幼女との出会い
到着した村の感想はただただ普通といったところでしょう。
何の変哲もない家に無難な畑、ただ村人の死を悲しむ人がいるごく平凡な村に思えました、このときはまだ。
「カルッタ兄ちゃん、なんで死んじゃったんだよ……」
火葬される遺体をみて悲しんでいるのは小さな少年で、おそらく遺体の弟でしょうね。
少年は泣きすぎて目が真っ赤になっていますが大切な人が亡くなったのですから仕方ないでしょう。
火葬なのは下手に土葬にするとアンデット化する可能性があるからで適切な処理ができない村などは火葬が多いそうです。
でも火葬でも骨は残るのでスケルトンになったりしないんでしょうかね、もしかして骨をすり潰すのでしょうか?
「冒険者の方々、村の者が世話になりましたな。それに魔物の退治までしてくださり感謝しきれませんわ」
「魔物退治は仕事で助けたのはついでだ、気にすることじゃない」
そんなことを考えていたらよぼよぼな白髪のお爺さんが杖を片手にやって来て話しかけられました。
お爺さんに返答したグランですがこういう場合のグランは基本素っ気ないですよね。
「いえいえ、その仕事が重要で弱い村人のわたしたちはでは魔物がいると安心して街まで行けませんし何より行商まで来なくなると、とてもじゃありませんが村が立ち行きません」
確かに村で農業しているのでその食材はなんとかなっても肉も魚もそれに塩もこの村では採取出来ませんからね、何処からか仕入れないと飢えなくても栄養不足になりますね。
肉ならその辺に野生動物がいるで普段ならなんとかなっても魔物が居るときに呑気に狩りは出来ませんからね。
「そう言うことで、今夜は保存食が主ですがこの村特産のハミンを使った料理でもてなしますのでどうぞゆっくりしてください
もちろんお酒も良いのを準備しますんで」
そう言うと、とぼとぼと村人達の方へ向かい色々宴会の為であろう指示を出していきました。
ハミンとは知らないですが特産と言うくらいですから自信があるのでしょうし楽しみですね。
暇ですね。
村人達はせっせと宴会の準備で奔走していますが主賓であるわたしたちは準備が終るまで待機なのです。
グランは素振りをしていますしメリッサはどこか行ってしまいましたし、どうせ男漁りでしょうがわたしは暇です。
なのでブラブラと村を歩き回ることにしました。
まあ何もないんですけどね。
言っちゃなんですが人がいないとただの廃村にも思えるほどボロっちいですよ。
村の入口から中心部はそれなりの家が立ち並んでいましたがそこから外れると途端にボロっちくて古臭いです。
と、そんなことを思いながら歩いていると視界に黒いものが映り込みました。
なんだろなと気になり黒いものを目で追うと薄汚れた黒髪の幼女がせっせと何かの入った桶を運んでいるようです。
ですが幼女に桶は重かったようでコケて中身が溢れてしました。
流石に無視をするわけには行かないので拾うのを手伝おうと幼女に近づきます。
どうやら溢れたのは黒い芋のようで、表面が濡れているのでこの幼女は芋を洗ってきたようです。お手伝いですか偉いですね。
「大丈夫ですか、痛いところはない?」
「うん……大丈夫」
そう言い幼女は黒い芋を拾い始めたのでわたしも一緒に拾います。
無言で拾うのも虚しいのでわたしは幼女へと話しかけました。
「お母さんのお手伝い?」
「……ママはいないの」
「えっ……」
「死んじゃった」
おうっ、まさか軽い気持ちで雑談したら地雷を踏み抜いてしまいました。
そうですよね優しい世界ではありませんし危険な魔獣もいるんですから亡くなっている可能性もありますよね、それに気づかず安易に話題に出すべきじゃなかったですよね……って、わかりますか!
しかしやってしまったことには変わりありません、ここで華麗にフォローしてこそ大人でしょう。
「変なこと聞いてごめんね、そっかお父さんとだからこんな小さいのに頑張ってんですか、偉いですね」
「パパはわたしとママを置いてどっか行っちゃった」
「……」
うう、もう地雷踏み抜きまくりですよ、若干目頭が暑いので涙が流れているんでしょうね。
流石にそんな顔を長くしているわけにもいかないので持ってたハンカチで涙を拭います。
それにしてもこんな小さいのに両親を亡くしているなんて辛い世界ですね。
一応父親は生きている……のかは定かではありませんがこんな幼女を捨てて行くなんてもう死んだとしていいでしょう。
そんな幼女は黙々と黒い芋を拾っているので、遅れずにわたしも拾います。
まあ、幼女にしては多い量ですが大人から見たらそこまで多くないのですぐに拾い終わることができました。
「ありがとう」
「いえいえ」
ちゃんとお礼を言えるなんていい子ですね、しかしこの子何故か終始雰囲気が暗いんですよね。
両親がいないんですから普通なのかもしれませんがどうもそう言うのとは違う暗さなんですよね、うーん気になります。
「持っていくのも手伝いますよ、どうせ暇ですし」
「ううん、大丈夫持っていける」
「そうですか、遠慮しなくてもいいんですよ?」
「いつもやってることだから」
そう言うと幼女はゆっくりと黒い芋の入った桶を持って行ってしまいました。
いつもやってるなんて大変ですね、お手伝い程度ならともかく幼女には重いであろう桶を持って冷たい水で洗うなんて子供には相当過酷でしょうに、個人的には子供は子供同士ではしゃぎ回るのがいいと思うんですけどね。
と、そこでわたしはやっとあの幼女が暗そうに見えた理由に気づきました。
あの子はわたしと話してる間……いえ、その前から……
目を開けていなかったのです。




