表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

漫才の台本

漫才「選挙」

作者: 沢山書世

漫才・コント37作目です。よろしくお願いいたします。

この作品は、youtubeにも投稿しております。

 教室で、ホームルームが始まった。

 担 任「来月、番長選挙がありまーす。今日から受け付けるんで、立候補を予定している者は手を上げてくれー」

 教室内を見渡す担任。

 担 任「えーと、二人か。厽山と、丗川だな」

 ノートに名前を書く。

 担 任「あれ? 厽山、お前、先月の学級委員選挙にも出てただろ。残念だったけどな。で、今度は番長選挙か?」

 厽 山「ええ」

 担 任「やめとけやめとけ」

 厽 山「なんでですか?」

 担 任「どうせまた落ちるんだからさ」

 厽 山「そんなこと、わからないですよ」

 担 任「わかるさ。こないだの選挙でお前は人気がないってはっきり出ちゃっただろ」

 厽 山「そんなことないです。接戦でしたもんね」

 担 任「接戦?」

 厽 山「39票対38票。たったの一票差」

 担 任「あのな、39+38はいくつになる? 言ってみろ」

 厽 山「えーと、77」

 担 任「このクラスに生徒は何人いる?」

 厽 山「四十人ですけど」

 担 任「そうだな。77人もいないよな」

 厽 山「そういやそうですね。なんでだろ?」

 担 任「お前に入っていた票は、一票だけ。自分で入れた一票だけだったんだよ」

 厽 山「なんですと?」

 担 任「39票対1票だったと、正直に結果発表したら、お前はどうなる?」

 厽 山「へこみます」

 担 任「そうだよな、へこむよな。生徒が傷つかないように配慮するのも教師の役目でな。俺が一票差で落ちたように結果を細工してやったんだよ」

 うなだれる厽山。

 担 任「知らなきゃよかったとか言って文句たれるなよな。今のはお前に言わされたようなものなんだからさ。あーあ、教師っていうのは難儀な商売だよなあ」

 担任が視線をノートに落として消しゴムをかける。

 担 任「これでわかったろ。立候補は辞退でいいよな」

 厽 山「いやです」

 担任が顔をあげて厽山を見る。

 担 任「なんでかな?」

 厽 山「前回人気がなかったのは分かりました」

 担 任「うんうん」

 厽 山「でも出ます」

 担 任「どうしてかな?」

 厽 山「リーダーになりたいんです。立候補するのは自由なはずでしょ」

 担 任「そりゃ自由だけどさあ、お前がへこむ姿を見たくはないんだよなあ」

 厽 山「先生は諦めが早すぎますよ。選挙運動はこれからなんですよ。僕は番長になってリーダーシップを発揮したいんです」

 担 任「そういうことも大事だろうけど、番長としての基礎的な素質がお前にあるとは思えんのだよ」

 厽 山「たとえばどんなところが?」

 担 任「おまえ、停学になったことあるか?」

 厽 山「ありませんけど」

 担 任「ほらみろ。そんなんで不良が務まるもんか」

 厽 山「遅刻だったら、したことありますよ」

 担 任「そんなの俺だってしょっちゅうだ」

 厽 山「ふん」

 担 任「教師を殴ったことは?」

 厽 山「ないです」

 担 任「ほらこれだ」

 厽 山「先生の悪口はしょっちゅう言ってます」

 担 任「早退したことあるか?」

 厽 山「いいえ」

 担 任「ずる休みしたことは?」

 厽 山「ありません」

 担 任「番長っていうのはなあ、半分は欠席するもんなんだぞ」

 厽 山「授業中は半分うわの空です」

 担 任「けんかしたことあるか?」

 厽 山「弟となら」

 担 任「かつあげは?」

 厽 山「されたことなら」

 担 任「やっぱり番長には向いてないよ」

 厽 山「次の質問をください!」

 担 任「今から隣の教室に行ってあばれることはできるか?」

 厽 山「無理ですよ」

 担 任「じゃだめじゃん」

 厽山が立ち上がって、

 厽 山「僕は成績がよくないから。せめて内申書で印象を良くしておかないと」

 担 任「・・・なるほど、そういうことだったのか」

 厽 山「これしかないんです。学級委員とか、番長とか、リーダーシップを発揮したって、内申書に書いてあれば、進学にしろ就職にしろ、多少は評価してもらえるんじゃないかと」

 担 任「お前の気持ちはよーく解った」

 厽 山「じゃあ、立候補してもいいんですね?」

 担 任「番長はやっぱりあきらめたほうがいい。その代わり、週番をやらしてやろう。どうだ? やってみないか?」

 厽 山「うちの学校に、そんなのありましたっけ?」

 担 任「お前のために作ってやるよ」

 厽 山「はあ」

 担 任「名前に番がくっついてるんだからいいだろう、週番やれ」

 厽 山「それって一週間だけですか?」

 担 任「毎週やっていいよ。お前しかいないんだから。なんなら卒業するまで任せてやってもいいぞ」

 厽 山「内申書はどうなります?」

 担 任「番を張っていたと書いてやるさ」

 厽 山「引き受けます」

 担 任「ついでに日直もどうだ?」

 厽 山「おお、二刀流ですか?」

 担 任「ああ。先生からの、たってのお願いだ」

 厽 山「任せてください」

 担 任「がんばれよ、お前の粘り勝ちだな」

 厽 山「えへん」

 得意顔の厽山であった。


読んでいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