2.ゲーム開始
「(・・・唐突に始まったな・・・)」
さっきまでの空間とは異なり、俺の視界にはファンタジーな街並が広がっていた。
周りでは俺と同じように開始したばっかりであろうプレイヤーの姿がそこかしこで見られた。
「さて・・・・!?」
俺はとりあえず何をするべきかと、声を出してみたがそれは俺の声ではなかった。
それは女性の・・・しかもアイドルのような可愛らしい声だったのだ。
「え、なんぞこれ・・・」
再びでた俺の声の声質が変わることはなかった。
とりあえず俺は周りのプレイヤーの動きを真似てメニュー画面を開きステータス画面を開く
そこには
名前:クリス 性別:女 種族:ヒューマン クラス:歌姫 レベル:1
という文字が俺の目に飛び込んできた。
「・・・・・・・・・・・・」
俺は深く考えるのを一旦やめ、装備品などを次に確認した。
右手:素人向けマイク
左手:なし
頭:なし
体:見習い歌手の服
足:皮のブーツ
腕:なし
アクセサリ1:なし
アクセサリ2:なし
うん・・・まぁ・・・
歌手なんだし、重装備とかできないよね・・・
俺のキャラって、銀の短髪で、愛嬌のある顔なんだなー・・・・
「って、違う!気にするのはそこじゃない!」
俺は現実を見ることにした。周りの人に迷惑かと思ったが、周りでもおしゃべりしてる人が結構いるので俺が大声出しても誰が出したかわからないみたいだ。
「歌姫・・・?このファンタジーチックな世界で歌姫だと・・・」
俺は混乱していた、別に俺はゲームで女の子のキャラを使うことにはあまり抵抗はない
だが、これはVRMMO・・・キーボードではなく俺自身が話さないといけない。
つまり、キャラクターに殉じる場合俺は・・・女の子っぽく話さないといけないのだ。
「終わったわ・・・」
俺はキャラデリートをしようと思い、ヘルプを見ようとするがそこに『クラスについて』という説明があることに気がついた。
そこには
・性別とクラスと容姿につきまして、その人の脳波を測定し、決定としています。
とのことだ
つまり消そうがこれに似たキャラが出てくる可能性があるということだ。
それに脳波で決まるということはこのゲームはかなりクラスが多いのではないだろうか?
もしかして俺のクラス:歌姫はレアな部類に入るのではないだろうか?
周りを見渡しても俺のようにマイクを装備してる奴はいない。
俺はデリートすることをやめた。
それに声とかも変わってるなら、声で俺が男だとバレることもないだろう。
気をつけて・・・バレた時はさっさとこのゲームをヤメればいいや・・・
俺が自分のキャラについて悩んでいるとメールが届いた。ゲームからではなくイマージョン自体にメールが来たようだ。
どうやらゲームをしてる最中でもメールチェックできるらしい、便利な世の中になったなぁ。
メールの相手は篠田からだった
「ログインしたかー?俺は開始地点から一番近い武器屋の近くにいるから、そこで合流しようぜ、名前は『ナタ』だからな」
そうだった・・・俺はこのゲームを友達とやるんだった・・・
俺は今すぐ向かうことを篠田に伝えることにした
もう半ば諦めの気持ちでミニマップで場所を確認して向かった。これで友達減りませんように・・・
「あ、いた」
武器屋に行くとナタという名前が見えた。視界はリアルっぽいのにキャラクターの上に名前があるのでちょっと違和感を感じる。
ナタは明らかに前衛職のような格好をしていた、体は重そうな鎧に守られ、腰には剣 左手にはシールドを装備していた。
「よっ」
俺はナタ・・・篠田に話しかけた。
「えっ!?あ、その・・・何でしょうか・・?」
そんな言葉が帰ってきた。
あ、そういや俺の名前伝えてなかったわ。
「俺だよ、一緒にゲームやろうってお前から誘ってきたんじゃないか」
リアルの名前を出すのは危険だが、これなら俺が誰か分かるだろう。
「え・・・ちょ、ちょっとウィスパーいいか?」
というと相手のアイコンに囁くようなアイコンが出た
そっかウィスパーがあったか・・・MMOならそりゃあるよな・・・
「え、お前、須藤だよな?」
「そうだよ・・・須藤だよ・・・」
俺は素直に答えた。
答えるとナタはガシっと俺の肩を掴んだ。
「俺は今・・・お前と友達でいて本当に良かったと思っている」
普段は思ってねーのかよ・・・・ってそんなことはいまはどうだっていい!
「待て待て待て!?俺が男なのはお前は知ってるだろ!?」
俺は慌てて離れる。
「まぁ半分冗談だ」
と笑いながら言ってきた。
もう半分は何なのか、突っ込むだけ無駄だな・・・
「いやー、このゲーム確かに性別とかクラスとかは脳波で決まるから、自分で決めることはできないって聞いてたけど、まさかそこまでリアルと乖離してるとはなぁ・・」
と、とても面白いものを見たような顔で言い放ってきた。
「ぐぬぬ・・・」
これが俺が設定したキャラだったらネタだと言えるが、脳波で決まった以上からかわれるのは仕方なかった。
「まぁ俺も歌姫なんてクラス聞いたこと無いから、もしかしたらめっちゃレアなクラスなのかもな」
「そうだといいんだが・・・そういうお前のクラスは・・・騎士か」
ナタはどうやら盾役のクラスになったようだったこの時点で俺の数倍の守備力がある。
というより俺が紙装甲なだけなのだが。
「スキルはどんな感じなんだ?俺はヘイトを稼いだり防御力を上げたりするのが基本みたいだが」
ナタが俺のスキルについて聞いてきた、確かにクラスとか装備品しか確認をしてなかったな。
俺は再びメニューを開いて今度はメジャースキルを見てみることにする。
メジャースキルはそのクラスでしか覚えることができないスキルのことらしい。
逆に誰でも習得できるのがマイナースキルのようだ。
メジャースキル
祈りの歌Lv1:歌を聞いたパーティメンバーは徐々にHPを回復します(歌重複可)
戦神の歌Lv1:歌を聞いたパーティメンバーは攻撃力が大幅に上昇します。(歌重複可)
ラストコンサートLv1:歌が重複されていればされているほど攻撃回数が増える魔法攻撃、使用後、歌の効果はすべて消える。
マイナースキル(残り3pt)
なし
マイナースキルがないのは俺が習得してないからだ、最初は3ptあるみたいだし、あとでなにかとっておくか・・・
「まぁ、予想通りサポート型みたいだな・・・だが歌重複ってなんだ?」
「いや、俺に聞かれてもな・・・」
こいつならβテストのときからやってるから歌重複とかについて知ってるかもと思ったが、知らないらしい。
「仕方ない、実戦で覚えていくとするか」
「ならさっそくレベル上げに逝こうぜ!」
イントネーションに違和感を覚えたがMMOである以上レベルをあげないと話しになら無いのも事実だった。