10.残された課題と突然の手術
前章では夏帆の入院までを描いていた。夏帆の福井北カントリークラブの退職と転職先の入社が迫る中での入院であり、退寮等の3月末までに行うべきことがあるにも関わらず、新型コロナウイルスの影響で、面会ができないため病状等の情報も入らず、大樹もひろみも不安を感じていた。そのときに、病院から突然の電話で病状が悪く手術を行うようになった。
本物語は、大樹とひろみが実施した夏帆が抱えていた課題の整理と手術までの詳細を記載しました。
(1)残された課題の整理
3月15日に夏帆が入院した。一方、病院が新型コロナウイルスの対応中で面会ができず夏帆の状況がわからないので、大樹もひろみも不安を感じていた。
具体的には、夏帆がひろみに、ラインで不足するものを持ってきてとの要求で、ひろみが物を病院に持っていくが、受付で預けて渡してもらうため、主治医や看護師とのコンタクトも取れないし、ひろみがラインで夏帆に聞いても状況がわからない状況だった。
ひろみは大樹に、「よわったな・・・、3月31日に福井北カントリークラブを退職し、4月1日に次の会社に入社するこの時期に入院はキツイね・・いっぱいやらないといけないことあるのに・・・」と言う。大樹は「確かにな・・・ここで、入院は厳しいよな・・・だけどやることはいっぱいあるよな・・・」と答え、腕を組みながら考え、「まずは、何時頃、退院できるかが解ればな・・・」と更に答えた。
ひろみは「何も情報がないから、厳しいよね・・・」と言う。大樹は、悩んだ末、「まずは、状況を見える化して、何をすべきか、不足するものは何かを整理しよう」といい、パソコンを起動して次のことをまとめた。
1.福井北カントリークラブ→春日に問い合わせ
(1)傷病手当金申請書の請求(2月と3月)
(2)高額医療の申請
(3)支払い関連(寮費、住民税、社会保険料等)の確認
(4)寮の引き上げの確認→3月31日以降の引き渡しも大丈夫かとの確認
2.4月1日以降に夏帆が入社する会社へのコンタクト
(1)会社名と連絡先及び担当者の確認→夏帆に確認
(2)入社に関する相談→入社延期は可能か? (注)最悪は内定辞退も考慮
3.その他
(1)退寮作業→冷蔵庫は業者に依頼し、その他は何日かで大樹とひろみで運搬
(2)夏帆が4月に入社できない場合→健康保険の任意継続手続き
大樹は、まとめた内容を印刷してひろみに渡して、「やることをまとめたので、確認してくれる。それから役割分担しよう」と言うと、ひろみは「わかった」と言い確認して「これでいい」と答えた。次に役割分担である。大樹は、ひろみに「この内容の調整をできるか?」と聞くと、「電話連絡はできるが、相手からの折り返しについては、業務中はできないので厳しい」と答える。大樹は「俺は、電話連絡と折り返しの対応はできるので、そっちは俺がやるので、お前は、夏帆とのラインと書類のやり取りをしてくれ」と言うと、ひろみは「わかった」と答え、役割分担が決まった。
早速、ひろみは、夏帆に次の内容をラインした。
①入社する会社と福井北カントリークラブに電話して入院したこえとを電話
②入社する会社名、連絡先、担当者名を教えて
③詳細はこちらでフォローする
夏帆から「わかった」と回答があったので、大樹はひろみに「夏帆からの回答を待って対応しよう」と言い、ひろみは「わかった」と答えた。
3月16日に夏帆からひろみにラインで次の回答があった。
①福井北カントリークラブから高額医療と傷病手当が送ってもらえること
②入社する会社の連絡先と担当者名及び退院が決まったらは速やかに連絡してくれと言われたこと
会社名:株式会社アストラム、担当者名:朝倉
更に、株式会社アストラムから入社案内も届いていた。
(2)手術勧告
3月19日、天気は、どんよりと曇っているがたまに日が差すような状況であった。ひろみはいつものようにパートへ行き、大樹は、休暇ではあるが、町内会の役員をしているので、4月の総会のための約500件分の資料の配布準備のため集会所で作業をした。
