアの見回りをしているのだが先週からは10個のグループを作っている。


 そんな中、あるグループが人影を見かけて驚く。

 いてはならない人間が家の陰から顔を出していたからだ。

 その名はスパイク。

 この村の人間に家を焼かれ、殺されそうになった子どもがそこにいた。


 彼こそが見回りが強化されている理由である。

 スパイクが”復讐”のためこの村へ戻ってくるかもしれないと、村人たちは考えていたのだ。


 実際に復讐が出来るとは思っていない。

 〈水ひっかけ〉という雑魚スキルを持った子どもなど大した事などできないだろう。

 それでも確実に殺すために、村人たちはいた。


 そのスキルを持った存在そのものが不吉で、抹消すべきであると村の者全てが認識していたからだ。

 スパイクが同年代の人間に対し暴力を振るったという事実もあって、その認識は非常に強い。

 彼が暴力を振るう時やっているのは”自衛”なのだが、村の住民たちにとってはそんな事興味が無かった。


「俺はスパイクだ!お前らに家を燃やされて父さんを殺された復讐に来たぜ!!ぶっ殺す!」


 村人たちの想像通り、スパイクは物騒な事を言い出しす。

 発見者たちは笛を吹く、侵入者がいると他の面子に知らせるために。

 不幸を運ぶ<水ひっかけ>スキルの持ち主がそこにいる。


 〇スパイク〇


 俺は村の連中に復讐だの殺してやるだの適当な嘘言って、すぐさま影に隠れた。

 すぐ傍で待機させといたリンが無言で俺をおんぶし、<機動力強化>を使って逃げだす。


 もうさっきの連中は見えない、あっちからも俺達の姿が見えないだろう。

 俺達は子どもで身長が低い分、夜にまぎれやすくて有利だ。


 さて、これからまたどっかに隠れて、さっきみたいに村人を挑発しなきゃいけない。

 (スパイク)捜索に敵の人手を割かせるにはそうするのがベストだろう。


 俺達が父さん救出のために立てて来た作戦は『俺とリンで村の注意を引き、サキが父さんを救出する』というものである。

 だから父さんが村長宅の地下牢獄に監禁されているとサキのおかげで知っているのに、殺されたと思い込んでるような嘘をついた。


 ちなみにサキは村長宅の庭にとっくにスタンバイさせてる。

 俺とリンの起こす騒ぎにより、父さんを監視する目が緩んだら救出する手筈だ。

 村の連中がサキの存在を知らないので、意表がつけるはずだ。


 サキを信じて俺とリンは出来るだけ目立つのが役目。


 リンは自転車を思いっきりこぐような速さで村の中を駆ける、スタミナ消費を抑えるための控えめ走力がこれ。ホントはもっと速く走れるのだが、やんなくていい時も全力疾走させるのは無駄だ。


