街の中の戦い
騒動の始まりは突然だった。
薄汚れた服を着た集団がいきなり現れ通行人を斬っていったのだ。
一瞬にして大通りはパニックに包まれた。
「きゃぁぁ」
「逃げろぉぉ!」
「手当たり次第に殺して奪いつくせ!」
高らかにされる号令とともに逃げ惑う人、それを追いかけ斬りつける。
多くの悲鳴が大通りを支配した。
ならず者が次に目をつけたのは黒いローブを身に着けた人物であった。
斬りかかるならず者、しかし黒いローブを着た人物は軽くその剣を避け逆にならず者を斬りつけた。
そしてならず者に剣先を向け言い放つ。
「この程度か……もう少しマシなの寄越せよ」
「ちっ、一般人のもそれなりにやる奴がいるのは分かっていただろう馬鹿なやつめ、複数で黒のローブのやつに当たれ早急に殺すのだ!」
「ははっ、俺が一般人扱いか」
黒いローブの人物は軽く笑いながらもならず者たちに鋭い眼光を向け続ける。
黒いローブを着た者をならず者たちが囲む、その動きは見事統率され無駄のない動きだった。
しかし黒のローブを着た人物は即座に一人目に剣を突き刺し二人目の首を切り飛ばし三人目は肩から下半身まで切り裂いた。
「くそっ!雑魚じゃ相手にならん、お前らは下がってろ俺が出る」
指揮を取っていた男が黒のローブに斬りかかる。
だが黒のローブはいとも簡単にそれを受け止めた。
「いきなりお前のような強者に出会うとはな」
「聖騎士様にそう言われて何よりだぜ」
「なんのことだ?頭がオカシイんじゃないのかお前」
「おいおい、頭がおかしいとは酷いな。この声と顔、忘れたとは言わせないぞ聖騎士エルドア!」
自身の名を言われ動揺したエルドアに黒のローブが急かさず蹴りを打ち込む。
反応に遅れたエルドアはそのまま飛ばされ地面を転がった。
そして黒のローブは自身のローブをを脱ぎ捨て顔を顕にした。
その顔を見た瞬間エルドアの顔は驚愕の色に染まった。
「どうしてこんな所にいるんだ、既に死んでいると思ったぞ黒のーー」
「おっと、やめてくれその名は捨てたんでね。今はただのグランだ」
エルドアの口を塞ぐためグランは剣を振るう。
だがエルドアも今度の攻撃はギリギリのところで受け止めた。
「くそっ、舐めるなよ!亡霊ごときに今の俺が負けるはずがない」
グランの剣を弾くと共に直ぐ様立ち上がりグランに斬りかかる。
「舐めちゃいないさ、だが俺も昔と違うんでね、亡霊はやめてくれよな」
「その上から目線が舐めてるって言うんだよ!」
グランとエルドアの剣が幾度と重なりあう。
だが実力は互角ではなかったエルドラの額には大粒の汗が流れているのに対しグランには余裕の表情をしていた。
「お前は形がキレイすぎるんだよ、戦いは手本通りキレイにはいかないもんだぜ」
「ふざけるな、お前みたいなやつなんかに負けてたまるかよ!」
「こんなものか、もう少し強かったと思ったんだがな……思い出補正ってやつか、姫弱くてがっかりしてるんだろうな」
「どうしてお前は!クソッ、お前ら撤退だ作戦は失敗だ」
苦虫を噛み潰したようにエルドラは顔を歪めるも、僅かにに残った理性で一同に撤退を指示した。
しかしその場の殆どはグランに倒され死亡したか瀕死で動くことができずにいた。
「良いぜ逃げるなら見逃してやるよ、姫からは静止については言われなかったしな。さっさと次の場所に向かうだけだ」
「覚えていろよ、きっちりこの借りは返してやる!」
「おう楽しみにしてるぜ」
そして負傷者を担ぎながら撤退していくエルドラを宣言通り見守るだけのグラン。
やっと聖神教の神殿騎士が慌てやってきたのでグランは面倒になる前に次の襲撃場所へと向かっていった。
「俺も随分丸くなったもんだな、昔なら殺していたもんな」
裏通りをゆっくり歩くき頭を掻きながらそう一人呟くグラン。
「目標の有り無しでこうもゆとりができるもんなのか、ホント姫に感謝だな。
はぁ、とっとと弟子見つけないとな、優秀じゃなくてもいいが直向きに努力ができる奴がいいよな」
「ぐぁぁぁ!」
「おっ、向こうもやり始めたか。そうだよな報復ぐらいは向こうもするよな、だがイールス伯爵家はアルスがいる、今頃唯神教奴ら目ン玉飛び出しているだろうな」
街中にこだましたアルスの咆哮を聞きグランはそう考える。
人々が恐怖し怯える咆哮も何年も共にいたグランにはただの鳴き声に変わらなかった。むしろその咆哮に自身のやる気が上がっていく感じを感じていた。
そしてグランの姿を現す4人のならず者の格好をした唯神教に向かいグランは駆け出した。
「さぁ、姫が終える前にこっちもさっさと終わらせてやるぜ」
そして唯神教と戦闘をグランは繰り返していった。
三人称は難しいですね。
これから物語が進むと三人称も増える予定なので頑張りたいですね。




