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吸血姫  作者: 那月ありす
1章
3/4

2.騎士試験を終えて

「これから、合格発表を始める。今年の合格者は2006人中21名、今から合格者の受験番号と名前を呼ぶ。呼ばれたものは、所属騎士団の検討を行うため、この場に残るように。不合格者は即刻帰宅してもらう。」

受験者の間に緊張が走る。合格者はたったの約1割。

「それでは、これより合格者の受験番号と名前を読み上げる。0023番サラサ、0632番ドールズ・ノックマン、0637番……最後に1867番ティサラ・ツキヨ、以上である。」

口元に笑みが浮かぶ。

「諸君、お疲れ様。合格者の21名はおめでとう。不合格者の諸君らも、今年は気骨のあるものがおおかった。来年もぜひ、己をさらに磨き、騎士試験を受験を受けに来てほしい。期待している。」

日はすっかり傾いている。不合格者がぞろぞろと帰路につく中、この場から動く様子のない合格者たちを観察する。性別、年齢ともにバラバラ。いや、若者が多い。私と年が近いのは4…いや5人。若いから、他の合格者と比べると弱そうだけど、才能もやる気もありそうだ。

「合格者の諸君、これから場所を移動する。私についてこい。」

試験監督に言われ、ぞろぞろと彼に続く。階段を上り、試験会場の最上階までくる。ここは試験中、受験者が立ち入り禁止だった場所だ。やがて、大きな木製の扉の前で立ち止まる。この扉の奥から、物凄い圧を感じる。強者の圧だ。他の合格者たちの体がこわばっていることがわかる。そこで、それまで無言だった試験監督が口を開いた。

「そういえば、君」

試験監督が受験者らのほうにふりかえる。目が合った。

「ここから先は、魔力を操作することができないから」

ノックをする。

魔力が操作できない?

「第3騎士団所属、レベル8のハルマン・シズラーです」

ということは、魔法、スキルを使用することができない?

「ああ、はいれ」

扉が開く。合格者達が恐る恐る入室していく。

ドク、ドク、ドク、ドクーーー。

「どうした?早く入れ」

中に入ったほかの合格者達が困惑の表情で私を見ている。同じく中にいる、7人の圧倒的強者も。どうする。どうする?このまま入室すれば、スキルを発動できなくなってしまう。確実に殺される。ただでさえ血が足りてないのに、勝てるわけない。

「おい、はやくしろ。俺を待たせんな、カス」

つんつんと尖らせた赤茶色の髪の男が言う。

逃げる?いや、どうせすぐにつかまる。ならーー

「はいれません!入りたくありません!」

まっすぐに相手を見て言い返す。

「はっ?」

「それに、私はカスではありません!ティサラ・ツキヨという名前があります」

場がしーんとなる。試験監督の騎士が、顔を青くしている。

「ふっ。いいね、君」

ふと、ここちのよいテノールボイスが耳に届く。

思わぬ反応に目を見張ると、長すぎず短すぎない金髪に、甘いマスクの若い男性と目が合った。その、色素の薄い青色の瞳に、既視感を覚える。

「あの子、俺がもらう」

男性は、すっと立ち上がったかと思えば、

「いいよね」

肩に、硬いものが置かれる。ヒュッと、息が止まった。いつの間にか、私の背後にいた。

「へぇ~。おまえがそこまで行動するなんて……面白い。おいカス、俺んとこに入れ」

「なっ」

あんたみたいな失礼な奴が団長やってる騎士団なんか、入るわけないじゃない。そういおうとして、言葉がつっかかった。

背後から感じる威圧感。一瞬で鳥肌が立つ。怖くて振り返ることができない。肩に置かれた手の存在感を、強く意識する。

「おまっ、え?」

失礼な団長が目を大きく見開き、その瞳に魔法陣が刻まれていることに気が付いた。

「……興味深いね。いいよ、じゃあ、その子は第2騎士団ってことで」

「んなっ、ラスファル!」

この人が、この国で最も強い騎士ー総騎士団長、第6騎士団通称金粉の朝夕のラスファル・バレット閣下。すごく若い。まだ20代後半くらいに見える。

「じゃあ、失礼する」

「おい、まてジャミール」

「そちの子犬の言う通り、大事な話し合いの最中でありましてよ」

「誰が犬だと!」

扇を口元にあて、冷ややかな目でこちらを見る女性。多分高位貴族だ。

「俺には関係ない」

「まったく、協調性がありませんわね」

「まあまあ、ジャック、レーナ落ち着いて。じゃあ、またねハルキ。その子のこと、ちゃんと見とくんだよ」

「……ああ」

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