 おっと、遠くにさっきと別の村民が見える。

 向こうからは発見されてない。


「リン、ちょっと挑発したら左に逃げろ」

「うん」


 小声でリンとやり取りし、そして息を吸う。


「この俺、スパイクがお前らを殺しに来た!」


 俺は叫んだ、その瞬間リンは指示通り左へ駆ける。

 視界の端に移る村民たちの様子から、たぶん陽動は成功してる。


 これは俺の体が子どもなのもいい方向に働いているのだろう。

 俺に前世の知識があるなんて向こうは知らない、陽動なんて思いつかない年齢の子どもだと認識しているはずだ。


「スパイク。この後は?」


 リンが話しかけて来た。


「………まだ逃げる」

「誰も倒さなくていいの?」


 リンは疑問を呈しながらも、指示通り走ってくれる。

 俺の立てた作戦に重大な欠陥を見つけたとかじゃなく、単なる疑問の問いかけだな。


「まだ倒さなくていい。”スパイクが来た”って騒いでくれるヤツ減らすとダメだ、俺達はとっとと注目浴びたいからな」


 別に倒す事はやらなくていい。

 復讐に興味はあるが、それをやりに来たわけじゃない。

 家を燃やされたり家族をボコボコにされた分の仕返しはしたいが、こだわっちゃいけない。

 尋常じゃなくその件ムカついてるけど、我慢だ。

 父さんを救出するうえで、俺個人の怒りは無意味。


 前世の記憶があってよかった、もしも俺の精神年齢が今より若かったら無駄突進して死んでたかも。


 さて、そろそろさっきの連中も完璧に撒いただろう。


 後何度か挑発と隠れるのを繰り返していくか。


 俺はそれから、村人の前に出て煽るというのを何度もやった。

 ただ、吐き出すセリフは毎回変えた。


 例えば

「ここがホラー小説のモデルとなる村です。あっと……村人の皆さん私の言いたいことがわかってませんね?物語にされるほどの惨劇を私が起こすつもりなんですよ」

 と、悪役っぽくしてみたり。


「俺の事を子どもで何もできないとあなた方は思っているでしょう。でもあなた達は火を教えてくれた。子供でもアレは使える。ところでこんな夜更けじゃ例えばあなたの家に火がついてても気が付かないんじゃないでしょうか?………」

