8.申立
山口に帰った敦を除く大樹と夏帆及びひろみは、労基署への相談に行き、もらったパンフレットと説明を聞きながら作成するのは厳しいと感じていた。また、大樹は、保険紛争センターへの申立てについても音声データが証拠として使用できず資料のみなので、厳しさを感じたが、とりあえず、保険紛争センターへの申立書や労基署への申請をすることができた。本章では、それらの内容の詳細を記載しました。
(1)保険紛争処理の申立
2022年1月5日に、大樹が保険紛争センターへの処理の様式を依頼し、1月14日に、保険紛争センターから保険紛争処理の手引きが、夏帆宛に送られてきた。
大樹と夏帆及びひろみは、封書を開き、手引きを確認した。手引きには紛争もしくは苦情の処理の申立書様式とそれに伴う証拠資料を添付して送る方法が記載され、メール等の電子ファイルでは受け付けないこと、原則、紙の資料のみで音声データを受け付けないことの注意点が記載されていた。
大樹は、音声データが提出できれば、有利になるはずなのにと、がっかりしたが、ウイルス等の感染予防を考慮したらしょうがないかと思う。
まずは、申立書を作成する。内容は、1.要求内容、2.要求内容の根拠、証拠、3.紛争の内容、争点等(申立人の主張と保険会社の主張が食い違う点)、4.交渉経緯(いつ、誰と、何を)を記載する。
記載は、大樹が仕事から帰って来て、入浴後の20時以降に作成するが、その時の疲れ具合等もあり、1日で1時間~2時間で作成した。その後、夏帆とひろみにコメントを受け、反映しながら次のように纏めた。
「申立書」
1.要求内容
保険金の支払請求額 700,000円
内訳 車両保険金 700,000円 但し、自損事故は除外
2.要求内容の根拠、証拠:保険金の請求
12月14日に自ら勤務している福井北カントリークラブ内で自損事故を起こした。当該事故に伴い、車両保険を使用して修理を行うことを考えが、当該自動車保険について、車両保険は、自損事故は除外という限定がついていた。
当該保険の対象とする車両は11月に父が使用したものに変更している。これに伴い、10月27日に保険代理店の福井北自動車に父親から現在の任意保険証書(添付-1)をFAXで送信して、この内容と同じにしてほしいとの依頼をしていたが、代理店の福井北自動車と保険階差〇〇〇は、実際の保険証書(添付-2)に示す通り自損事故は除外限定をつけていた。また、代理店の福井北自動車は、変更時の確認電話では金額が高くなることのみを伝えてきたが、自損事故は除外の限定について説明しなかった。これは、自損事故は除外の限定を含む契約者が不利になるような説明である重要事項説明が適切に行われなかったので、自損事故は除外の限定がつけられたことを知らず、一般車両保険に入っていると思っていた。
保険会社及び代理店は、車の変更時に一般車両に変更するとともに、重要事項説明を適切に行えば、一般車両にしていたため、12月14日の自損事故で支払うべき車両保険700,000円を要求する。
3.紛争の内容、争点等(申立人の主張と保険会社の主張が食い違う点)
12月30日の福井北自動車との交渉を添付-3に示す。
(1)こちらとしては、保険変更時に父が要求した添付-2のようにしてほしいとの要望し、福井北自動車は自損事故は保証限定を外すのを忘れたのではないかと考えられる。また、保険会社〇〇〇への変更時間の記録は10/27 11:25で、こちらに連絡した時間は、携帯電話の通話記録から10/27 11:34で、保険会社〇〇〇への変更届のほうが早く、重要事項説明を適切にしていないのではないかと主張した。
(補足)当日は、金額が変わることしか聞いてなく、通話時間は、履歴から1分である
(2)福井北自動車からは、①②に示すように一貫性がない内容であった。
①当初は依頼を受けていないと回答し、保険証書を見せて問い詰めると、金額の変更のみを指示されたと回答したので、福井北自動車の回答には一貫性がない。
②福井北自動車は適切をしたと回答したり、説明をしなかったと回答したりして一貫性がない。また、保険会社〇〇〇の福井支店も重要事項説明の書面がなく、サーバに登録するのみであった。
4.交渉経緯(いつ、誰と、何を)
詳細を添付-4の時系列を参照する。
2021年12月21日 福井北自動車 春日様 担当者がいないため、後日に連絡
2021年12月22日 福井北自動車 井尻様(電話) 搭乗者について指示がある以外はなかったとの回
答、12月30日交渉することを約束(父対応)
2021年12月23日 〇〇〇 福井支店 播州様 今回の事故では車両保険がでないことを確認
2021年12月24日 〇〇〇 福井支店 播州様 重要事項説明の確認方法
5.添付資料
添付-1 〇〇〇の保険証券
添付-2 大樹が加入していた自動車保険証券
添付-3 12月30日における福井北自動車との交渉
添付-4 時系列
大樹は、夏帆に「添付-1~添付.4を、控えとして全てをコピーして、郵送する」ように指示、夏帆は「わかった」と伝えたので、大樹は1000円を渡して、「よろしく」と言った。
