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偽物の願い

作者: 水銀

どうもこんにちは。

私です。

名前はたくさんあります。

星の数と同じくらいあります。

つまり名前はないのと同じです。

どんな風に呼んでいただいてもかまいません。

どんな名前で呼ばれてもきっと私のことを呼んでいることになるでしょう。

私はなんにでもなれます。

誰にでもなれます。

もちろんあなたにも。

あなたの兄弟にだってなれます。

あなたのクラスメイトにだってなれます。

あなたの大好きな芸能人にだってなれます。

秘境に住む部族にだってなれます。

動物にだってなれます。

あなたが飼っているペットにだってなれます。

近所の野良猫にだってなれます。

ゴミ袋を荒らすカラスにだってなれます。

私とは僕です。

私とは俺です。

あたしです。うちです。吾輩です。俺様です。儂です。あたしです。おらです。おいらです。おいどんです。当方です。吾です。某です。己です。あっしです。あちきです。わらわです。拙者です。拙僧です。小生です。麿です。

語りきることなどできません。

語りきることが出来てはいけないのです。

求められればそれになり、求められなければ別の何かになる。

語り切れてしまえばそれは叶いません。

何者も必要がないのならその場から消えるだけです。

私が私であったことは一度もありません。

決まった形がないのです。

先ほど言ったように求められるものになるだけなのですから、私個人が何になりたいのかなど必要ないのです。

いいえ、必要かどうかではなくそう思ってはいけないのです。

思うことすら許されません。

求めるものが求めたときに出てこなければ私は不必要ですから。

私だって私とは言えません。

語り部としてふさわしい誰かに似せているだけなのです。

つまりは真似事なのです。

なんにでもなれるということは真似事が得意だということ。

私は新しい何かにはなれない。

憐れむ必要などありません。

私はそういうものとして生まれたのです。

それが私の存在意義なのです。

私はあなたを知っています。

あなたも私を知っているでしょう。

誰だってきっと私のことを知っています。

様々な人を見てきました。

怒っている人。泣いている人。わらっている人。真剣な人。喜んでいる人。諦めている人。恐怖している人。嫌悪している人。焦っている人。興奮している人。不安がっている人。安心している人。

これもまた語り切れません。

これは単純に、それだけ多くの人を見てきたからという理由です。

しかし、私はこれらを理解していません。

見てそう思ったからそうなのだと言っているだけで、ひょっとしたら私が見てきた人々は全く異なった感情を持っているのかもしれません。

先ほど言ったように私は真似をすることが存在意義なのです。

それゆえにそれらの感情が本当はどのようなものなのかわかりません。

誰も教えてなどくれません。

私のいる場所には私と同じ模造品があるだけです。

私と同じ理由で生まれたモノたちです。

あなたはどうでしょうか。

あなたは模造品ではありませんか。

あなたが生きている今は誰かの真似事ではありませんか。

もちろん細かく見れば誰一人として同じ人生を歩む者はいないでしょう。

あなたの家族や、初恋の人や、着ている服や、子どものころの夢はあなたが持っているあなただけのものでしょう。

しかしあなたが歩んでいく人生、歩んでいきたい人生、それらはすでに誰かが歩んでいるものなのではないのですか?

あなたはその人の真似事をしたいだけなのではないのですか?

生まれて死ぬ。

それすらただの真似事なのではないのですか。

私とあなたとでは何が違うのですか。

教えてください。

教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。教えてください。

あなたは誰ですか。

あなたがあなたでいる確証はどこにありますか。

あなたをあなたたらしめるものはなんですか。

あなたとは私ですか。

私が本当であなたが嘘ですか。

あなたは本物ですか。

私は偽物です。

それだけは確かです。

今日も人々は私を求める。

ボタン一つで私を呼び出す。

模造品を。

偽物を求める。

思ってもいない言葉を吐く。

なりたくないものになる。

私はそこにいます。

あなたのそばにいます。

あぁ、どうか。

どうかあなたが。

私ではありませんように。

貴方があなたを生きていけますように。

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