22.アッシア湖
祝!ブックマーク2000人突破!(気がつくのが遅い)
これからもよろしくお願いします!
「・・・広っ!?」
ナタがその言葉を口にだすのも無理はなかった
アッシア湖にたどり着いた俺達だったが、そこには今まで見たことがある湖よりも遥かに広かった。
湖の周りには釣りをしているプレイヤーも多く、エネミーに襲われている様子もないため、エネミーは湖の上にしか現れないようだ。
湖の水面には木の板を繋ぎあわせて作った簡易な足場があり、これを使って湖の上を歩くことができるようだ。
「こ、これの上をわたるの・・・?」
「バランス取るのが難しすぎるだろこれ!?」
俺達が試しに木の板に足を乗せてみると、流石に沈みはしなかったが、少し揺れるのでこういうのが苦手な人には厳しそうだ。
まぁ俺はまだましな方だろう、ナタを見てみると、度々しゃがむことでなんとかバランスを取っていた、重装備であるためバランスが取りにくいのだろう。
「気をつけたほうがいいよ、完全に態勢が崩れると・・・ドボン、だからね」
そんな俺達を見て、ミリアが俺達に重要なことを教えてくれた。
どうやらこのゲームでは見えない壁で落ちないようになってるとか落ちたら復帰地点でリスタートとかそんな優しい仕様ではなく、落下したらそのまま湖に真っ逆さまらしい。
ただ、幸いな事に幅はそこそこあるので、パーティプレイはなんとか出来そうだ。
それに意識しないとバランスが取れない俺達に対し、ミリアはまるで足元が固定されてるかのごとく安定していたので、スピードが殺されることなく、アタッカーとして動いてくれそうだ。
「と、とりあえず、狩ろうぜ・・・さっき歩きながら確認してたが、ここの敵は魚人系のエネミーが多いらしいな、それを狩るのか?」
足をプルプルさせていて、騎士としてものすごく情けない姿を晒しながらナタがここのエネミーについて教えてくれた。
魚人・・・魚と人間、両方の特徴を持つ種族と言えば良いのだろうか?ファンタジーでは敵にだったり味方だったりと不安定な位置にいる種族だが、アルカディアではエネミーとして登場するようだ。
「・・・・・魚人は単純な攻撃しかできないのにレベルが高いからレベル上げに向いてる」
ミリアの言うとおりなら確かにレベル上げには向いてそうだ。
敵の中には遠距離攻撃や状態異常、魔法など厄介な行動を取ってくる奴がいるが、魚人は単純に殴ることしか出来ないらしいので事故る可能性も低く、しかもエネミーのレベルは高いので多めの経験値が貰えるから時間に対する効率も良さそうだ。
だが、ナタと話す時だけ微妙に長く間を空けるのはどういうことなのだろう・・・仲悪いのかこの二人?
ただ、以前の「・・・そう」だけで会話してたのと比べれば偉大な進歩といえる・・・うん、言えるな。
「そろそろバフを・・・ってここでは迂闊に翼人の歌はかけられないね・・・」
戦神と翼人の歌を歌おうと思った俺だが、よく考えればこんなところで翼人の歌を歌うと足を踏み外して落下してしまう可能性があることに気がついた。
スピードがあることは有利とは限らないのだ。
「歌は敵が現れてからでいいんじゃないか?何回かバフを掛けられて気がついたんだが歌を聞くと同時にバフがかかるみたいだし、詠唱とかも必要ないみたいだしな」
俺が歌おうとするとナタからストップがかかった、確かに瞬時にかけられるのなら事前にやっておく必要はない。
バフ=事前にかけるものだと考えていたが、歌にはこういう強みがあるのだとようやく理解した。
・・・まぁ、止めた一番の理由は恐らく前回のMP切れのことだと思うが。
「ギョアァァーーー!!」
少し歩くと水面から例の魚人が飛び出してきた、手に槍を持っているからか名前はギルマン・ランサー・・・そのまんまだ。
体は中々に筋肉質なので俺ではマトモに殴り合いはできないだろう。
てか、俺はよっぽどレベル差がなければどんなエネミーにも殴り殺されるが。
「早速いくよ・・・戦神の歌!」
俺は早速、新作マイクを構えてスキルを宣言した。
祈りは誰かがダメージを受けてからでも大丈夫だろうし、今は戦神だけにすることにした。
・・・何故だろう、最初は歌うのに恥ずかしさを感じてたはずなのに、今は全く感じないのは・・・。
いや、これからもこのキャラ使っていくなら慣れなくちゃいけないはずなんだけど、なんだろう・・・このなんとも言えない気持ちは・・・。
俺がそんな気持ちになっても歌に変化はなく、二人にバフがかかる。
「おらぁ!経験値になれ!」
「・・・・」
さっきまでのナタの姿はどこへやら、完全に経験値狩りの鬼と化したナタはそれに対しビミョーな目線で見るミリアとともに攻撃を仕掛けた、相手は一体で遠距離攻撃を持ってないし、ヘイトアップの技を使わなくても俺に攻撃が飛んで来ることはないと判断したからだろう。
「(ふー・・・VRMMOなのに俺全く動かないな・・・)」
二人がエネミーに殴りかかる光景を俺はそんなことを考えながら眺めつつ歌を歌っていた。
ばしゃっ・・・
「『うん?』」
ふと俺の近くでそんな音が聞こえたので、音の方に視線を向けると
「・・・・・・・・・」
水面から大きな魚の頭がこっちを見ていることに気がついた。
俺はゆっくりと前に視線を戻し、二人が戦っているギルマン・ランサーの姿を確認すると、水面から出ている頭と二人が戦っているギルマンの頭がほぼ同じことに気がついた。
つまりこれは・・・・
「ギョアーーー!!」
「2体目ーーー!!!?」
2体目だった。
「ギョアーー!」
「くっ・・・!」
ギルマンは魚の背骨のような形をした剣で力任せに斬りかかってきたが、それに対し俺は歌を放棄し、マイクでそれを受け止めることができた。
かなりの衝撃が伝わってきたが、マイクに壊れたような跡はない。
俺は心の底から持ち手を鉄にしておいてよかったと思った・・・前の100円ショップに売ってあるようなマイクじゃ粉砕されていただろう。
相手の攻撃を防御したおかげか俺のHP『は』まだ余裕がある。
「・・・・あれ?」
だが、俺の足元には足場が無かった。
もちろん俺は空なんて飛べないし、空中で2段ジャンプとかもできないので・・・
「あ・・・」
俺は湖に落ちるしかなかった。
魚人と聞くと、とある漁村を思い出す私は完全にC◯C勢だなと思い知らされる時があります。
ちなみに作者はその漁村のシナリオを友人とやりましたが、人間最低レベルの顔の形をしていたので生き残れました。




