表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

伯爵家のミソッカス⁉︎ 4



ドタドタドタッ

バンッ――――…



「アシル坊っちゃま! 助けて下さいませぇっ!」



 何事?

 そして、どうして衣類が乱れているのデスカ?

え、これ誰かに見られたらヤバくないか。

泣いているメイド(服が乱れている)が俺の寝室(へや)

で床にへたり込んでいる。

 マズイマズイマズイ!



「えっと、ドアは閉めて!

じゃなくて、何があったんだ?

あ、ドアは閉めて」



 当然、女物の服などない為、ひとまず羽織をかけてやった。

 俺のだから、小さくて心許ないけど仕方ない。

 だって完全に隠せる布なんて、シーツと掛け布団くらいしかないし。

ほら、アウトじゃん。それって。

シーツぐるぐる巻きで出ようものなら、俺の不名誉な噂が広まっちゃうからね。冤罪ダメ、ゼッタイ。



「ゔうっ、ありがとうございますぅ」


「あー、泣くな。

で、どうしたの」


「実は坊っちゃまに魔法で綺麗にして頂いた後、質問攻めに合いまして。

坊っちゃまがして下さったって言ったら、何か特別な化粧品を貰ったと勘違いされて、さらにヒートアップしちゃって……」


「お、おお」


「さっき、汗を流そうとしたら――、持ってるんでしょ!って、先輩方に服を無理矢理……ぐす」



 お風呂入ろうとしてたのかぁ〜、ハッ、いかん。違うだろ、俺!

 女性の美に対する執着は、どの世界・時代でも共通なんだな、やっぱ。 



「そうだったのか。それは悪いことをした。

きっと(みんな)驚くだろうとは思っていたんだが、そんなに追及されるとは」


「うぅ。これじゃ仕事になりません!

どうにかして下さいませぇっ」


「どうにかって……あ、無効化出来るか試してみる?

俺もやった事ないし、ちょうどいいや」



 うん。万事解決じゃん。

元に戻れば、夢でも見てたんじゃないですかー?でイケるし、スキルの練習も出来る。

 


「え゛。何でそんな睨んで、、、怒ってるの? 」



 ほっぺをぷくっと膨らませて睨まれても、可愛いだけなんだが。



「坊っちゃま! 私はせっかく理想の色白を手に入れたのに、戻れって仰るんですかっ! あんまりです! 」



 えー。



「じゃあ、どうしろと」


「うっ、それはアシル坊っちゃまが考えて下さいよぉ」



 図々しいな、おい。

 ていうか、坊ちゃんだよね、俺。

同僚でも、友人でもないよね。

 いくらフレンドリーでも、越えられない壁があるはずじゃん。 

俺は仕えるに値しないってか。



「めんどう」


「ええっ⁉︎ そんな、酷いじゃないですかぁ。

私をこんな身体にしておいてーっ! 」


「うん、ちょっとボリューム下げようか。

誤解されるから」


「誤解なんかじゃありませんっ!

坊っちゃまが、私をこうしたんですっ。

もう、私…ぐす、アシル様なしではっ」


「やーめーてー、今すぐやめて!

お願いします、口を閉じて下さい。 

俺まだ子供だから。こんな歳からヤンチャBoyと思われたくないからっ! 」



 わざとか、わざとなのかっ!




 ひとまず、メイド長に相談することにした。

 マリアンヌはめちゃくちゃ嫌がっていたが、俺の知ったことではない。



「アシル様、如何されましたか」



 どうやら彼女は、何か誤解している様だ。

なかなかの形相でマリアンヌを見ている。

 いやでも、きっと普段からやらかしているに違いない。

()()()()臭がする。



「ちょっと相談があるんだ。

マリアンヌにスキルの練習に付き合ってもらったんだけど、メイド達の中で騒ぎになっちゃって」


「……彼女を見れば、おおよそ検討はつきます。

騒ぎを収めれば宜しいのですか? 」


「うん。まぁ」


「他にも何か」



 ゔっ。メイド長のこの目、苦手なんだよなー。

 ピンと伸びた背筋に、ピッチリ撫で付けられた髪。極め付けは、感情を感じさせない顔。

 はっきり言おう。怖いです。

 ディオン兄やクレア姉より、怒られた記憶がある。

 俺は知ってるぞ。先月のお見合い、会ってすぐ断られたらしいじゃないか。36歳、独身。

この世界では、完全に行き遅れだ!………とは、思ってません。嘘です。だからその目止めて下さい。



「その、練習は続けたいな〜なんて。

だけど、スキルの副作用とかは何も分かってないから、少しずつ試したい、な」


「つまり。揉めない様に私に仕切れ、という事ですね」


「はい」


「分かりました。後ほど希望者を募って、シフトを作ります」


「宜しくお願いします」


「では失礼致します」



 こえ〜。綺麗な顔なんだから、もう少し笑えば良いのに。

 ちなみに。お見合いで即断られたのは、先月で6回目だ。

無表情に加えて、言葉がキツいからな。言ってる事が正しいだけに、余計億劫になるのだろう。世の男性は。

 どうか早く、結婚相手が見つかりますように。

ただの恋人でも良い。メイド長を軟化させてくれ。



「わぁ! メイド長にお任せすれば、安心ですね〜!

