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乙女ゲームの正規ヒロインに転~息子の不在を添えて~

乙女ゲームが好きなことを除けば、ごく普通のゲーム好きな男子高校生である俺は、一番上の姉貴に借りた、「Happiness garden」通称ハピガをやっていた。

ノベルゲームの一種で、シナリオやキャラクターデザインの完成度の高さから、乙女ゲームの中で圧倒的な人気度を誇っている。


ハピガの舞台は、ケルリア王国という中世ヨーロッパ風の魔法と剣の国で、魔法学園が恋の舞台になる。


主人公は、類稀な魔法の才能を領主のガーデン男爵に見初められ、養子となり[エスタ・ガーデン]になる。

優しく強かなガーデン男爵の元で剣や魔法を学び、魔法学園であるエリシア学園へ入学する。


そこで、王族やら貴族やらなんやらの攻略対象たちと愛を育む王道の乙女ゲームだ。

攻略対象には、王道的なヒーロ且つ優秀と謳われる王子やその王子と比較されて若干スレた思考を持つ王弟、爽やか笑顔の裏に腹黒い思考を持つ腹黒メガネの宰相の息子等がいる。


それらの攻略対象には、必ず婚約者であるライバル令嬢がおり、そのライバル令嬢から受ける嫌がらせを蹴散らしながらエンディングに向かう。


あともう少しで、隠しエンディングを攻略できるまでには、俺もやりこんでいる。


(姉貴ももったいないよな。金払って買ったんなら、全部のエンディングとスキン攻略しねーともったいないじゃん)


ゲームを起動しながら、隠しエンディングまで一気にストーリーを進めていた。


「穂高!いつまで起きてんのよ。明日休みだからって、だらだらしてたら容赦しないわよ」


カチャカチャカチャと、コントローラを操作しながら選択肢を選んでいく。


「ほうほう、ここで奴の告白を蹴ると良いのか」


ちょうど、エンドロールが終わった頃に、母親が鬼の形相で部屋を除いていた。


「今寝るとこだったの!!つか、勝手に部屋開けんなよ!」


慌ててセーブをして、布団のなかに潜り込む。


「なに、AVでも観てたの?だったら、誰も居ないとこでやりなさいよ」


母親は、ため息をつきながらデリカシーの無いことを俺に言う。

というか、この家の女どももは、全体的にデリカシーの欠片も無い!


「ちっげーし!もう寝る!」


電気を消して、母親を追い払う。


「はいはい、おやすみ」


母親は、俺の部屋の部屋から出ていった。


「ったく、せっかくエンドとスキンフルコンして気分よかったのに…」


布団にくるまりながらスマホを確認したら、深夜0時を少し回った頃だった。

明日は休みだと行っても、学校やらなんやら流石に眠い。


俺は、先ほど攻略した、隠しエンディングやスキンを思い出しながら瞼を閉じた。



===========================



うん?なんだなんだ?暗いぞ?どこだ?!



やっとの思いで、くらい訳の分からないところから這い出て来たら、今度は光がとても眩しい。

眼を開けてもなにも分からない。

どうなってんだ?!


「ほにゃぁ、ほにゃぁあ!」


口から出てきたのは、猫の鳴き声のような感じの声。

言葉がうまく発音できないことに驚いていると、誰かに抱き抱えられた。


(うおう?!なんじゃこりゃ)


「マリーさん、おめでとうございます!元気な女の子ですよ!」


抱き抱えた腕の主は、嬉しそうにこう言った。


(まてまてまて!置いてきぼり!俺置いてきぼりぃぃい!!!)


腕の中でアワアワしていると、別の誰かが俺を抱き寄せた。


「初めまして、私の可愛い赤ちゃん」


(ど、ど、ど、どうなってんだ?!抱き抱えてるの人?人なの?!俺か?!俺がちっちゃいのか?!なに?なんなんだ?!)


俺の視界はぼやけていてなにも見えない。

誰かに愛情を一身に受けながら抱えられていることだけは、辛うじてわかった。


「エスタ…あなたの名前はエスタよ」


頬に温かく柔らかな感触がして、頬擦りされているのがわかった。


周囲から静かな祝福を受け、俺一人だけ混乱に包まれ、置いてきぼりを感じながら感動?の母親との対面が終わった。


===========================



なんやかんやで、エスタとして産まれ落ちて早1年。

重大なことに気がついた。


長年、苦楽を共にした息子が股間にいない。

股に手をやり必死になって息子を探す。


「あら、エスタ?何をやっているの?」


母である、マリーが微笑みかける。

淡いブロンドの髪に水色の瞳の美人な人だ。


「な、ないないなの!ないなーーーい!」


そんな母に必死になって訴える。

大事な、17年間苦楽を共にした息子が、息子がいないんだ!


そう、伝えたいのに言葉をうまく発することができないでいた。

幼児言葉で伝えながら必死になって、息子の不在を訴える。


「今日もエスタは元気ね」


母は、フフと笑いながら俺を抱き寄せてロッキングチェアに座り、未だに「無いなーーい!」と叫ぶ俺の頭を撫でながら優しく椅子に揺られた。

全くもって伝わらないこのもどかしさよ。



「何がないないなの?お母さんにも教えてちょうだいな」


あまりにも必死な俺の姿に少し笑った母は、子守唄を歌いながら俺を寝かしつけようとする。

どうやら、寝ぼけていると勘違いしたらしい。


母の優しい手つきに涙目になりながら、息子の不在に打ちひしがれていた。

のんびり執筆していこうかと思います。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

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