聖女みたいですが⋯何か?
初投稿です。
普通じゃない聖女が召喚されちゃったらどうなるのかなって考えて幼女よりも老婆にしてみました。
誤字脱字、変な表現、色々不備もあるかと思いますがゆるく読んで頂ければ幸いです
「聖女召喚」
その声は轟き辺り一面まばゆい光に包まれた。
描かれた魔法陣の中央に光の柱が降り立ち確かに何者かがそこにいる。
固唾を飲んで皆が見守るなかその国の第一王子が呟いた
「こ、これは!」
片瀬なる16歳。
私は今朝から楽しみにしてた小説の続きを読もうとベッドに転がった瞬間、光に包まれた、いや、軽い記憶を辿るとおそらくその光は車のヘッドライトのような気がする。
なぜ家の中に車が?
と思ったら「お前は何者だ!」と怒鳴られた。
えっ!誰?なになに?何がおきたの?
何者だって言われたけどイヤイヤこっちが聞きたい。
アンタ達、人の家に何勝手に入ってんの、変質者?泥棒?
なんかいかにも私は王子ですって格好した私と同じ年くらいの男の子にたずねると
「お前は何を言ってる、聖女ではないのか?なぜ老婆が!あー失敗なのかーどうすればいいどう元に戻せばいい。やり直せるのか?やり直したい!クリス!クリス!」
「はっ!殿下、ここに」
「あとは任せる。私は師団長の所に行く」
「畏まりました」
ボーッとした私は目の前で繰り広げられた意味のわからない会話を聞き頭の中はハテナが飛び交っていた。
チョット待ってなんか聴きづてならない言葉が聞こえた。老婆って何?ってかこのシチュエーションで何で私冷静なんだろ。怖さをまるで感じない。
「異世界転生?」
呟くと先程クリスと呼ばれた青年が私に話しかける
「お婆様立てますか?」
また老婆扱いかよって思いながらふと握りしめてた小説を見る。
んっ?小説はどうでもいい。握ってる手が、私の手が何故こんなにシワシワなの?
「鏡!鏡持ってきてよー」
次の瞬間ちからいっぱい叫んだ!
クリス青年から説明を聞いたのは転生してからまる一日が過ぎてからだった。
何故かというとあの後案内された豪華な部屋で鏡を見て私がひっくり返ったから、簡単に言うと気絶した。だって、だって、16歳のはずの私が見た鏡の中には物語に出てくる魔女のような風貌のお婆さんだったから、そりゃ現実逃避するでしょ。
起きてもそのままだったから絶望的な気持ちで聞いたクリスの話は、やっぱり異世界転生だった。
そして私が読もうと思ってた小説の中だった。
(彼には当然小説の事は話してない)
彼曰く、この国ファリウト王国では昔から100年〜200年毎に(アバウト〜)聖女を召喚して王族と婚姻させ国の繁栄を神殿に祈願する決まりらしい。
魔物や瘴気対策らしいのだけど、その辺は小説の触りの部分で読んだから知ってる(ちなみに小説のタイトルは思い出せないし、何故か持ってきた小説の表紙が真っ黒に塗られて読めない)
一回の召喚で国が平和を保てるのがその都度違うらしく期間がアバウトみたいで今回の召喚は実に300年振りなんだって、でもそんなの小説には出てなかったんだけど。前設定なのかなーと思いながら呆けてたら
「聞こえておりますか?老婆殿」
クリスに嗜められた。いや見た目老婆だけど普通にしっかり歩けてるし耳も目も大丈夫なんですけど。私の変化は見た目のみ!何度言ったらわかるのよ。
クリスにプンスカしながら
「聞こえてます」とかえすと「頭は大丈夫なのだろうか」と呟きが聞こえた。
ムカつくー勝手に呼んどいてそりゃないだろーと心の中で反論したつもりが声に出てた模様。
「申し訳ありません」と急に頭を下げられた。
彼曰く私と婚姻するつもりだった王子様は昨日から召喚のやり直しを模索して魔術師団に入り浸っているらしい。そりゃねぇーすこーしだけども同情する。歴代の聖女は美形&性格良しの方達だと言い伝えられてたのに自分が呼んじゃったのが見た目老婆の16歳なんだもんね。
