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俺のゴミスキル、<水ひっかけ>は実は最強  作者: ガギグゲガガギ25
二章 水ひっかけスキルの真の力
10/24

10話 明らかに隠し事があって怪しい女を仲間にするしかない

「スパイク、ここに何の用が?スパイクのパパを助けるためになんか意味あるの?」

「コレからわかる」


 俺とリンは、川がそばにある平原までやって来ていた。

 村から逃げ出した直後焚火をやったあの場所だ。

 コレから俺は、”あいつ”を仲間にしようと思うが街中じゃちょっと騒ぎになりそうなのでここに来た。


「……スパイク?」


 右手を川に突っ込み水を掬いつつ左手で草をむしる俺に、怪訝な声をリンが浴びせる。


「今日は俺が唯一持つスキル<水ひっかけ>の研究をする」

 俺は嘘をリンに伝えながら、むしった草を投げて<水ひっかけ>を使う。

 当然命中した。

 実はこれから<水ひっかけ>スキルを調べるつもりなんて、無い。

 この言葉は、"あいつ"を誘き寄せるエサだ。


 もっともあいつが来なければ本当に<水ひっかけ>スキルを調べつくす以外に、父さん救出の方法は無くなる。

 水ひっかけの研究をする、という方針が嘘じゃなくなる。


「特訓なんて時間あるの?」


 リンがもっともな疑問を呈する。


「特訓じゃなくて研究だ、俺はこれに隠された力があると睨んでる、それを調べる」

「……本気?本気でそこに成功の芽があると思ってる?そんなに確信が持てる?」

「ある。俺がこの決断をすることは、成功を呼び寄せる」


 俺は出来る限り、本気で水ひっかけスキルに賭けているかのように喋る。


「ん?」

 リンが声を漏らした、俺より気配に敏感なこいつは索敵も上手だ。

 あいつがようやくおでましか?


