20.苦悩と決断
大樹は、前田の知り合いである永原弁護士に相談した結果、返済か自己破産しか道がないと判断し、どちらにするかを悩み・検討することで返済することに決めるのであった。
本章では大樹が、返済に決断した経緯を詳細に記載します。
(1)苦悩・決断
6月17日に前田の知り合いの永原弁護士の相談を終えて、6月18日に敦賀に帰宅した。大樹は、夏帆とひろみに「bizスタートは、ベトナムのサーバを使い手に負えないし、多重債務の方は、自己破産、返済しかなくなった。夏帆、場合により自己破産しかないかも知れない」と言う。夏帆は重苦しい顔でただ大樹を見つめるだけであった。更に、大樹は「自己破産の場合は、ローンを組めなくなるし、家も借りれなくなるが、しょうがないよな」と聞くと、夏帆は首を振る。大樹は「このことは、お前がしでかしてことであり、自らが責任を負わないといけないので、仕方ないことだよ」と言う。夏帆は悲しい目で黙っている。大樹は「もう少し考えてみるが、最悪のことを考えておいてね、さすがに約170万円の肩代わりは、きついで・・」と言う。
実は、大樹は、母のキク子が言うように50万円の援助を考慮したら、どうにかなるかも知れないとはひそかに思っていたが、簡単に返済すると夏帆が同じことを繰り返すことを考慮して、あえて返済のことは口に出さなかった。
6月19日に母のキク子から電話があった。キク子が「夏帆の件はどうなった?」と聞いてきたので、大樹が「bizスタートは、ベトナムのサーバを使用しているため手に負えないし、多重債務の方は、自己破産、返済かしかなくなったので苦慮している。最悪は破産しかないかな」と答えると、キク子が「大樹、前にも話したが夏帆は、小さいとき、妻のひろみが多額の使い込みをして別居したときや敦が不登校で荒れていたときに凄いつらい思いをしたのよ、だから、悪いようにしないでほしい。私は50万円しか渡せないけど、どうにかならないの」と泣きながら訴えてくる。大樹は「わかっているが、後120万円をどうするかを考えなきゃいけない。また、自動車保険の70万円が出ないのも厳しいのよ」と答える。キク子が「夏帆に変わって」と言うので、大樹は夏帆にスマホを渡す。
キク子が「夏帆、大樹から聞いているが、約170万円を借りていたの」と聞く、夏帆が「うん」と言う。キク子が「なんで、そんなことをしたの」と聞くと、夏帆が「仕事のストレスがたまり、どうしておほしい洋服や化粧品を買ったりしていたら、お金が足りなくなりクレジット決済していたら、毎月の支払が厳しくなってbizスタートという副業サイトに手をだして騙され、借金が膨らんで、このようになったの」と答える。キク子が「給与は少なくなっかったの」と聞くと、夏帆が「手取り約8万円できつかった」と答える。キク子が「本来なら、8万円の範囲で生活しないといけないのよ」と言うと、夏帆が「わかっていたが、ついつい買ってしまった」と答える。キク子が「やってしまったことは、悪いが、小さいときは、敦のことや、ひろみのことで苦労をして、つらい思いをしたのをばーちゃんはわかっている。だから、50万円援助するからお父さんにお願いしなさい」と言うと、夏帆は泣きながら「ゴメンナサイ、ありがとう」と答える。キク子が「大樹に変わって」と言うので、夏帆が大樹に電話を渡す。キク子が「大樹、そうゆうことだから、悪いようにしないでね」と言い、電話を切る。
大樹が夏帆に「ばーちゃんの気持ちがわかったか、お前を心配する人、いっぱいいるのよ」と言うと、夏帆が頭を下げて「お願いします」と答えるので、大樹が「もう少し、検討させてくれ」と答える。
大樹は、一人で部屋にこもり、管理している通帳を出して以下のように各貯金金額と課題を整理して紙に纏める。
①電話料金の支払いで家族割りにしていたため、毎月、夏帆から支払いを受けていたと、本人が困ったときのために、ボーナスの一部を貯金していた夏帆名義通帳に約100万円がある。
②夫婦共有の貯金で、ひろみから毎月6万円とボーナスから貯金していた通帳が250万円がある。