作業は、総会資料を纏め、ホッチキス止めを行い、住民に配布するための準備であり、9時に集合し、11時30分位に終了して、集会所を出た。
自宅から集会所までは約300mで3分位の距離である。大樹が自宅へ歩いていると、突然、携帯電話のベルが鳴った。画面を開くと国立病院であった。
大樹が電話を取ると、主治医である内科の三島であった。三島は「野坂さんですか?」と言うので、大樹は「野坂です」と言うと、三島は「夏帆さんのことで話したいことがありますので、病院に来れますか」と言われた。大樹の歩いている位置から病院までは徒歩で約15分くらいである。自宅から車で行くと早いが、ひろみが車で出勤しているので徒歩で行くしかない。大樹は「後、15分くらいで行くことができますから、よろしいですか」と言うと、三島は「お待ちしております。通用口で私に呼ばれたことを言ってください」と答えたので、大樹は「よろしくお願いします」と答えた。
大樹は、病院の方へ歩き始めるが、いろんなことが浮かんでくる・・・まさか、ガンとかの重い病気かな・・、夏帆は23年生きてきたが良いことが味わえないので、神様は非常か・・・、だけど、重い病気とは言われていないので、大丈夫だ・・・、だけど・・・と言うように、いろいろと頭の中に浮かんでくるような感じで国立病院へ到着した。
国立病院へ着くと、緊張しながら通用口に到着し、警備員に「三島先生に呼ばれましたので来ました野坂と申します」と言うと、警備員が内線で確認し「2階一般病棟の窓口へ行ってください。行き方は・・」と言われたので、緊張した面持ちで病棟へ向かった。
病棟の受付へ行くと、会議室みたいなところに通されて、椅子に座った。すると、内科医の三島ともう一人の医者がいた。三島が「昨日に、病棟を歩いた夏帆さんを見ていたところ、歩き方がおかしいので、レントゲンや内服検査をしましたら、盲腸を含む一部の小腸が腐食していることが確認できたので、手術が必要と思い、横にいる外科医である木崎と一緒に確認して手術が必要と判断しました。今から木崎が説明しますので、よろしくお願いします」と言われた。
会議室の時計を見ると12時を過ぎていたので、ひろみはパートが終了していると思い「このようなことは、父親である私と母親である妻にも聞いてほしいので、今から連絡しますので、約30分後でも大丈夫ですか」と言うと、三島は「わかりました。それでは奥様が来られて説明しましょう」と答えて、2人の医師は退出した。
大樹はひろみに電話して「今、医師から呼び出されて、国立病院にいる。夏帆が手術になるので、こっちに来て」と言うと、ひろみは「え・・・本当に・・・、何でなの・・」と荒げた声で答える。大樹は「詳しいことは、お前が来て話をしてもらうので、今すぐ来て・・」と答えると、ひろみは「わかった・・どうやって入るの」と答えるので、大樹は「通用口で、三島先生に呼ばれたと言え」と言うとひろみは「わかった」と答え、電話を切る。
約30分後にひろみが、会議室に入ってきたと同時に、木崎が入って来た。
木崎からレントゲン等の画像を見せられ、「盲腸部から小腸の一部に破れたような後があり、このまま放置すると危険な状況になります。詳細は、手術して状況を確認しなければいけませんが、状況により、一部の小腸を切断する可能性があります。手術は、3月23日の13時に実施しますが、ご了承していただけますか」と言われたので、大樹は「娘の命が大事なので、よろしくお願いします。ところで、21日と22日は、何かするのですか?」と言うと、木崎は「手術前の検査と手術は全身麻酔で行いますので、麻酔医の都合で3月23日とします」と答える。大樹は「手術の規模はどのような感じですか」と聞くと、木崎は「順調にいけば、盲腸の手術程度で約2時間で終了します」と答え、木崎が「他にありませんか」と言ったので、大樹とひろみは「大丈夫です。よろしくお願いします」と答え、木崎は退出した。
次に看護師が入って来て、次のように当日に持ってくるものと、スケジュールの説明があった。
①持ってくるもの
・前があくパジャマ、包帯、腹帯
