第四章~それが戦うという事だ~
「こいつ!青龍の炎が効いていないのか!?」
龍崎のフレイムのカードにより放たれた青龍の炎が相手『シャドー』に四方から襲い掛かる。
だが、『シャドー』にダメージを与えられてはいないのか、目立ったダメージは
見て取れなかった。
『シャドー』は反撃を開始した。天空に向かって吠えた後、空中に浮かぶその巨体の周囲に
激しい水の奔流を召喚し自ら龍崎へと体当たりを仕掛けた。
「避けろ!龍崎!!」
次郎が叫ぶ。しかし、龍崎は防御態勢を取りその体当たりを受け止めた。
刹那、龍崎の体が宙に舞う。
『シャドー』は再び、龍崎を攻撃しようとその目で龍崎を捉える。
龍崎には2つ程、この『シャドー』以外に気になっていた事があった。
1つは自身にユニコーンを預けた人物、角谷零馬が『薔薇の殺人者』の黒幕ではないかと言う事。
もう一つは龍崎達が駆け付ける前にこの『シャドー』と戦っていた、今は膝を付き動けない
『薔薇の騎士』の事。
次郎は言っていた、どこに『薔薇の暗殺者』がいるか分からないと・・・
事の始まりは1時間ほど前
次郎のバイト先でもあり、今は脱落してしまった『薔薇の騎士』小鳥遊 幸代が営むオカマバー
『情熱の蒼い薔薇』を出た龍崎と次郎は、自身達に宿った四聖獣『青龍』『白虎』の気配察知能力により
近くで『シャドー』が出現した事を知る。
そして、その『シャドー』が誰かと戦っている事も。
【新一!『シャドー』の気配だ!】
「!?どっちの方向だ!」
龍崎と青龍の会話に次郎が口を挟む。
「待て!・・・既に『薔薇の騎士』が戦闘中らしい・・・」
次郎が白虎の声を聴きながら龍崎を止めた。
「なら!尚更早く助けに行かないと!」
「忘れたのか!?『薔薇の殺人者』かもしれないんだぞ!!」
その言葉で龍崎は足を一瞬止めるが
「それでも・・・それでも、そうじゃなかったら・・・放っておけないよ!
それに、もしもの時は次郎さんが助けてくれるんでしょ?」
「はぁ・・・警戒だけは忘れるなよ・・・」
次郎は龍崎の思いと自身を信じ切っている龍崎に負けてしまった。
それと同時に彼は決意する。
(何があっても、こいつを『薔薇の殺人者』にやらせはしない・・・)
⇒龍崎達がその場に辿り着くとそこだけ不自然に黒い霧に覆われていた。
普通の人ならば見過ごし、その中に入ってしまっても気が付かないだろう。
また、その一帯に『シャドー』や『薔薇の騎士』がいる事も外からでは分からない。
だが、幻獣を宿した龍崎達にはその姿を見る事が出来た。
『シャドー』は水を使った攻撃をしている。
よく見ると宙に浮いてはいるが鮫の様だった。
対して、『薔薇の騎士』も水を使った攻撃をしている。その剣は水が波打つかの様な優雅な曲線を描いていた。
「私だけじゃ・・・」
二人には聞こえていないが、その『薔薇の騎士』は呟く。
「水・・・か。合間 伍かもしれないな・・・」
「それなら、好都合じゃないか?」
次郎の呟きに龍崎が意外な返答を返した。
「・・・合間なら、俺たちが止めれば『薔薇の殺人者』を食い止められる・・・」
「だが、もし本当に角谷 零馬があちら側だったとしたらどうする?」
龍崎は少し考えるが
「ユニコーンは俺が持っている・・・もしも先生が現れたとしても手負いの上に
新しい幻獣をそうは使いこなせないと思う・・・それに、なら尚更本心を聞いてみたいんだ・・・
それに、もし『薔薇の殺人者』だったとしても、俺は後悔したくない!」
「・・・分かった・・・行くぞ!」
『アームドチャージ!』
「青龍!!」
「白虎!!」
小剣を取り出し、『薔薇の騎士』へと変貌した二人は黒い霧へと走り出した。
ユニコーン!サンダー!