③大樹が小遣いをためて貯金した通帳に150万円がある。
④キク子からの援助が50万円
⑤自己破産の場合は、全ての財産を差し押さえるが、ネットから100万円の現金は生活必要上取られないと書いてあったが、まだ、夏帆名義の通帳に入っているため、今、引き出しても、財産隠しと認定される可能性があるだろう。
⑥若狭消費生活センターでbizスタートの件は対応中のため、返済してはよいかを聞くべきだろう。
⑦返済する場合、返済日を決めて、連絡して額を確定する必要がある。
⑧返済方法は、今まで敦と夏帆の学費を払うための通帳に、各通帳からかき集めて、窓口で振り込む
(ATMの限度額が最高で50万円であるが指紋認証で振り込み限度額を100万円にしている)
⑨肩代わりで返済したとしても、本当に夏帆のためになるのか
⑤を考慮すると、残り120万円で夏帆名義の通帳の約100万円が差し押さえられ、夏帆が不自由な思いをするならば、割りに合わないので、約20万円をどうにかして、返済したほうがのいいと判断し、返済で進めることとした。まずは、返済方法である。方法は、①50万円とし、残りは今後の転職で必要になることを考慮して残す。②ひろみと相談し50万円、③仕方ないから自らの小遣いから20万円を出すことを決断、④から50万円ですべてを⑧に移行、次に⑥であるが、夏帆から塩津さんへ電話をさせて、返済してもいいかを相談させる。また、⑦は、塩津さんの相談上、返済することの了解を得て、7月1日を返済日として希望するように、各社に連絡することにした。
大樹は、夏帆に「ばーちゃんの願いを考慮して、肩代わりして返済する方向で進めることとした。但し、お前にお願いがある。まずは、若狭消費生活センターに電話して返済していいかを相談しなさい。次に月曜日に各社に電話して7月1日に返済したいので、明細を発行できるかを聞きなさい」と言い、夏帆が「わかった」と答える。夏帆は、さっそく、若狭消費生活センターに電話し、塩津が出たので、このことを相談すると「こちらも難航しているので、利息のことを考えたら、返済されたほうがよい」とのことだったので、後は、各社の反応である。
(2)意見・返済
6月20日に大樹は、勤務先に迎い、昼休憩に前田と一緒にウォーキングを行う。前田から「娘さんの件、どうするの?」と聞いて来たので、大樹は「返済する方向で考えている」と答える。前田は「野さんの気持ちもわかるが、娘さんは、重いことをやらかしたので、破産手続きをして教訓を与えた方がいいのではないか?」と言ってきたので、大樹は「破産も考えたが、娘は、資料の作成や確認を行ったりする上で、何でこんな馬鹿なことをしたのかとの反省もあった。また、自己破産における不自由を考慮すると今回は返済との決断をした」と答える。前田は「俺の娘がやらかしたら、甘やかさないし、自己破産させるよ、そもそも返済できるお金もないし、あっても責任を負わせる。ところで、野さんは、返済できるの?」と聞いて来たので、大樹は「娘名義の通帳に100万円あるし、母から50万円の援助もあり、20万円ならどうにかなるし、母も悪いようにしてくれるなと懇願するしね・・・」と答える。すると、前田が「甘いね・・・だけど、野さんが決めたなら、仕方ないよね!!」と言うと、大樹は「その他、破産させた場合は、娘名義の通帳も差し押さえられるし、母の50万円あったら、残り20万円どうにかしたら、破産させるのは損のような感じがする」と答える。前田は「野さんが決めたのなら、俺は何も言わないよ」と言う。大樹は「まあ、弁護士の件は、決断するために必要だったので、礼を言うよ。それと、娘さんのことは気を付けたほうがいいよ?」と言うと、前田が「弁護士の件は、力になれずにゴメン!!、それと、娘のことは、このことを聞いたあとから、再点検したが、今のところ大丈夫だし、娘には言って聞かせたよ!!まあ、ウザがっていたがな・・・」と答える。大樹は、返済を決断し、腹を決めていたので、前田の意見には揺れ動くことはなかった。
