第壱話(その1)
「夜魄! こっちこっち!」
「早くしろよ! 置いていくぞ!」
「待ってよ・・・・・・」
友人に誘われ昔領主が殺されたと言う廃墟と化していた大きな屋敷に来たものの、思ったより歩きやすいのもあって先にドンドン進んでいってしまい、気が付いたらはぐれてしまった。
「ねぇ、何処にいるの。聞こえたら返事をして」
どうしよう。こっそり出てきた上に友人たちを見失ったと知れば、父上から叱られてしまう。
そんなことを考えながら探していると、こちらに向かって走っていく音が聞こえ、よく見るとはぐれていた友人たちがこちらに向かってきていた。
「どうしたの? そんなに走ったらあぶないよ」
「それ所じゃないんだよ! 此処思ったよりヤバいんだよ・・・・・・」
「あの噂が本当だったんだよ! このままじゃ全員殺されちゃう!」
「噂って確か、『昔ある侍が、仕えていた領主によって殺され、死後妖となり領主を筆頭とした自身を死に追いやった人間を皆殺しにし、今でも人間を恨んでいる』ってのだっけ?」
拙がそう尋ねると、友人二人は頷きました。
「とにかく! さっさとここから離れるぞ!」
そう言うと、拙の腕を掴んで屋敷から急いで出た。
※
屋敷が見えなくなる所まで走るとようやく拙の腕を離し、凄い息切れしながら安心した表情をしていた。
「ねぇ、あの屋敷で何を見たの・・・・・・?」
拙がそう尋ねると、友人たちは一瞬で顔が青ざめ始め、肩を強い力で掴んできた。
「今日のことも、あの屋敷のことも忘れろ! 俺たちは今日追いかけっこしてたらここまで来てしまっただけだ。いいな?」
「えっ、でも・・・・・・」
「い・い・な?」
友人の圧に負けてしまい、深追いするのは止めることにした。