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吸血鬼の冒険録  作者: ノア
第二章 竜贄の少女
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疑惑の村

 

 目が開いていなかったのにあの子はまるで見えてるかのように平然と黒い芋を拾っていました。

  あの子のことを暗いと感じたのもその事が原因なのでしょう。


「目が見えないから目を閉じていたのか、それ以外の理由か……原因定かでははありませんが、少なくとも視覚に頼らず空間を把握する手段を持っていることは確かですね。

  言っては何ですがこんな辺鄙な村で随分と特殊な子が居たものですね」


  わたしだって吸血鬼、人より五感は鋭いのである程度は視覚に頼らず行動出来ますが所詮はある程度です。

  人が情報を得るほとんどは視覚です、それを遮るのですからむしろある程度でも行動できるのは凄いこと……のはず。だけどあの子は幼い身でありながら視覚に頼らず芋を迷わず拾える程度には行動出きる、普通ではありえません。


 やっぱり気になりますね。

 村長にでも後で聞いてみますか、あんな特徴的な子なのですから知らないはずはないですもんね。


 そろそろいい匂いが村中を包みだしてきたので準備も大詰めか終わったことでしょうから広場に戻り雑談を交えつつあの子の事を聞くためにわたしは歩き出しました。

 広場につくと予想通り準備は大詰めのようであとは出来上がった料理を広場に置てある机に並べるだけのようです。


「おお、ちょうどよかったです。そろそろ準備が終わるので誰かに呼びに行かせようと思っていたところです」

「いい香りが漂ってきたからね、そろそろだと思って戻ってきたんだ」

「それはそれはよかったです。ところでピンク色の髪のお姉さんの行方を知りませんかね?呼ぼうにもどこへ行ったか分からないのです」

「あー、いいですよそのうち勝手に戻ってきますよ」

「できれば出来立てのうちに召し上がってほしかったのですが……」

「それで探しているうちに冷めたら本末転倒なのでいいですよ、メリッサも鼻はいいので案外すぐきますよ」


 ある意味今も食事中なんでしょうけど行為中のメリッサを村人たちに見せるのも悪いですからね。

 アリスからはちゃんと見張っとけとか言われそうですけど一人くらいならいいですよね?




 

 そんなことでメリッサを放っておいて宴会が始まりました。

 机に並ぶ料理は決して豪華とは言えませんし行商もしばらく来なかったことから長期保存出来る物が主なため茶色い料理が多いですが味は悪くないです。


 あー茶色い系統の料理ってなんでかお酒に合うものが多いんですよね。

 ついついお酒が進んでしまってジョッキのお酒がなくなったので追加を取りに行きます。


 お酒は広場の中央に置かれた大きな樽から自分で掬って飲むタイプのようでこの豪快さがまたいいですよね。

 樽の中のお酒は少し雑味のある火酒ですけど高いお酒を買う余裕なんて村にはないでしょうし質より量なお酒ならこんな物でしょう。

 最初に言っていた村長の良いお酒なんて量もないですし直ぐに無くなってしまいましたよ。


「姫、楽しんでいるようだな」

「まーね、でも一番楽しんでいるのはメリッサでしょうね」

「ああ……確かにあいつが一番楽しんでるな」


 いつの間にか宴会に参加していたメリッサは次々と村人を逆ナンしています。

 メリッサからしたら食べ物も男も食べ放題なんですね。


「そういえば村長の言っていたハミンって結局何でしょう?」

「そういえば特産とか言っていたな、見た限り保存食の肉や芋しかねえな」


 わからないのなら聞いてみればいい、ってことで村長を捕まえて聞いてみました。


「ハミンですか?この黒い芋がこの村特産のハミンですね」

「ああ、これがハミンだったのですね」


 てっきり保存食なのかとばかり思っていましたよ。

 確かに保存食にしては美味しく、ネッチョリとした食感とほのかな甘味が良かったです。

 でもふかし芋だけじゃ特産なんて思いませんよ!自信があるからのシンプルさなのでしょうけどもう少し調理してくださいよ。


 そんなことを心のなかで愚痴りながら折角村長を捕まえたのでついでに黒髪の幼女について聞いてみました。

 宴会が始まってから時折探して見ているのですがどこの子供のグループにもいませんし、かと言って大人に混じって手伝ってる訳でもなさそうですがきっと幼女なので見逃しただけでしょうね。


 だけどその予想はどうも違いそうですね。

 わたしが幼女のことを聞いた瞬間、村長の顔が険しくなったのです。


「どこでその子を?」

「さっき村内をぶらぶらしてたら宴会の準備を手伝っていたみたいだから偉いなーと思ってね」


 当たり障りなくできるだけ普通に会話を続けますがわたしの不信感は少しづつ大きくなります。

 

「そうですか……いやはやお見苦しいものを見せて大変申し訳無い。宴会の準備が思いの外遅れていたため手伝わせたのですが、やはり家の中に居させるべきでしたね」


 申し訳なさそうにする村長にわたしは寒気を覚えました。

 この村長は本当に申し訳ないと思っています、それはつまりあの子が見苦しいものと純粋に感じているということです。


 楽しかった宴会ですがそんなことがどうでもいいと思うほどにわたしはこの場を離れたいと思いました。

 この村長だけがそうなのかこの村自体がそうなのか……おそらく村長の感じから後者だろうと思いますが。


 なんとも言えない気持ち悪さを表面上は隠し村長に体調が悪くなったからと、休む旨を告げさっさとその場を離れます。

 村長はあの幼女が原因でわたしの体調が悪くなったと思っているようですがその事が余計にわたしを気持ち悪くさせました。


「大丈夫か姫?」

「ええ大丈夫です、それよりもグランにやってもらいたいことがあります」


 心配し後をついてきたグランに後のことを任せ村長が用意した宿代わりの空き家に帰りました。


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