夏雪君
砂浜をしゃりしゃり。
ひとり、歩く。
潮風が私の白いワンピースの中に入ってきて、スカートを膨らませる。
太陽がさんさんと降り注ぐ。
なのに、暑くない。
暑さがほとんど感じない。
砂浜をしゃりしゃりと歩いていると。
ひやり。
頬に冷たいものが当たった。
雨でも降ってきたのかなと思って見上げたら──
ふわふわとした白いものが降ってきた。
手のひらを空に向けると、ひやり。
手のひらに、冷たくて白いものが降ってきた。
雪だ。
雪がふわふわひらひら。
降ってくる。
今は夏なのに。
雪が降ってくる。
不思議に思っていると、ふと。
目の前に半透明の扉が現れた。
かちゃり。
扉のドアノブが、回った。
きぃっ……
半透明の扉が開く。
開いた扉から出てきたのは、しらない男性。
しらない人、だけど。
その人をみていると、こころがあったかくなる。
初めましてだけど、初めましてじゃないような……
私は暫く、その人の瞳を見つめた。
彼もまた、無言で私のことを見つめていた。
すると、彼ははっとした顔をして会釈して私の横を過ぎた。
まって!
ふいに。
私は彼の手を両手で握って、歩みを止めた。
ぅ、一緒にその……手を繋いで歩いてくださ──
……何いってるんだろう、私?
よく分からないけど、私は気づいたら彼にそんなことを言っていて。
恥ずかしくなって手を離そうとした、時。
彼が手を握った。
……うん、いいよ。
潮風が強く吹いてよく聞き取れなかったけど。
そう、彼が言った気がした。
しゃりしゃり。
しゃりしゃり。
砂浜を歩く。
暑い潮風に頬を撫でられながら。
ふわふわと降る雪に頬を冷やされながら。
砂浜に2人の足跡を置き去りにしながら。
静かに、時折彼とぽつぽつと会話しながら。
冷たくてあったかい砂浜を歩く────