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9.苦戦

「森の次は洞窟か・・・」

ナタに案内された場所は洞窟だった。

ファンタジーものなら定番のダンジョンだ。


「シェイド洞窟っていうらしいぞ、まぁ名前なんてどうでもいいけどな」

「俺、松明とか持ってないけど大丈夫なのか?シェイドって薄暗いって意味だった気がするんだが」

よく読む、ファンタジーものでは右に武器、左手に松明を持って洞窟を攻略するって言うイメージがあったし、ここでも俺は十分あり得ると思った。


「暗いのは確かだけど、ところどころ松明があるから全く見えないってことはないし、最悪松明を持って行っちゃえばいいだろ」

完全に人の手が入ってるじゃねーか!と突っ込みたかったが、まぁ無いのは無いで不便でしかないだろうし、大人の都合というやつか。


「とにかくはいってみるか、そもそもレベル上げに来たんだしな」

「だな、な~に俺に任せておけ、こんな洞窟、一発クリアさせてやるよ」

くっちゃべってるのも楽しかったが、そもそもの目的を忘れてはいけない。


俺たちは洞窟の中に入っていった。





「た、た、た、助けてー!ボコられてるぅーーー!!」

「ちょ、前と後ろ同時は流石に無理だ!」

俺たちは蝙蝠やゴブリン達に挟み撃ちにされていた。

森の時は端っこだったから背後から攻撃されるってことはなかった。

しかし、洞窟は道幅が結構広いけど一本道だった。

つまり、エネミーと戦闘してると、その前に倒した奴がリポップしてきて、挟撃されるのだ。

早く倒すことができれば、リポップする前に前のエネミーを倒して進めるのだが、俺は論外として、ナタもそこまで火力が高いわけではなかった。

しかも、俺はどうやら殴られると歌を中断してしまうようで、俺が攻撃されるとバフが切れてしまうのだ。


つまりどういうことかというと


俺は現在、ただのサンドバッグだった。


「だめだ、一旦退くしかない!」

「だったら・・・翼人の歌!」

ナタが撤退を提案すると俺も逃げるのにぴったりな翼人の歌を発動した。

使いみち普通にあったな・・・・翼人の歌。


俺とナタは一気に駆け出し、奇跡的に洞窟から脱出することができた。

もちろん俺は歌いながら。




「♫~♪~・・・死ぬかと思った・・・」

「まさか、こんな落とし穴があるとはな・・・」

俺は心の底で防具を買っておいてよかったと実感した。

もし初期装備なら絶対にやられていただろう。

ナタも予想外の苦戦に顔から余裕がなくなっていた。


「・・・どうする?」

「いや、どうするって言われてもな・・・」

ナタに問いかけたが、ナタも解決策が思い浮かばないようだ。


ここでの最大の問題は、やはり挟撃されることだろう。

逃げてる時に気がついたのだが、このゲーム、エネミーがしつこい。

翼人の歌で一気に駆け抜けることもできなくはないかもしれないが、最深部で大量のエネミーと同時に戦闘とかになったら目も当てられない。


なら、エネミーが一番最初に現れる地点で戦えばいいと思うかもしれないが、同じ考えのプレイヤーもいるのでエネミーの奪い合いになり、効率はわるいだろう。


俺たちは完全に行き詰まっていた。



「・・・・なにしてるの?」

そんな時、俺に話しかけてくる奴がいた。

俺はその声に聞き覚えがあった。


「ミ、ミリアさん・・・?」

そう、俺と銭闘したミリアさんが声をかけてきたのだ。

昨日はLV10だったはずだが、今はLV11になっていた。


「す・・・・クリスの知り合いか?獣人とは珍しいな」

「ま、まぁね・・」

ナタが俺に聞いてきた。まぁ、ミリアさんとはフレンド関係だし、知り合いではあった。


「もしかして・・・苦戦してるの?」

ミリアさんは俺達の表情を見て悟ったらしい。


「う、うん、ナタと一緒にダンジョンでレベル上げしようとしてたんだけどうまく行かなくってね」

俺は正直に応えることにした。


「・・・手伝う?」

ミリアさんは俺達にそんな提案をしてきた。


「いいのか?そのレベルだとあんまり旨味がないと思うが・・・」

意外にもナタは手伝ってもらうことに遠慮してるようだった。

確かにここは俺達にとっては旨味があるけど、ミリアさんのレベルではあまり旨味はないだろう。


「別にいいよ、それにここにはこなくちゃいけなかったし」

だが、ミリアさんはここにこなくちゃいけない理由もあったみたいだ。


「じゃあ・・・お願いしてもいいかな?」

俺がそう言うとミリアさんは頷いた。

どっちみち、俺達だけではここの突破は無理だ。

それにこうやって話してみるとミリアさんは普通にいい人だった。

あの買い物のインパクトが強すぎて勝手に苦手意識を持ってしまっていたことを俺は申し訳なく思った。



「じゃあ・・・よろしく、ミリアさん」

「さんはいらない、呼び捨てでいいよ、フレンドだしね、その代わりに私もクリスって呼ぶけど」

どうやら、フレンドなのに『さん』をつけて呼ばれるのが好きじゃないみたいだ。


「そっか・・・ミリア、よろしくね」

「うん」

こうしてミリアは俺たちとパーティを組むことになった。







「俺はナタだ、よろしくな、ミリア」

ナタもミリアに対して挨拶した。あいつはこういうところは意外と真面目だった。


「・・・・・・・・・・・・・・よろしく」


・・・・・・・あれ?




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