 適当に怖い嘘をついてみたり。


「復讐に来るのが夜で良かった。醜すぎて直視したくない連中ばっかりだなここは」


 みたいなことを言ったりして、できる限り俺が村の連中を殺したがっているかのように振る舞う。

 村の連中が躊躇とか無く、俺をすぐさま殺したくなるような言動を俺は意図的にする。

 めちゃくちゃ言うのは、正直ちょっと楽しかった。



 そして


「スパイク!敵が前に!」

「じゃあ右へ!」


 俺たちの作戦はうまくいっているようで、だんだん何処へ行けども敵がいるようになってきた。

 つまり俺たちに注目が集まっているという事だ。


「スパイク!また!」

「右にある家、窓蹴破って突っ切れ!」


 俺はリンに指示する、この村の地理はリンから聞いたしサキからの補足もあった。

 どうすれば長く逃げ回れるかルート把握はバッチリ。


「蹴破んの嫌だけど絶対しなきゃ無理?」

「………しなくてもいい、大した損じゃない」


 まぁリンは妙なところで正義感を発揮するので、俺のルート取りにちょくちょく反抗する。

 とはいえリンはある程度やりたいようにやらせたほうがパフォーマンスがいい。

 余程のタイムロスにならないならリンの意見も大切にしてたほうが損得の得が多いので、リンの意見はちゃんと聞く。


 そしてリンは民家を迂回するように走る。


「スパイク!前!二人敵がいる!」

「またか?!」


 ……進行方向を塞がれる頻度が多くなってきた。

 村の連中も馬鹿じゃないらしい、俺達をだんだん取り囲んできてるっぽいな。

 このままだとまずい、いくらリンの機動力が高かろうと囲まれたら逃げきれない。


 さて、これは作戦立てる時点で考えた状況だ。

 俺たちの作戦はここで分岐する、このまま村自体から離脱するもしくは留まって囮続行のどっちかに。

 2つの選択肢のうちどちらがいいのかは状況に応じて変わってくる、だからこの場で判断するのだ。


 状況を整理すれば答えは簡単だろう。


 まずサキからの父さんを救出した合図はまだない………向こうはごたついているはずだ。

 サキならそのうちどうにかするとは思うが、俺達が今逃げたらまずい。

 敵のうち勘のいい奴が”煽るばっかして逃げるってスパイクは何しに来たの?”と考えつくだろう。

 んで”父さんを助けに来た”とバレる。


 すると自然に父さんのいる場所に敵の戦力が割かれてしまい、流れでサキのとこに敵がなだれ込む。

 そしたら父さんを連れていけなくなるから作戦失敗だし、サキが殺される可能性もある。


 でも、囮を続けるのはそろそろ危険度があがってきた。

 逃げ回る余地が無くなってきた以上戦わないといけない状況も出て来る。

 つまりリンや俺が殺される可能性も出てくるわけで、戦いは最終手段である。


 そして俺達は………

「そろそろ戦うぞ」

「わかった」


 俺達は戦う事を選んだ。


 今退くと後できつくなる、まずさっき考えた通りサキが死ぬかもしれない。

 サキが死なないとしても、父さんの救出はほぼ無理になる。


 敵が今俺を追って来てくれてるのは”スパイクをすぐに排除したい”って思わせてるから。

 家を燃やすとか、放っておくとマズそうな脅しをしてるから俺への意識を裂いてもらえてる。


 でも一度退いてしまえば、冷静になった敵は態勢を整えるだろう。

 戦力は敵の方が多いから、整った盤面じゃこっちが不利。

 俺が父さんを助けようとしてると気づくヤツも出てくるはずで、そしたら父さんを人質として使ってくるだろう。

 とにかく困る。


「集合する隙をついて一人ずつやっていくんだ!!」


 俺は大声を出した。

 この声が敵にも届くように。


 ”スパイクが煽ったり逃げ回っていたのは、村民を誘導し効率よくぶちのめすためだった”と敵の賢いやつらに思って欲しい。

 とにかく父さんの方から敵の意識を逸らしたい、サキには今回の戦いで父さんを救出してもらわないといけない。


 さて、敵の気配があちこちからしてくる。みんな俺を殺しに来ているのだ。


 リンと協力すれば倒せる自信はある。

 根拠もある、それはサキのもたらしたデータだ。


 俺はサキに父さんの居場所を調べるついでに、村の連中がどんなスキルを持ってるかも探って貰った。

 それを頼んだのは作戦を立てるためだった。父さん救出を具体的にどうすべきか相手のスキル次第で全くといっていい程変わるからな。

 例えば<思考を読む>みたいなスキルを持った敵がいるなら、今回みたいな囮作戦はやっちゃだめ、本当にしたい事がモロバレになるから。

 ………そしてサキは恐るべきことに、村民のうち9割のデータを収集してきた。

 それを元にして、この陽動作戦を立てた。


 そしてデータのおかげで、リンに勝ち目のないスキルを持ちがまったくいないとわかったのだ。

 むしろ俺とリンの組み合わせなら有利にやれる敵の方が多い。

 つまり戦うという選択肢にも価値はある。


 まぁ1割ぐらいの村民については持ってるスキルが不明なので油断はできない。

 リンパパや村長、俺の父さんの転移を無効化したヤツのスキルは全然わからなかった。

 そういう1割の中に俺達の敗北を決定づける致命的なものがあるかもしれない。


 だが元々無茶な作戦なのだ。完璧な態勢で挑めるわけもない。

 ………そもそもそんな状況で挑める物事などあるのかは疑問だが。

 絶対にミスしない保証がなされた挑戦なんて、前世の時から出会った事が無い。

 だいたい失敗の可能性はあるし、失敗すれば取り返しがつかないし、責められたりなじられたりもする。

 物事とはそんなものだ。


 さぁ、ここから先は一つ失敗すると死がグイっと近づいてくる。

 何度も何度も死の刃が俺等を襲うはずだ。

 だがそんなもの踏み越えていこう。

後書き・補足―本編にいれるまでもない合間の話―

スパイクはサキが村人のスキルについて適当言いまくっている可能性も考えはしました、あまりにも素早く多くの情報を集められすぎだからです。


※救出作戦開始2日前から、スパイク父の居場所を探しながらだというのにサキは村人の9割のスキルデータを収集出来ている。


どうやって調べたのかスパイクが聞くと『医療記録と職歴を見ればアタリをつけられます』と答えて貰えました。

色々とあくどい事の手際が良すぎるので、サキが怪しい仕事についてるんじゃないかなとスパイクは思いました。

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