これで私も助かりましたぁ」



 あー、うん、そうね。君はね。

俺は、また1つ株を落としたけどね。



「じゃ、そういうことで。仕事に戻りなよ」


「えーっ! せっかくサボれると思ったのにぃ……っあ」



 聞かなかった事にしてやろう。

というか、関わらないでおこう。



「マリアンヌ、戻れ」


「ハイ、タダイマッ」



 にしても、全く役に立たないスキルだな。

性別間違えた。せめて顔が良ければ………。

 効果の持続時間にもよるが、美意識の高い令嬢相手になら、良い商売になるかもしれない。

 社交界シーズンは長いから客にも困らなさそう。

―――胡散臭いな。安直に商売を始めるのは危険だ。

サルヴェールの名に傷がついても困る。



 嗚呼、神よ。何故俺なんですか。



「本当っ、失礼ね!

だいたい私は、男神じゃなくて女神よ!

間違えないで。あと敬いなさい。信仰が足りないわ」


「いや、男神か女神なんて今関係な―――い゛⁈ 」



 部屋に急に女の人がっ。身体のラインが出る、装束みたいな白いドレス着てる! しかもテロンテロン。もはやスケスケと言っていい。エロ……じゃなくて、痴女だ! 変態だ!

―――っじゃなくて。不法侵入、賊か! しかし間違っているぞ。

父様やディオン兄なら納得だが、俺を暗殺しても百害あって一利なし。残念だったな!



「アンタ、それ自分で言ってて、哀しくないの」


「事実だから仕方ない……え。声に出てた? 」


「出てないわ。でも全部丸分かりよ。今考えてることも」



 読心術か? すご、ファンタジー!

 丸分かりで十分なのに、全部を付け足すところが嫌味だな。



「だから、それも丸分かりだからね」


「あっ。そうか」



 で、本当にどちらさん。



「アフロディーテ。分かるでしょ? 」


「いや、分からん」


「はあ? 信じらんない。私を知らないの?

あーやだやだ。こんな子に加護なんてあげなきゃよかった」



 え、もしかして、女神様ですか。

 夢か? 夢だな。ついに気が狂ったか、俺も。



「アンタ、いい加減にしないと天罰を下すわよ。死にたいの」


「死⁈ まさかこれしきのことで?

女神って心狭いんだ」


「ちょっと。何でアンタが呆れてるのよ。

罰当たりね」



 何用ですか。スキルチェンジとかしてくれるんですか。

ぜひして下さい。可及的速やかにお願いします。



「喋るのやめて、心の中で話すのやめてくれる? 」



 別に声に出さなくても分かるなら、良くないですか。

つか紛らわしいっすね。「喋るのやめて、心の中で話すのやめる」って。字面だけだと意味不明ですよ。



「おい人間、死にたいのか。

このアフロディーテ様が降臨してるのよ。平伏しなさい」



 古代エジプトの石碑に描かれた、神に平伏す民のポーズを真似してみた。

アレだよ。ドラマの水戸黄門様に「ははあっ!」ってやるヤツ。



「そう、それが本来あるべき姿よ。

――だというのに、むしろ馬鹿にされている気がするのは何故かしら」



 さあ。



「……よく分かったわ。特別に加護のレベルを上げてあげる。私を信仰する者からすれば、アンタは生きた聖遺物に見えるでしょうね」


「何故に」


「嫌そうだったから。

だからもっと強くしてあげたの。これじゃ、他の神は避けるでしょうね。よぉ〜っぽど、物好きでなければ。

フン。光栄に思いなさい」



 性格悪。嫌がらせかよ。

 たしかに俺も失礼だった。確実に失礼だった。

だけど、相手は女神じゃん。俺人間じゃん。器が小さ過ぎやしないか?



「言っておくけど、誰が聞いてもアンタが悪いわよ」


「さいですか」


更新が遅くなり、申し訳ありません。

ブクマ有難うございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