雷撃が『シャーク・シャドー』に直撃する。
膝を折った水使いの『薔薇の騎士』へ攻撃しようとしていた所を救い出す事に成功した。
『シャーク・シャドー』は雷撃により痺れて動けない。
「大丈夫ですか!?」
龍崎は水使いの『薔薇の騎士』に声を掛けながら両者の間に割って入った。
そして、『シャーク・シャドー』へ追い打ちを掛ける。
セイリュウ!フレイム!
剣に炎が宿り、龍崎はそれを横一閃へと薙ぐ。
四方に散らばった炎は様々な方向から『シャーク・シャドー』へと襲い掛かる。
着弾し、爆炎が上がる。しかし、
「こいつ!青龍の炎が効いていないのか!?」
⇒爆炎の中から『シャーク・シャドー』がその顔を現す。
その顔にダメージは見て取れない。
『シャーク・シャドー』は龍崎の攻撃により、標的を龍崎へと変更した様だ。
天に向け方向を上げた後、巨大な水の奔流と一体化し龍崎へと体当たりを仕掛けた。
「避けろ!龍崎!!」
だが、自身の後ろには膝を折った水使いの『薔薇の騎士』がいる。
避ける訳にはいかなかった。
龍崎はそのまま防御姿勢を取り、『シャーク・シャドー』の攻撃を受ける。
刹那、龍崎の体は宙を舞う。
その時だった。
マーメイド!リフレッシュ!
水使いの『薔薇の騎士』がカードをスラッシュ、スキャンした。
その剣から放たれた水が龍崎へと向けられ地面に激突する寸前の龍崎に激突する。
「貴様!!」
次郎が水使いの『薔薇の騎士』へと詰め寄り、その体を掴む。
「貴様・・・やはり『薔薇の暗殺者』か!!」
次郎は水使いの『薔薇の騎士』を突き放し、その剣を向けるが
「黙って!」
高い声、女性の声だった。合間ではないらしい。
その事に次郎は一瞬動きが止まる。
ハッとして、言葉を出そうとするが、その前に水使いの『薔薇の騎士』が話し始めた。
「あのカードは体力を回復させるカード・・・彼のダメージは緩和されたはずよ!」
その言葉の通り、龍崎はすぐに地面から立ち上がった。
「あ、あれ??」
「大丈夫か!?龍崎!!」
次郎が駆け寄る。龍崎は体をあちこち触るが、不思議そうに頷く。
「後で、あいつに礼を言わなきゃならないな・・・」
次郎の言葉に龍崎は不思議そうに首を傾げるが、
【龍崎様!あの『シャドー』属性を持っています!】
ユニコーンが突然話し始めた。
「属性だと!?」
その言葉に反応したのは次郎だった。
この空間では、宿した本人以外にも近くにいる者には幻獣の声が伝わる様だった。
「属性??」
またも、龍崎は首を傾げた。
⇒次郎は『シャーク・シャドー』から目を離さずに龍崎へと話し始めた。
「カゲヤマから聞いていないか?俺達『薔薇の騎士』には属性が備わっている事を・・・
だが、レベル1以降で対処出来ない『シャドー』も存在しないため、必然的にその意味はなかった。
それは、どんな個体であろうが属性を備えていないためだ。
もしも、奴らに属性が備わったとしたら、それは奴らで言うレベルが・・・」
そこまで言った時だった。『シャーク・シャドー』は口から水撃を二人に向けて放った。
二人はその攻撃を避け、続きを白虎が繋いだ。
【あの『シャドー』はレベル2以上と言う事だ!そして、あの攻撃は水属性・・・
つまり!今回、青龍は役立たずだ!!】
【!?】
「成程・・・水に対処し得るのは・・・雷か!」
「そして、白虎の属性である地属性!」
攻撃を避けた二人はそれぞれカードをスラッシュ、スキャンする。
ユニコーン!サンダー!
