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吸血鬼の冒険録  作者: ノア
第二章 竜贄の少女
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魔獣の襲撃


 アリスに別れを告げ旅を始めてからはや数週間、わたしたちは山のなかを通る道を歩んでいます。

 大きな街道からそれてこの先には小さな村しかない道を歩んでいる理由は主にグランの依頼のためです。


 数日前に少し大きな街に寄った時にグランが冒険者ギルドで受付嬢に泣きつかれていたのです。

 なんでも魔物が出現して低ランクのパーティーが犠牲なったのです。もちろん冒険者ギルドは魔物を討伐しに行ったそうですがそのパーティーも壊滅してしまいより高ランクの冒険者を待っていたそうです。


 この周辺は本来そこまで強い魔物は居ないそうで低ランクのパーティーしかいなかったようです。

 本来平和でも緊急時にはそれが仇となるんですね。


 と、そのようなことがあり受付嬢がグランに頼み込んでたみたいです。

 仕方ないのでわたしが受けるように言って現在に至ります。


 寄り道も旅の醍醐味ですしね。

 ちなみにこの地域の領主の騎士団は危険だからと動かないようです。

 何を言っているのか正直分かりませんでした。危険が無いときしか動かない騎士団とか邪魔者以外の何者でもありませんよね。


 役立たずな騎士団は置いといてわたしたちはこの先の村に泊まり魔物を探し討伐するのが目的です。

 ただの村ならそこまで名物もないでしょうしサクッとグランの依頼を終わらせ帰るとしましょうかね。


 と、考えてはいましたが探す必要は無さそうですね。

 まだ目視はできませんがこの先に何かいますね、しかも誰かを襲っているようです。


「この先で誰か襲われているみたいだね」

「まじか!目当ての魔物なら探す手間が省けるな」


 嬉しそうに馬を駆けさせるグラン。

 やっぱり面倒くさかったのですね。


 近寄って行くと数人の薄汚れた人たちが狼の魔物達に襲われていました。

 一名ほど血みどろで倒れている人がいますが首をガッツリと噛まれすでに死んでいますね。

 他の人達も決して無事というわけではなく、(つたな)い動きで剣を振っていますが当然当たることはなく狼達に遊ばれていますね。

 

 このままではもちろん殺されてしまうのでしょうが、運のいいことにわたし達がたどり着いたので平気でしょう。

 御者についていたグランが手綱をわたしに渡し狼達へと走っていきました。

 ちなみに簡単な操作くらいはできるようになりましたよ。


 たどり着いたグランは狼を切り飛ばしました。

 遊んでいた狼達は標的をグランに変え仲間の敵を打つかのように連携しながら攻撃を繰り出しますが、グランはそれをいなしながら一匹、また一匹と着実に処理していきます。


 連携を取ってくる魔物は厄介でときには自分より格上の敵を葬ります、それが単体でもそれなりの強さがある狼の魔物が行うのですから並の冒険者、それこそまともに剣を触れていない人ではどう足掻いても敵いません。

 そんな相手に余裕なグランは流石としか言えませんね。


「はいよっと、こんなものか」 

「そうみたいだね、もう近くに気配はないね」


 真っ赤に染まった剣を高速で振り下ろし血を払っているグランに近づき言います。

 それなりの広さを探知しますが魔物はいませんでした。


 薄汚れた人たちも助かったと知り、腰が抜けたのか地面にへたり込んでいます。

 そして亡くなった人を悲しむ声も聞こえましたが今はそっとしておくべきでしょう、グランの倒した狼の魔物を処理しつつ落ち着くのを待ちます。


 しばらくして落ち着いた一人の青年がこちらに来ました。


「助けてくれてありがとう、あなたが来なければ僕たちは今頃魔物の胃袋の中だったよ」

「気にすんな、それが俺の仕事だし一人は助けられなかったしな」

「確かにカルッタのことは残念だ、でもカルッタが頑張ってくれたからこそ僕達が生きている」


 そう言ってもらえるのなら死んだ人……カルッタと言う人も報われるでしょうね。

 実際はどうかわかりませんけどね。


「それでお礼なんですが、今は手持ちの方もないですし村の方まで来ていただけませんか?」


 そう聞かれ、確認のためにわたしの方に視線を向けるグラン。

 別にそれぐらい確認しないでもいいですのにね。 


「依頼達成の確認には村に行かないとだめなんですよね?」

「いや、そういうことはないぞ。今回は魔物の討伐だから討伐証明──今回の場合は……まあ忘れたがどっかの部位を持っていけばいいだけだ。とりあえず首なら間違いないだろう」


 それは冒険者としてどうなんですか?

 討伐証明の部位とかかなり重要じゃないですか、まさか今までも首をそのまま持っていった訳ではありませんよね?

 ……いえ持っていってそうですね、可愛そうな受付嬢さん。


「なら別に向かうことはないですね」

「じゃあ首切り落とすから待っててくれ」

「いえ、血抜きしてまるごと持っていきましょう」

「ちょっと待ってください、今から戻るには遅くなりますし一泊していきませんか?そしたらお礼も兼ねて今夜は宴会をしますから」


 たしかに今から戻っても日が沈む前に街へ着くことは難しいですが、わたし達にとっては夜だろうが関係ないんですよね。

 ですが宴会には心惹かれますね、宴会といえばお酒ですもんね。


 こう言うのも旅の醍醐味でしょうかね、折角ですし宴会を楽しみましょうか。


「確かにそうですね、それに急ぐ旅でもありませんからお邪魔しますか」

「ってことだ一晩厄介になるぜ」

「え、ええでは村まで案内します。って言ってもこの道を真っ直ぐ進むだけなんですけどね」


 青年が困った顔を一瞬しましたが案内してくれるようです。

 もしかして社交辞令でしたか? まあ社交辞令でも言ったんですから責任取ってもらいましょう。


 青年たちが亡くなった人の遺体を担ぎ先を進むのでゆっくりと馬車を動かしあとを付いていきます。

 流石に寝床にも使う馬車に死体を乗せたくありませんから、悪いですが青年には頑張って貰いましょう。


 そしてわたしは、少女と運命の出会いをいたしました。


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