第壱話(その8)
目を開くと、周りは暗闇であり、その中に一人でぽつんと立っていた。
不安を感じたものの、このまま立っていても何も変わらないと思い、とりあえず歩いてみることにしたが、歩いても歩いても、全然景色が変わらなかった。
いつまで続くのだろうと考えながら歩いていると、奥の方から光っているのが見え、きっと出口だろうと思い、そこに向かって走りだした。
光の先へ無我夢中で走っていると、気が付いたら桜の木が一本だけ咲いている場所へたどり着いた。
何故ここにたどり着いたのだろうか不思議に思っていると、目を開けるのがつらい程の桜吹雪が吹き始め、目を閉じた。
「憎い、憎い。俺を陥れた奴らが悠悠自適に生きているのが憎い・・・・・・」
突然声が聞こえ驚いたが、発している言葉が気になり、声の主を探そうと目を開けると、桜吹雪の中から人が一人見えた。
よく見ると、涙を流していて、そのことに気が付いてからどうしてもその人のことが凄く気になってしまった。
「もう何も信じられない・・・・・・。人間なんて信じるものか・・・・・・」
その言葉に共鳴するように桜吹雪が更に強くなり、動くのでさえ難しくなってしまった。
あの人に言葉をかけないと。何故かそんな思いを強く感じ、言葉をかけようとした瞬間、視界が急にぼやけ、次第に何も見えなくなってしまった。