ビャッコ!グランド!
再び上空から雷撃が『シャーク・シャドー』を襲う。
響く轟音と共に麻痺した『シャーク・シャドー』にさらに岩の奔流が舞う。
次郎が召喚した巨石群が上空から『シャーク・シャドー』へと落ちていく。
そして
ユニコーン!サンダー! ファイナルブレイク!!
ビャッコ!アームド!
ビャッコ!グランド! ファイナルブレイク!!
龍崎は駆け出し、跳躍する。
途中でユニコーンの剣は姿を消し、代わりに跳躍した龍崎の足へと現れる。
龍崎はそのまま、目線を合わせた『シャーク・シャドー』へと飛び蹴りを放ち
その体を引き裂く。
「うおりゃぁぁぁぁ!!」
更に、次郎が続く。
召喚された巨石群を飛び交い、アームドのカードで装備した爪を使い
『シャーク・シャドー』の体を切り裂いていく。
「水は火に強く、火は風に強く、風は地に強く・・・」
『シャーク・シャドー』の頭上まで駆け上がった次郎はその爪で『シャーク・シャドー』を
X字に切り裂いた。
「地は水に強い!!滅しろ!!」
着地した次郎の背後で『シャーク・シャドー』が爆炎を上げ爆発した。
「ホワイトタイガー・ネイルブレイク・・・」
⇒次郎の呟いた言葉に龍崎は彼を二度見してしまったが
今はそれどころではないと思い直し、水使いの『薔薇の騎士』の元へ駆けて行く。
龍崎のその行動を見た次郎は警戒しつつ彼の後ろに続いた。
「大丈夫ですか?」
龍崎が手を差し伸べるとその手を掴んだ
「ありがとうございます」
高い声から女性だと思われた。
次の瞬間、黒い霧に覆われた影の世界から出て現実世界へと戻った。
この場の誰も戦意を持っていない事が明らかになる。
それでも、次郎は警戒していた。
しかし、その場にいたのは
少し小柄ではあるが綺麗な黒いロングヘアーに、ゴシックロリータ調の服を着こなした美少女だった。
女性だとは思っていた二人だったが、まさかの人物像に呆気に取られていた。
「先ほどはありがとうございました。私、姫城 美月と申します。」
そう言って、彼女はにこっと笑って頭を下げた。
「え、え~と、龍崎 新一です。」
「お、大虎 次郎・・・だ・・・」
「ふ~ん、新ちゃんに次郎ちゃんね。了解!」
「しん・・・ちゃん・・・?」
「次郎ちゃんだ!?」
「そ!呼びやすい方がいいでしょ?それに二人とも見た所、高校生か大学生じゃない?
なら!ここは、お姉さんに従うのが礼儀でしょ?」
「え?おねえさん・・・?君・・・年、いくつ・・・」
そこまで言った所で龍崎は美月に脛を蹴られていた。
声にならない声を上げ龍崎は蹲る。
「こら!女性に年を聞かない!」
「あ~ごめんなさい!」
いきなり野太い男性の可愛らしい喋り方が聞こえてきた。
「あ!幸代さ~ん!」
美月が手を振り、幸代が彼らの方へと駆けてくる。
龍崎も次郎も既に理解する事を放棄していた。
そして、幸代に連れられ一行は再び『情熱の蒼い薔薇』へと戻っていった。
だが、それを近くのビルから覗き見ていた者がいた。
「ちっ・・・」
舌打ちしたその影は、一行とは別の方向へと歩き出す。
その手に小剣の様な物を持ち、鈍い輝きを発しながら。
⇒翌朝、久しぶりに龍崎に平穏が訪れていた。
初めて『シャドー』と遭遇してから三日目である。
怒涛の様に過ぎたこの三日で確認し切れていない事は多々あったが
その殆どは龍崎一人でどうにかなるものでもなかった。
「はぁ・・・」
龍崎は溜息を吐くとベッド横にあるテーブルに置かれた小箱に目をやる。
一つは青龍の小剣が収められている。一つはユニコーンの小剣が
もう一つは龍崎が今まで確保した『シャドー』のカードと、角谷から譲り受けたカード。
龍崎はカードの箱に手を伸ばし、一枚一枚捲っていった。
大きさは掌に収まるくらい、感は紙よりもプラスチックに近く、全体に光沢のあるガラスの破片の様な
エフェクトが施されている。
自身に宿る四聖獣
青龍のカード・・・全体が赤色の枠に覆われている。
