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0.プロローグ
花が香る森の秘密基地でかわした約束。一番星の下で出会った、おいしい血の男の子。両親と祖母以外で、はじめて言葉を交わした生物。忘れられない私の初恋。
「俺が騎士団長になったら、ティサラを迎えに行くから。」
あの約束から10年がたった。その間に、故郷の森はダガン帝国の軍に焼かれ、私は帰る場所も、過去の思い出も、財産もすべて失った。
……仕方がないことだ。人間にとって、私たち魔物は危険な存在だから。この身に宿る人間への憎悪は、そうそう制御できるものではない。
だけど、あの秘密基地は、家族との思い出は、あの約束は、まだ私の中で守られている。