1月24日、今日も珍しく日が差して、少し暖かい。大樹は、久しぶりに天気がいいので、申し立てがうまく行くのではないか感じて、出勤前に夏帆に「郵便よろしく」と再確認を行い、夏帆は「了解」と言った。
大樹は、温かい太陽を背に受けて、安堵感を感じながら出勤し、夏帆は、郵便局で申立書を郵送した。
17時40分頃、大樹が帰宅したとき、夏帆から「出したよ」と言って、お釣りを渡してきた。大樹は、「ご苦労さん、うまくいけばいいな」と答えてお金を受け取った。
(2)労働災害の申請
大樹は、労働災害の申立てについて、パンフレットの中身から厳しいと感じていたし、交渉や打ち合わせ以外の本人しか記載できないことや嫌な内容を穿り出さないといけないし、鬱病が酷くならないかを懸念していた。更に、休職中は、傷病手当金が出て生活には困らないとの理由で、申請をあきらめていた。
大樹は、夏帆に「無理をしないように、作成してね・・・」と言い、夏帆は「わかった。調子がいいときに、負担がかからないように作成する」と言い、本人に任すことにした。
2月4日、夏帆は、大樹に次のような申立書の一部を渡し「内容を確認してほしい」と言われ、大樹は内容を確認し、憤りを感じたが「労基署の労災担当の森田さんにアポと取って、内容を確認してもらったら」と言い、夏帆は「わかった」と答え、2月7日に労基署に電話して、労基署にひろみと言って確認してもらい、労基署からのコメントを反映して次に示すように纏めた。内容は当てはまる項目に対して、回答するような形式である。
項目 14 上司が不在になることにより、その代行を任された
内容
2021年8月が一番多かった。シーズン中で夏休みということもあり、毎日お客さんが多く、従業員も人手不足にもかかわらず、小林支配人に関しては挙式で東京に行っており月の初めから下旬までの間、勤務せず不在のままであった。一方、直属の上司の西川さんは、その間、精算・締め作業を押し付けて、早く退勤してしまい、毎日、約3時間の残業が続いた。
項目 15 仕事内容・仕事の量の(大きさ)変化を生じさせる出来事があった
項目 18 勤務形態に変化があった
項目 19 仕事のペース、活動の変化があった
項目 23 複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった
内容
2020年3月頃から同じ部署で一緒に仕事をしていた人の入れ替わりが激しく、入社当初にいた大橋さんが辞めた頃から短期でパート・アルバイトで入る人、派遣バイトで来る人と、次々に入ったり辞めたりを繰り返していており、2020年6月に高宮さん、竹下さん、9月に平尾さんが従業員に加わり、一時的に落ち着いたものの、平尾さんは2021年2月末、竹下さんは3月の中旬、大橋さんは6月末辞めてしまった為、7月以降に再び日替わりの派遣バイトを呼ぶようになり、人の入れ替わりを繰り返したことにより普段の業務内容に加えて新人への育成も加わったのにもかかわらず、上司の西川さんのフォローも少なかったことにより自分への負荷が大きくなったりストレスがたまるようにになり休職前まで続いた。
項目 31 上司とのトラブルがあった
項目 37 セクシュアルハラスメントを受けた
内容
・2018年12月14日 20時30分頃いきなり直属の上司の西川さんから電話がきた(西川さんが酔っ払った状態で離婚したけどどうすればいい、何がダメだったと思うか、入った時から大好きだったと言われた)
・同日21時頃 約10分で電話が切れた後、その西川さんが部屋に来てインターホンを鳴らして待っており、ドアを開けてしまい玄関でいきなり抱きつかれたりキスされそうになりその場で座り込んだ(抱きつかれたときは強くて動けなくなるぐらいだった)
・部屋に逃げるがついてきて“俺もう辞めるからいいやろ?”と言われながら肩や腰を20~30分ぐらい触られたり揉まれたりした
・その後退室して自分の部屋に戻った
・2019年11月28日19時30分頃 仕事終わりにゴルフの練習に行き帰宅時に寮の階段を上っているときに腰を触られ揉まれた
・2019年12月5日 会社の忘年会でカラオケの時にずっと見られていた
・その他にも悪ふざけではあったが勤務中に何回も頭を叩かれたりしていた
項目 34 理解してくれていた人の異動があった
内容
2021年9月に人手不足に関して一番相談に乗ってくれており、共感を得てくれていた渡辺マネージャーが退職し、孤立感を感じるようになった。
以上の内容を含めた労災申請書を作成した。更に、森田から「福井労基署に提出してください」と言われたので、2月10日に福井労基署に配達記録郵便で郵送した。
これで、保険紛争センターへの申立書と労基署への申請書類の作成と申請を終了したので、3人は安堵した。
労基や保険紛争センターへの相談から、大樹と夏帆は、なかなか厳しいと感じたが、大樹は、保険紛争センターへの申立書を作成し、夏帆は労基への労災申請をどうにか作成することができて提出することができて3人は安堵する。
今後は、相手方の出方を待つのみの段階となる。次章では、その後の状況を記載します。