フレイム、自身がよく使う攻撃系カード。
アームド、次郎が好んで使う装備系カード。カードには青龍の顔が分かれた手甲の様な物が描かれていた。
サモン、青龍を召喚するカード。
角谷から預かった幻獣
ユニコーンのカード・・・全体が金色の枠に覆われている。
なるほど、これが属性の色か
サンダーやサモンは同様、アームドのカードは見当たらない。
幻獣の他にも『シャドー』のカードが数枚入っていた。
ベアー・・・自身が初めて遭遇した『シャドー』肥大化した腕で攻撃していた。強力な腕の一撃だろうか。
ウルフ・・・自身が初めて倒した『シャドー』尻尾を槍の様に使用していた。槍の一撃だろうか。
クロウ・・・次郎と出会った時に倒した『シャドー』幸代のケツァルコアトルの様に翼を得るのだろうか。
ホッパー・・・角谷が使用していた。ジャンプ力を強化する。
エレファント・・・幸代の話の中にあった『シャドー』巨大な体格だったそうだが、
どんな効果があるのだろうか。
シャークのカードは次郎が回収していたため、龍崎の手にはない。
その他にも何枚かあった。
スタッグビートル、ワスプ、ヘッジホッグ、ドラゴンフライ、キャンサー、イーグル、オウル、
ホエール
「・・・鯨って・・・どんなに大きかったんだ!?」
しかし、最後のカードを目にした龍崎は息を飲む。
ケツァルコアトル
⇒龍崎は次郎に連絡し『情熱の蒼い薔薇』で落ち合う事となった。
次郎の話では美月も呼んでいるそうだがまだ店には来ていなかった。
「それにしても、美月ちゃんも『薔薇の騎士』だったなんて~私の人を見る目も落ちたもんね~」
幸代は二人を店の奥に通すと、美月ちゃんが来たら声をかけるわとカウンターへ戻っていった。
幸代が部屋を出たのを確認すると龍崎はカードを広げ、
次郎はそれを一枚ずつ確認していった。そして、ケツァルコアトルのカードで手が止まった。
次郎は龍崎に目で合図するとカードを置き話し始めた。
「・・・『薔薇の殺人者』でないなら、なぜこのカードを幸代さんに返さなかったんだ・・・?」
龍崎は一瞬考えこむが答えは出ない。
そのまま次郎は続けた。
「勿論、これだけが証拠にはなり得ない・・・」
「結局はカードが見付かったというだけの進展ですね・・・」
その言葉を受けた次郎は、ニヤリとして龍崎を見る。
「いや・・・そうでもないぞ?」
次郎から連絡を受けた美月は急いで『情熱の蒼い薔薇』へと向かっていた。
だが、その途中マーメイドが『シャドー』の気配を感じ取った。
見て見ぬふりなどできる訳もなく、美月はその場へと駆け出した。
そして、そこには前日に助けた少年の姿もある。
再び、その少年は襲われているようだった。
「君・・・運悪いのね・・・」
美月はスカートを翻し、その少年の前へと躍り出た。そして、少年を逃がし、彼女は叫ぶ。
「アームドチャージ!マーメイド!!」
地面へと向けられた小剣を中心に魔法陣が描かれ、
その魔方陣から溢れた光は美月を包んでいく。
黒を基調としたゴシックロリータ調の服は一瞬、流れる水色の様になったかと思うと
自身の体の鎧へと変化し装備されていく。
金色の髪は後ろに纏められ、最後にフルフェイスの兜を被る。
その兜は額にマーメイドが躍る、船首の様だ。
そして、剣は大型化した。
美月は変貌した後、相手を見る。
眩い光に当てられた『シャドー』は見当たらない。
⇒美月が『シャドー』を探していると突然背後から鋭い打撃が加えられた。
美月はよろけながらもその方向へ振り向くが、そこには何もない。
「どういう事・・・?」
【美月、相手はもしかしたら姿を消せるのかも・・・】
マーメイドが美月に呼び掛ける。
「姿を消す・・・?おばけじゃあるまいし・・・」
そう思った時だった。再び背後から攻撃が加えられた。
先ほどよりも強い一撃に美月は膝を付いた。
「本当に姿を消せるとして、どうすれば・・・そうか!」
美月は立ち上がりカードをスラッシュする。
マーメイド!ウォーター!