でも可哀想なのは私も一緒でしょ、少しは様子を見に位の配慮が欲しいわ。と思ってたら
「おっしゃるとおりでございます。面目ない」
また声に出てたらしい。
「まぁいいわ。で、私はどうすればいいの?」と聞くと
「本日頃合いを見て陛下に謁見して頂きます。そのときに老婆様……聖女様の処遇が告げられるかと、、」
「わかりました。少し一人になりたいのだけど時間はありますか?」
「後ほど、参りますのでそれまでゆるりとお過ごしください」
クリスがドアを閉めたあと私はこらえてた涙を流す、おそらくあのヘッドライトは家に車が突っ込んだのだろう。そして私は死んだのかな。転生って生きてるそのままされるんじゃないのかなって悲しくて辛くてひとしきり泣いて落ち着いた頃考えた。あの小説には老婆設定もなかったし、魔物とか瘴気とかの話は出てきてない。ただの逆ザマァテンプレ小説だったはず、全部読んでないけど小説紹介ではそう書いてあったはずなのよ。じゃないと私が興味持って読むはずないもん。
では違う話なのかな?でも聖女召喚とファリウト王国、そしてクリスという従者の名前は一緒なんだよねー
んー考えてもわからないから考えるのをやめた。思考停止。とにかくこの老婆の姿なんとかしてほしい。まさかホントにこのまま一生これなの?
いやー考えたくない考えたくない考えたくない〜
ここも思考停止。って場合じゃない。ホントにどうにかならないのかな。謎のスキルとかないのかな、私一応聖女だよね、だって召喚されたもん、こんな時なんて言うんだっけマジで思い出せない。空間にスキルやらなんやら出るやつ、何で肝心なとこは思い出せないのよ!また泣けてきた。
クリスが出ていって軽く2時間位(体感)たった頃ドアがノックされた。
入出を許可すると可愛らしい女の子がクリスに連れられて入ってきた。
「聖女様。今後はこの者がなる様付きになります。メイドのマリーです。御用がありましたらマリーにお話ください。ではあと1時間程で陛下と王女様のお時間を頂戴できますのでその頃呼びに来ますね」
と云いたいことだけ言っていなくなった。
紹介された女の子はじっと黙ったままこちらを見てる。
これって私が何か言わなきゃいけないのかな。
「片瀬なるです、16歳です、よろしくお願いします」
簡単に自己紹介。特に年齢は大きな声ではっきりと言い切った!
声の大きさなのか、それとも年齢になのか少しびっくりしたような顔で目を見開きながら「マリーです、よろしくお願いします」と言ったあと懐っこい笑顔で「お腹空いてませんか?」とリゾットをテーブルの上にセッティングしてくれた。
そういえば私何も食べてない!かなりのがっつき具合でリゾットを3杯食べたあと湯浴みしてシルク(多分)のよく漫画で神官とかが着てるような服を着せられた。髪はあっという間にマリーが魔法で乾かしてくれて、フワッーっと感嘆の声を出した所でクリスがお迎えに来た。因みに湯浴みして気づいたが体も老婆でショックで少しの間顎が外れた。
案内されたのは豪華な応接室でよく漫画で見るような謁見室みたいなとこじゃなかった。仰々しくなくてチョットほっとした。
中に入ると見目麗しい男女が7名。
座ってるのが王様と王妃様、王子様2名に王女様と紹介された。王子の一人は昨日私に怒鳴ってた第一王子のライアス様で残りは第二王子のライアン様(名前ややこしいぞ)リアリア第一王女様だそうだ。
ソファの横に立ってる二人が魔術師団長のサンドルさんと宰相のジュートさんだって紹介された。
「片瀬なるです。16歳です」
またもや年を強調して私も自己紹介。
はい!皆さんの顔マリーといっしょー。いいけどね。諦めたよ(いや諦めたくない!全力で!)
