第壱話(その27)
翌日。作ったおにぎりを持って外に出かけた。
昨日より風が冷たい気がし、少し気持ち速足で廃墟屋敷へ向かっていると、声を掛けられ、振り返るとこの前一緒に肝試しに行った友人の一人、勘九郎がいた。
「夜魄。あの後大丈夫だったか? おいらは町奉行のおっちゃんから話を聞いた親父に『不注意だったとしても、あの森に入るとは何事か!』ってこっぴどく叱られちまってよ」
「拙も似たようなものだよ。家に帰ったら父上が門の所で、怒った表情で待っていたから」
そんな会話をしていると、勘九郎の両親が勘九郎を呼んでいた。よく見ると、沢山の荷物を手押し車に乗せているみたいだ。
「夜魄、実はな。おいらたち、今日でこの町を去るんだ」
「えっ!?」
突然そんなことを言われて驚いていると、勘九郎の両親が拙たちの近くまでやってきた。
「驚かせて悪いな。急遽別の町で商売することになってな、家族総出でその町に引っ越すことになったんだ。ここからかなり距離があるから、おそらくもう会うことは無いと思うと勘九郎に話したら、お前さんらに別れの挨拶をしたいと言ってたから、最後に会って話せてよかったよ」
「そうなんですね。勘九郎、他の子らには挨拶できたのか?」
「あぁ! お前で最後なんだ。今日が挨拶できる最後のチャンスだったから、無事に挨拶できたから、これで心残りはないぜ!」
「そっか。元気でね、勘九郎! しっかり両親を支えてあげなよ!」
「もちろんだ! 夜魄こそ、元気でな!」
別れの挨拶をし、勘九郎たちの姿が見えなくなるまで手を振りながら見送った。
「さて、早くあの場所に向かおう」
小さく呟いた後、気持ちを切り替え目的の場所へ向かった。