【どうするの?】
美月はニヤリと笑って見せ、剣を天へと掲げた。
「こうするのよ!」
天に掲げた切っ先から水が噴き出し、それはやがて影世界全体に雨を降らせた。
本来、『シャドー』と『薔薇の騎士』しか存在しない影世界で建物や地面以外に
雨粒が当たり滴る事があるとすればそれは・・・
美月はすぐに『シャドー』をその目に捉えた。
「見付けた!」
美月が駆け出し、その『シャドー』へ攻撃を仕掛けるが
『シャドー』は素早く避けてしまう。相手へ攻撃を加える事が出来ないが
相手も美月を攻撃することに惑っているようだった。
だがその時
ビャッコ!グランド!
電子音性が鳴り響き『シャドー』は岩の雪崩に巻き込まれた。
遂に『シャドー』の姿が白日の下に晒されたのだ。
「ナイス!次郎ちゃん!」
美月は振り返らずに声を掛ける。
「・・・その次郎ちゃんってやめてくれないか?」
「あいつ、カメレオンか!」
「そうらしいな。行くぞ!」
岩の中で身動きの取れない「カメレオン・シャドー」へ三人で仕掛けた。
⇒マーメイド!ウォーター!
ビャッコ!グランド!
セイリュウ!フレイム!
ファイナルブレイク!!
「こいつは・・・レベル1だったのかな・・・」
龍崎は灰化した『シャドー』からカードを拾い上げた。
次郎もそれに続いてカードをのぞき込む。
「このカードの効果は、ステルス・・・か?」
「う~ん、それなら、戦いやすくなるんだけど・・・
美月さんはどう思います?」
龍崎が美月の方を振り返る。
しかし、そこにいたのは思いがけない事態だった。
美月は龍崎達に背を向けていたが、
美月と同じくらいの背だろうか彼女の背中越しに一人の『薔薇の騎士』が立っていた。
それだけではない。剣が、美月の背中から生えるいた。
いや、美月の体を剣が貫き、その剣を伝って美月の血が滴っていたのだ。
謎の『薔薇の騎士』は二人の気配に気付き、剣を引き抜いて静かに去っていった。
龍崎と次郎は駆け出す。美月の元へ。
変貌が解け現実世界に戻るのと、美月の元へ辿り着くのとどちらが早かっただろうか。
次郎が美月に声を掛けるが反応がない。
龍崎はただその場に立ち尽くしていた。
雨が降ってきた。美月だったものと次郎、龍崎を濡らしていく。
次郎は未だ声を掛け続けていた。その雨に打たれ、龍崎は正気に戻る。
やり切れない怒りだろうか、悲痛な叫びだろうか、龍崎が発した音は
地面に打ち付ける雨音に掻き消され誰にも届きはしなかった。
一人の男がその様子を近くのビルの屋上から見ていた。
赤いロングコートと、フードを被り顔は見えない。
「それが・・・戦うという事だ・・・」
呟いた男の頬を一筋の水が流れた。
次回 『薔薇の騎士』
自室で蹲る龍崎
学校、昇降口、病院
佇む龍崎
灰色の『薔薇の騎士』龍崎が叫ぶ
「俺は・・・俺は・・・!」
次回『薔薇の騎士』第五章
暗闇の中に集う幻獣たち
前進