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世界の創造主の自分が異世界に転移出来る装置を作ってみた

  俺は二階の寝室に移動した。実は寝室からも地下基地に移動出来る。寝室の扉から向かって左側にある本棚の特定の本をこちら側に倒すと、奥にあるエレベータールームに入れる様に成る。

  秘密裏に作成していた装置「DMT-∞」の完成までもう少しだったので、終わらせることにした。

  この装置は、異世界に転移出来る装置だ。俺達は装置を使わなくとも、転移自体は可能なのだが、その回数が五十回と決められている。それを超えると体が負担に耐えられなくなり、分解されてしまう。

  しかし、この装置は世界と世界とを繋ぐ「穴」を空けて転移するので、体に負担がかかる心配が無い。

  どうして世界の創造者なのに、満足に世界を旅出来ないのか。それは俺達三人を生み出した、言わば「産みの親」である「R次元」が関係している。

  R次元というのは、意思を持った次元で、途轍も無く大きい。具体的に言うと、「Ω次元が亜原子粒子程度の大きさに見える程大きい、今俺達が住んでいるこの世界」が素粒子レベルの大きさに見え、更にこの世界と同じ大きさの世界を複数内包している「膜」がビー玉ぐらいの大きさに成る程大きく、R次元にある俺の実家の宝物庫の隅っこに置いてある箱に余裕を持って保管出来る。その実家ですら原子レベルの大きさにしか見えない。それがR次元だ。

  R次元は俺達の因果律を操作している。とは言っても完全に操っている訳ではなく、複数の分岐から選ばせる、という形式に成っている。

  因果律は操られている本人達には閲覧出来ない。しかし過去の履歴と今まで適用されたペナルティの履歴を閲覧することが出来るので、そこから因果律の予測はある程度出来る。

  ペナルティというのは、R次元が用意していなかった因果律に分岐した際に発生する。ペナルティを同時に三回適用されている時に死亡すると、蘇ることが出来なくなる。俺はまだ二回しかペナルティを適用されていないが、一回目が「生命の誕生」、二回目が「羽流との喧嘩別れ」という所から見るに、他の二人も大分艱難辛苦、苦心惨憺なものに成っているだろう。嗚呼、限度を知らぬ暗晦に溺れる様を見るのがそんなに好きなのか。

  若しくは、成長を実行させようとしているのか。今となってはどうでもいい事だ、

  暗晦と言えば、R次元の内部はホワイトアウトしたかの様に白一色で、かなり殺風景なものに成っている。なので実家の周りにドーム状のモニターを付けて、そこに流れる雲と青い空の映像を映している。稀に雨に成ったり、雪が降ったりしている。

  さて、どうやって世界に穴を空けるのか。以前自分のクローンで試行した際に、一番安定した方法を活用する。

  先ず、ナノレベルのドリルで原子に圧力をかける。数値としては、十三兆パスカル程度から原子の周りの空間が歪曲を開始する。空間が歪曲するという事は、それ即ち穴が空いたという事。歪曲した時点で世界と世界が繋がったと考えていい。

  空間の歪曲に人が収まる程の大きさに成るまで圧力をかけ続ける。そうすることで、異世界に転移出来る。プレス型とDACを合わせた感じだ。

  十三兆パスカルまで圧力をかけなくとも転移は出来るが、精度が不十分に成る。試行錯誤の末、十三兆パスカルから穴を空けたら百パーセント転移出来る事と、原子に圧力をかける物体を回転させたら二十一兆パスカルまでかけられる事を発見した。ドリルの形にしたのは、その方が格好良いと思ったからだ。因みにドリルの先端はしっかり平らにしてある。

  今回は人が三人分入る装置本体も転移させなければならないので、時間がかかる。どうすれば時間をかけなくとも転移出来るのか。

  一秒間の回転数を上げる事で、一人の転移する時間が三分から一気に十秒まで縮んだ。装置本体で計算すると四十九秒に成る。

  ナノドリルは使い捨てなので、装置に「そこにナノドリルを入れて置けば、自動で定位置にセットしてくれる」設備を作る。ナノドリルの製造は、羽流と喧嘩する前に羽流が作ってくれた「無限複製装置」に任せる。ナノドリルの製造中は、クローンの製造を止めなければいけない。実験では基本的にクローンを試験体として使っているので、それ故過度な実験は控える様にする。

  四苦八苦して、漸くDMT-∞が完成した時には、既に午前二時半を回っていた。そう言えば、まだ夕飯を食べていない事に気付いた。あのサンドイッチは間食だった。

  椅子に腰掛け、夕食を取るか、睡眠を取るか、暫く悩んだ。















  ……どうやら少し眠ってしまった様だ。目を擦りながら開けると、きょうが隣で立っていた。


「まだ夕飯食べて無かったでしょ? だからラーメン作ってきたの。出来たてホヤホヤだから暖かいよー」


  そう言って、ラーメンとケーキ半ホールを机に置いた。


「ケーキは、さっき自分で作ったやつ。半分こしようかと思って」


「……ありがとう」


  ラーメンを食べている最中に、DMT-∞の事を話した。


「へー、そんなの作ってたんだ」


「朝になったら、試しに転移しようかなって」


「ぼくも行って良い?」


「三人分入るから、全然大丈夫」


「いやー、今から楽しみだなぁ」


  きょうはウキウキしている。俺はラーメンを食べ終え、デザートのケーキも食べ終えた。正直、未だ腹は満たされていないのだが、そうは睡魔が許さない。異世界で色々食べて来よう。そう決意した俺達は


「ご馳走様」


 の挨拶をし、開発室を後にした。

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