第壱話(その16)
「いい訳ないでしょ! お米を無駄なことに使おうとするんじゃない!」
予想してた通り、母上は大声で拙がしたいこと否定してきた。いつも拙が何か学びたいと思っても、それを用意するのが勿体ないとか、学ぶ必要はないと言って何もさせてくれなかった。
今回も駄目かもしれないと思い、俯いた状態で少し泣きそうになってしまった。
「夜魄。どうしておにぎりの作り方を教わりたいのか教えてくれ」
父上の言葉に顔を上げると、拙の顔をまっすぐ見つめていた。
「いつも、奉公人さんがおにぎりを作ってくれているけど、そろそろ外出の時は、拙自身でおにぎりを作って持っていきたいのです」
素直に思っていることを伝えると、父上の目元が優しくなったように見えた。もしかしたら、初めて学びたいことができるかもしてない。
「そう言うことなら、おにぎり作りを学ぶことを許す。但し、作る時には一度に二個までにすること。これなら文句はないだろう」
父上が優しい声でそう発すると、拙は嬉しさの余り表情を緩ませていると、母上は納得していないらしく、睨んでいるのに気が付き、すぐに表情を引き締めた。
「ありがとうございます、父上。さっそく明日から教わってもよろしいでしょうか?」
「いいぞ。私からも奉公人に話しておこう」
その言葉を聞いて、明日からおにぎり作りを教われると思うと、とても楽しみになった。