②当日のスケジュール
11:30 病院に集合して抗原検査を受けてください
抗原検査料金は約7000円で、検査結果が出るまでは、指定する待合室で待機
12:30 抗原検査結の陰性の後、病棟へ行き、娘さんと会ってください。
13:00 手術開始、付き添いの方は専用の控室へ案内しますので、手術終了まで待機
以上、看護師の説明を聞いて、ひろみが持ってくる物等の確認をして、自宅に帰宅した。
自宅に帰宅後、大樹もひろみも放心状態になった。
大樹は、「ここで、手術はキツイね・・・、とりあえず、3月23日は、休みを取るか・・・次に。寮の引き上げは、次の土日と31日に行うが、念のため、福井北カントリーとアストラムには連絡すべきかな・・・」とボソボソ言うと、ひろみが「寮のカギはないよ・・・」と言うので、大樹は「ラインで寮のカギを渡すように手配しておいて」と言い。ひろみは「わかったが、次の土日は、仕事だけど、昼からでいいよね・・・」、大樹は「それでいいよ・・」と言う。ひろみは「31日はどうするの、私仕事よ!!」と言うので、大樹は「クロネコヤマトのラインを確認すると、冷蔵庫のみ運べるので、まずは予約する。その後にスケジューリングしよう」と言った。
大樹は、Webで31日の10時30分に冷蔵庫の運搬を予約した。
3月21日に大樹とひろみは、職場に事情を説明して休暇を取得した。大樹は31日も休暇を取得した。
(3)難航した手術
3月23日、大樹もひろみも休暇なので、8時頃に起床して朝食を食べた。二人共、今日の手術のことで頭がいっぱいであり特に食欲もないため、トーストだけの簡単な食事を済ませた。
天気は、小春日和で久々に太陽も見えるので、本来は心地がよいと感じるのであるが、大樹もひろみもその余裕もない。
11時20分頃に自宅を出て、国立病院へ向かった。駐車場に着き、病院に入り、受付で説明すると検査室に通された。看護師が大樹とひろみに抗原検査キットを渡してきたので、二人は無言で抗原検査を行った。終了後、看護師から待合室の一角に案内されて椅子に座る。大樹もひろみも無言である。
12時30分頃、看護師が大樹とひろみのところにきて、「抗原検査の結果、陰性を確認したので、病棟に行ってください」と言われ、二人は無言のまま病棟へ急ぐ。病棟に着くと面会者名簿を渡され「記名してください」と言われたので、ひろみが大樹の名前を含め記入して受付に渡し、受付前の待合室に待機する。12時50分頃、看護師に「野坂さん」と呼ばれたので、大樹とひろみが「はい」と言うと、看護師が「案内しますので、ついてきてください」と言われたので、看護師について行くと手術室前に着く。すると、夏帆がストレッチャーで運ばれてきた。看護師が「今から手術になりますので、声をかけてください」と言われたので、ひろみが「手術がんばってね!!、大丈夫だから」と手を握り声をかける。大樹も何を言っていいかわからないので、「がんばって!!」としか声をかけれなかった。
その後、夏帆は、手術室に入っていった。大樹とひろみは、看護師から控室に案内され、中に入ると、ベンチとTVだけの簡単な部屋であった。
大樹は、凄く腹が減ったので、ひろみに「1階に食堂があるので、昼食食べない?」と言い、ひろみも腹が減っていたみたいなので「食べたい」と言う。大樹は「ご飯たべに行こう」と言い、2人で食堂に行く、食堂は20人位の小さいもので、牛丼とうどん位しかなかったので、大樹が牛丼、夏帆がきつねうどんを頼み、できたらカウンターに取りに行く。
ここで、大樹とひろみは、夏帆を心配する会話を行いながら、昼食を食べて、2人で病院の敷地外に行きタバコを吸って14時頃に控室に帰った。大樹は、凄い睡魔に襲われたので、ソファーに横になり、ひろみに「少し寝るから・・・終わったり、何かあったら起こして」と言い、ひろみが「わかった・・・」と言ったので、眠りの中に入っていった。
大樹は、目を覚まし、時間を確認すると15時30分頃であった。ひろみを見ると、テレビを見ていたので、大樹はひろみに「まだ、終わってないの?」と言うと、ひろみは「何も連絡ないよ」と言う。