「昨日召喚されたのが貴方だと聞いてます。こちらで召喚の際に不具合がなかったか調べましたが問題はありませんでした。年を聞いた所16歳というのは間違ってませんか?」投げやりな言い方でムッときたけどハッキリと間違いないと宰相に言い切った!フフン!
「陛下どうされますか?」
「………先程決めたとおりに」
「承知しました、聖女様先刻緊急会議にて議会で決まったことですが、本来なら聖女様は召喚の半年後に召喚した王族の方と婚姻式を行い合わせて神殿にて誓いの言葉とともに国の安寧祈願もしてもらい、のちはこの国で安らかに一生を過ごして頂く決まりなのですが、貴方様が少しばかり従来の聖女様と姿が異なりますので」
「少しどころではない!!」
宰相の説明の合間にライアス王子のチャチャが入った!
知らんがな、お前が呼んだんだろうと心の中で毒づいておく。
ん、んと咳払いの後宰相のお話再開
「今回は異例ではありますが召喚したライアス様ではなく第二王子のライアン様かこちらの魔術師団長のサンドルのどちらかを聖女様に選んで頂く事になりました」
えっ選択肢があるのもびっくりだけどこの二人とんだ流れ弾のとばっちりじゃないの!いいのかな?選んじゃって、恨まれないかな?
ってかやっぱり勝手に呼んで無理くりの結婚はしなきゃなのね。
あ~あやってらんないなぁ。でも私ってば死んでんだよねーで、召喚されたってことはここからの人生は神様がくれたオマケなのかなー、この老婆の姿であと何年オマケで生きられるのかなーと思考してると
「私はもういいですよね、御前失礼させて頂きます」
「チョット待ちなさいライアス。まだ貴方は聖女様にお詑びをしてませんよ。この事態を招いたのは貴方なのだからちゃんと謝りなさい」
「えー!私は何も不手際はしていない!これから婚約者選びが大変なのは私のほうなんですよ!こっちが詑びてほしいくらいですよ」
「ライアス!」
ライアス王子と王妃様の言い合いをぼんやり聞いてたらさっさとライアス王子はこの場から出ていった。
なんだアイツ
「聖女様、申し訳ありません。不肖の息子が大変失礼いたしました、あとでしっかりとお灸は据えますので何卒お許しください、あやつは王家の理を今一度学び直させます」
と、王様以下全員から頭を下げられて非常に居心地が悪い。
「皆様、頭あげてください!そんなに下げられても私どうしていいかわかりませんので。とりあえずお二人はそれでいいのですか?私が選んじゃっても……」
「議会で決定しましたのでお気になさらずお選びください」
いや王様には聞いてないんだけど、ウンウンって宰相ホントに他人事でしょ、意外にライアン様もサンドルさんも普通にしてるけども
アレッ?ここで疑問
「魔術師団長様は王族なのですか?」
「私は王弟なのです」
「なるほどー、わかりました。今すぐには決められないのでしばらく時間を頂けないでしょうか?この姿の結婚相手もお二人とも決死の覚悟かもしれませんが私も突然呼ばれてハイ結婚と言われても覚悟もないですし、せめて交流の時間を頂けないでしょうか?」
私の問いに6人の美男美女達が丸くなってゴソゴソ話したあと王様が了承してくれた。
「聖女様のお国はどんなところなのですか?」
応接室での謁見のあと帰り際に王女様のリナリア様から呼び止められ誘われるがまま、どこかのフラワーパークの様なお花達に囲まれた四阿でお茶をしながら質問された。
お国って、ホントにこんな言葉遣いなんだースゲーとか思いながら質問に答えると鈴がなるように話すリナリア様。異世界って凄い!お上品!と感動してたら軽く影が差した。
「ここにいたのですね、聖女様。先程はちゃんと挨拶できず失礼しました。ファリウト王国が第二王子ライアン・ファリウトと申します。以後よろしくお願いいたします」
「ライアンお兄様も聖女様に興味津々ですわね。ふふふ、聖女様お兄様もご一緒してよろしいでしょうか?」
「えっ!ええどうぞ」と了承するとこれまた見目麗しい青年が私の前に座ってこちらに微笑む。眩しい!