その日の夕方、大樹が家に帰ると、夏帆から「各社に電話したら、MC以外は確定した請求書を送り、MCカードだけは和解書にサインをしてもらうので送るそう」と言うので、大樹は「了解、各社の書類がそろったら、言って」と答える。
6月23日に各社の請求書と振込先が記載した封書が届き、MCカードは和解書が送られてきたので、大樹と夏帆は、内容を確認すると債務の内訳(元金、利息、遅延損害金、費用、合計)と約款に遅延利息20%が記載され間違いがないなら、債務者のところに記名・捺印を記載するものであった。夏帆と大樹は間違いないことを確認し、夏帆は記名捺印を行い、翌日に夏帆が郵便局に行き返信した。
6月28日にすべての請求書が届いた。内訳は、ニギスカードが501,507円、インジョイカード230,362円、アトムが444,783円、セレンカードが45,464円、MCカードが496,798円で合計1,718,914円となった。
大樹は、夏帆にこの金額を見せて「どう思う?」と聞くと、夏帆は反省した面持ちで「凄く馬鹿なことをしたと思う」と答える。大樹は「そうだよな?、かなり馬鹿なことをしたと思う。もう次はないからね!、それと、50万円はばーちゃんの援助なので、それを差し引いた約120万円は返済してもらう。返済計画は返済後に作成して見せるようにね」と言うと、夏帆は「わかった」と答える。大樹が「それと、返済日前日から各通帳から⑧の通帳にお金を移行する作業をするから連れて行く。いいな!!」と言うと、夏帆が「わかった」と答える。大樹が「後、お前がこの家にいる間は、徹底的に家計管理を厳しく教えるから、覚悟してね!!、嫌がったら、借金の金額に年利20%の利子をつけるから、よろしくね」と言うと、夏帆は怪訝そうな顔で「嫌がらないよ」と答える。
6月30日の夕方に夏帆を連れて、銀行と郵便局を廻り、1,719,000円を⑧の敦と夏帆の学費を振り込む通帳に移して返済の準備を完了した。
7月1日、大樹は、半休を取得して自宅へ帰り、昼食後に銀行に向かった。その途中で、大樹は、夏帆に「持ってきた全ての請求書を見せて返済したいと、窓口に伝えてね」と言うと、夏帆は「わかった」と答える。
銀行に着くと夏帆が「この通帳から5社に振り込みたい」と相談すると、銀行員が通帳を受け取り調べると、「お客様、この通帳はATMからの振り込み可能です」と言うので、大樹が「この通帳は、100万円までATMでの振り込みができるように設定していますが、それ以上も可能ですか?」と聞きなおすと、銀行員が「この通帳は、高額振り込みができるように、指紋認証の設定されていますので可能ですよ」と言い、ATMに案内されて、一社だけ一緒に操作を行い、「わからなかったら、呼んでください!!」と言って戻って行ったので、大樹と夏帆は、確認しながら、全ての操作を終えた。
終わって振り向いても、誰も待っていなかったので、ホッとしたと同時にATMが5台ある銀行に来てよかったと思った。
大樹と夏帆は、その後、家に帰り、夏帆がキク子に電話して、返済したことの報告とお礼をした。大樹は、今までの対応の疲れが押し寄せてきて、意識が薄れて行った。
ついに、夏帆の多重債務は、返済と言う形で終了したが、この話にはつづきがあるとともに、保険紛争機構の審理の結果も出たのと返済計画とお金の教育の内容を次に記載します。
大樹は、夏帆の将来を考慮したと同時に、母であるキク子の50万円の援助や夏帆名義の通帳に100万円の預金があり、残りが20万円でこれで支払えばいいので、自己破産にはメリットがないと判断して返済という判断に至る。一方、前田は自己破産を強く進めるが、大樹の意思は固く揺れ動くことはなかった。 また、返済の手続きも面倒くさく、中には和解書に記名・捺印が必要なこともあったが、7月1日に無事返済を終了した。
一方で、この話にはつづきがあるとともに、保険紛争機構の審理の結果も出たのと返済計画とお金の教育の内容を次に記載します。