大樹は、何か小腹が空いていたので、ひろみに「腹減ったので売店で何か買ってくるけど、何かいる?」と言うと、ひろみは「いらない・・・行ってきなよ・・何かあったら電話する」と答えたので、大樹は、下手にでるように「タバコも吸ってきていい」と聞くと、ひろみは無表情で「どうぞ・・」と言うので、控室を出て、売店に行き、紙パックのコーヒと菓子パンを2つずつ購入して、敷地外でタバコをふかしながら、「大丈夫か・・・と」不安になっていた。
大樹は、控室に戻り、ひろみに「何か連絡きた?」と聞いたが、ひろみは「何もない・・・」と言うので、大樹は「これ買ってきたから食べよう」と言い、パンを食べながら、コーヒを飲んだ。
その後に大樹が時計を確認すると16時を過ぎたところだった。大樹はひろみに「長引いているね・・・難航してるのか?」、ひろみも心配そうに「長いね・・・大丈夫か・・」と答え、二人はだんだん不安になってくる。
大樹とひろみは、TVやスマホを視聴しながら、不安な心を紛らわそうとする。控室には窓がないため、外の状況がわからず時計のみが頼りである。
どのくらい時間がたっただろうか、テレビを見ると、ローカル番組から全国ニュースに変わる。そこで、大樹は、18時であることを確認する。大樹は「凄い時間かかるね・・・まじか・・」と言いながら不安がどんどん押し寄せてくる。もちろん、ひろみも「長いね・・・」と言葉を漏らしながら、不安が押し寄せている。
18時30分頃、看護師さんが呼びにきて「手術が終わりましたので、こちらに来てください。先生からのお話があります」と言われ、別の会議室に案内される。
大樹とひろみが中に入ると木崎がいた。大樹とひろみが椅子に座ると、木崎が「手術は思った以上に酷い状況で膿を出すのに2時間位かかり、その後、腐食した小腸を5cmを切り落とし、繋ぎとめました。いいかえればガンの手術と同じレベルでしたが、手術は成功しました」と言うと、大樹とひろみは、ホッとして、頭を下げながら「ありがとうございます」と答えた。更に、木崎は「今後、しばらくは傷口が開く可能性がありますので、激しい運動は避けてください。更に、飲酒や冷えたものは控えてください。また、今後は、腸が癒着し腸閉塞になることもあるので注意しておいてください」と言われ、大樹とひろみは「わかりました」と答え説明が終了した。
その後、看護師から「夏帆さんがもう少しで目が覚めると思いますので、会ってください」と言われて案内された。病棟の受付後の部屋で夏帆が目を覚ましていたので、ひろみが「がんばったね・・」と涙ぐみながら声をかけ、大樹は、体の力が抜けるような感じで「よかった・・」と言った。
夏帆は、苦笑いをしながら頷く。その後、看護師から「そろそろいいですか」と言われたので、ひろみは、夏帆に「帰るね・・待っているから」と言い、ひろみと大樹は、看護師さんたちに一礼をして病院を出た。大樹とひろみは、凄い倦怠感があり、ひろみは、料理をしたくなかったので、「今日、疲れたので何か食べにいかない」と言ったので、大樹が「なか卯でいいか」と言う。ひろみが「それでいいよ」と答えたので、なか卯へ行き夕食をすまして自宅に帰った。
大樹とひろみは、夏帆の手術成功に安堵するが、残された課題が多く、隠れてた闇が噴出するのがこれからであるため、この入院や手術が序奏であることは、そのときは考えもしなかった。
夏帆が入院したことから、大樹とひろみは、新型コロナウイルスの感染予防のため、面会ができないため、病状等の情報が入らない中で、3月末までに残されていた課題を整理して実施する計画を建てた。ところが、突然の病院からの電話で、夏帆の病状が悪化して手術を受けることになったことに対して、驚愕する。
夏帆の手術は、約5時間と難航したが、成功したことで、大樹もひろみが安堵するが、3月までに解決する課題を解決しなければならなかった。
次章では大樹とひろみが実施した残された課題を解決したときの状況を記載する予定です。