 足元の石ころが突如餅みたいに膨らみ始めた。


「うわ!」


 リンが驚いて飛びのく、俺はじっとその石ころを見つめていた。

 そうしていると、やはりスレンダー美人な姿に石ころが変わった。


 家を焼かれる数日前、村で出会った女だ。

 俺の<水ひっかけ>をゴミスキルだと思わせたがっているかのような振る舞いを取っていて、メチャクチャ怪しかったヤツだ。

 やはり現れたか。


 あの時の様子じゃ俺に対して何かしらの用があるっぽかったし、監視してるんじゃないかと思ってたぜ。


 石ころ女は冷たく鋭い、見下すような目で俺達を見つめる。

 そこにあるのは、何か強い意思なのだろう。

 場合によっては今視線の先にいる相手を殺すという意思、そう俺には感じた。


「スパイク、これってモンスター?!」

「違うぞ、リン」


 リンが臨戦態勢を取っていた、石が人型に変形すればそう誤解しても無理は無い。

だから町から離れた。


「リン、俺が助けを求めたら来れるギリギリの距離まで離れてろ。こいつを仲間にしたいんだけど、こいつは今からする話をリンに聞かれたくないはずだ」

「……あ、ああうん」


 とりあえず、リンがいるとややこしくなりそうなので離れていてもらおう。

 リンは素直にどこかに去った、機動力強化スキルの持ち主だからものすごい勢いだ。


 さて、この石ころ女を仲間にしようと俺は思っている。

 この石ころ女を仲間に出来たのなら、父さんを救出する成功率がかなりあがる。

 石ころに化けられるスキルを持ったヤツなわけだし、単純な戦闘力以外の面を補ってくれるはずだ。


 そもそも仲間に出来るかという問題があるが、わりと勝算はあるはずだ。

 こいつは俺の<水ひっかけ>スキルがゴミスキルだと必死で主張していたし、<水ひっかけ>は呪われたスキルだと言った。

 ……こいつは俺の<水ひっかけ>について詳しいし、何かをしようとしている。

 そして今ここで俺が<水ひっかけ>を研究しようとしたら現れた事で確信した、こいつは俺を監視をしていたのだ。

 そこら辺に交渉のヒントがあるはずだ。


「水ひっかけスキルの研究中にお前現れるよな?」

「はい、ゴミスキルの研究なんてゴミ時間を過ごす姿が哀れに思えまして」

「なぜ俺を監視してる?」

「ただのストーカーですよ。この前会った時にもストーカーだったからです」


 ただのストーカーなんてとぼけても無駄だ。

 改めて考えても、前回であった時の態度はおかしい。

 俺の<水ひっかけ>をゴミスキルだとはやしたてるお前の姿は、まるで水ひっかけはゴミスキルと”思わせたい”みたいだった。


 その事等から察するに<水ひっかけ>スキルには秘密があって、石ころ女は秘密を守ろうとしている……と考えられる。

 実際このスキルはとんでもない秘密があってもおかしくない代物だしな、神から直接貰ったヤツだし。


 ……さて、ここで俺は考えた。

<水ひっかけ>スキルの秘密を守るため、という理由があれば石ころ女は俺の仲間になってくれるんじゃないのかと。

 だから俺はこいつを呼び寄せた、水ひっかけスキルを知ろうとすることで。


「お互いの名前知らないのもなんだし自己紹介しようぜ、俺はスパイク」


 まずはとりあえず名前だけでも聞き出そう、石ころ女と呼び続けるのも面倒だ。


「まぁいいでしょう、私はサキです」


 石ころ女はサキと名乗った。

 なるほどサキか、偽名かもしれないが呼びやすくていい。


「いい名前だな、趣味はなんだ?俺は読書だ。」

「趣味なんてプライベートに口出しされたくないですね。それに珍しくも無い名前を褒めるなんて私が美しいからと言って下心満載な発言は気持ちがわるいですよ」

「自称ストーカーが何言ってんだお前」


 ついツッコミをしてしまった、サキはわりと曲者かもしれない。

 構わねーけどな、普通のヤツを仲間にしても役に立たない局面だろうし。


「サキ、俺はもうすぐ戦いに行くんだ。ストーカーなら知ってるだろ?」

「はい。あなたのお父様が攫われる場面は見ていました」

「真っ当なやり方じゃどうしようもないから水ひっかけスキルの研究してるのも知ってるよな」

「……はい、しかしなぜそんな事を?」

「俺には<水ひっかけ>に隠された秘密があると思うんだ。だから調べてる」

「ゴミスキルに無駄な時間を使っているんですか?……いくら鍛えようとアレは使い物にならない!!絶対にです!!」


 突如凄い勢いでサキはまくしたてる、やっぱりあのスキルには何かあるのだろう。


<水ひっかけ>はやけに見下されるという、特別な扱いをこの世界で受けている。

そして俺はその見下され方が、普通のものでないと感じるのだ。


「スキルが使い物にならないとしても戦うしかないし、ならせめてもの手段に賭けるしかないだろうが」

「いいえ、戦わなくてもいいはずです。あなたのお父様を見捨てれば全て解決だから」

「あ」


 ……サキに言われて、衝撃を受けた。

 俺はずっと父さんを助けようとしていて、見捨てるという選択肢は無かった。

 だけどそれをするというのは、正解じゃないか?

 あの村にもう一度行かずに済むのなら、とりあえず死の危険はぐっと下がる。

 父さんを救出しに行って俺も殺されたら結局何の意味も無いしな。


戦略的判断なら、父さんを見捨てるべきだ。


「おやおやスパイク、どうやら私の提案がかなり魅力的に聞こえたようですね?そうです、親を見殺しにしましょうよ」

「……俺はしない」


 だが、俺は父さんを見捨てたりしない。


「なぜ?なぜわざわざ死地に向かうんですか?無駄死にする可能性の方が高いのに?」

「死ぬかもしれない、それだけじゃ俺が止まる理由になれない」


 俺はただ、自分に正直なのだ。


「なら私がついていきましょう」

「え?」


 サキのその一言は唐突だった。

 俺が待ち望んだ提案をいきなりサキから出してきた。


「あなたがいくらゴミスキルを鍛えようと父親を助けられず死を迎えます、だけど私が仲間になればゴミスキルを鍛える必要も無いですし全て上手くいく」

「随分、あっさり決めるんだな」

「あなたの目は腐っているんですね、そう見えるだけです」


 もっと、成功報酬の話をしたり色々駆け引きの末にサキを仲間にしようと思っていたんだけどそうならなそうだ。


 もしかしてサキは何も考えていないから、俺の仲間になるなんて言い出したのか?

 もしそうならまずいぞ、今後どうするべきかに影響する。

 サキがただの考えなしなのか確認しておくか。


「わかっているのか、死ぬ事のある戦いだぞ。賃金だってちゃんと払えるものかわからない」

「それは私にとっていつもの事です、私にとって死地は日常なのです」

「……頼りにさせてもらうぜ」


 よかった、考えなしというわけではなさそうだ。

 よし、これでサキが仲間になった。

これなら父さん救出も上手くやれる。

 

 ……サキにはおそらく裏がある。

<水ひっかけ>スキルについての研究を妨害しようとして来るのは、それが原因だろう。

 だがその打算があるからこそ、金の話も無く父さん救出作戦に付き合ってくれる。

 戦力が揃っているならチームとして鍛えた方が父さん救出率が高い、よって<水ひっかけ>スキルを俺は研究しなくなるからだ。


 ……サキは怪しい女だ。

 なにがあっても信頼おけるとは言い切れない、素性もよく分からない。

 だけど、こいつ以外仲間にする条件が揃ったヤツ思いつかなかった。


 金が無くても協力してくれるうえ、役立つスキルも持っているだろうってのは俺の知り合いでこいつだけ。

 人材を選り好みする余裕はない。

 俺達は明らかに隠し事があって怪しい女を仲間にするしかない。

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