いやー異世界最高。この姿じゃなければイケメン天国やん!あっそうか私死んで転生したからここやっぱり天国?
「聖女様、改めて兄の態度にご立腹ではありますでしょうが私の方でもお詫びさせてください。大変申し訳ありませんでした」
ライアン様とリナリア様、そして後ろで給仕の為に控えてたメイドさんや従者、護衛さんたちが頭を下げてくれた。
「いえ、ライアス王子様もびっくりしたんでしょうね。呼んだら来たのが老婆だもん。なんでかわかんないけどこっちもごめんねー」と場が重くならないようにかるーい感じで返した、そして少し前から気になってたので提案してみる。
「あの、皆さん私の事聖女様って呼ぶじゃないですか。私この姿なので正直違和感ありまくりでチョット引いちゃってるんですよね。できれば『なる』と呼んでもらえないですか?」
「引く?」
「うーん、こっちでは引くって言わないのかな、どうしよ。えーっと驚く、違うなー、イヤ、これも違うなー、どう表現すればいいのかな、とりあえず名前で呼んで欲しいですー」
語彙力乏しいので気持ち表現できないから最後はゴリ押しで頼んでみたらOKもらえて良かったぁとホッとするとリナリア様がプンスカしながら暴露してくれた
「ライアスお兄様のはただ単に自分の召喚が失敗したと思いこんで現実を受け止められない、見栄っ張りな男なだけですわ。えぇカッコしいなんです、おそらく今から選定する婚約者候補も見栄で集めて中身の伴わない女ばかりでしょうね」
「リナ‥‥」
「ライアンお兄様もそう思ってるくせに!王家に伝わる文献にもしっかりと記載されてますわ。召喚された方がどんな見目でもこの国の発展と安寧のために絶対必要な方だって!しっーかりと書いてるのに何であの態度なのですか?文献に記載があるということはなる様と同じような方が以前にも召喚された事があると言うことです、だから態態見目と書いてあるのです!王家のみ閲覧できる文献だから宰相達がわからないのはしょうがなくても何故ライアスお兄様までわかってないのでしょうか?召喚前にちゃんと読み直ししてないのかしら」
「そうなんですか!」
私はリナリア様の話に食い気味で飛びついた。
ということはこの姿も元に戻るかもしれないんだ!ヒャッホー!良かった良かったぁ良かったよー
「そうなのですって、なる様!どうされたのですか?大丈夫ですか?どこか具合でも悪いのですか?」
「違うと思うよ、リナ。なる様不安だったでしょうね。安心してください。その姿はおそらく召喚された時の一過性の物だと私も思います。どれくらいその姿なのかは私にもわかりませんが、婚姻が半年後と決まってますのでその頃には元に戻ってると思いますよ」
リナリア様に食い気味で聞きながら号泣してた私を二人とも気遣ってくれた。
その日の夜、夢を見た。
「片瀬なるさん、ごめんねーびっくりしたよねー。違う世界を移動する時にね。時間軸がズレちゃうとどうしても歪みが出るのよー。で、100年位なら大丈夫なんだけど期間空くとねー歪みも酷いわけ。歪みを修正する時に時間枠が体に出ちゃってさぁ。今回のファリウト王国は300年だもん。そりゃ歪んじゃうよねーごめんごめん。てへペロ」となんともかるーい口調の女神様がネタばらしてくれたんだけどオイッ女神!年取るくらいならまだしも元の顔にないかぎ鼻つけてんじゃねえよと寝言で毒づいた。
半年後元の姿に戻った私とライアン王子の婚姻式がつつがなく執り行われた。
神殿で二人一緒に祈願してるとあの夢の女神様が現れて末永くお幸せにと祝福のキスをオデコにしてくれた。
その瞬間聖魔法を授かり、一生をライアン様と幸せに暮らせました。
end
最後まで読んで頂きありがとうございました。
色々書きたいことはありましたが初心者なので短編でなんとかまとめてみました。
機会があれば膨らまして連載してみたいです。




