17.ただより高いものは・・・
夜蝙蝠のマイク:魔法攻撃力+13 超音波(小) 反響(小)
俺の手には先ほど作ったマイクが握られている。
初期装備と比べると+10も魔法攻撃力が上がり、特殊効果もしっかりとついていた。
だが、魔力結晶は反響(中)だったはずだが・・・もしかして鍛冶レベルが低いからだろうか?
まぁ最初に作ったものにしては出来が良いと思うし、俺は満足だ。
早速俺は装備を変更するため、メニューを開き変更していく
右手:夜蝙蝠のマイク
左手:なし
頭:なし
体:黒蛙の服
足:黒蛙のブーツ
腕:黒蛙の手袋
アクセサリ1:見習い魔道士の指輪
アクセサリ2:なし
もう俺の装備には初期装備はない。
頭装備が無いのは残念だが、そのうち作るか、買えばいいしな。
そしてメニュー画面を見て思い出したが、そういや、LV9になってメジャースキルとかマイナースキルを確認することを忘れていた。
メジャースキルは
翼人の歌がLV2になり、新しいスキルを2つ習得していた
ラブビートLV1:フレンドに対する歌の効果が上昇 パッシブ
アワーソングLV1:歌の効果対象を近くにいるプレイヤー全員に変更する
新しい歌は覚えなかったがこれはこれでよし・・・かな?
ラブビートはパッシブでメリットしか無いし、アワーソングはPvPでもしないかぎりデメリットにはならないとおもう。
マイナースキルはまだ取らないことにした。取りたいスキルも思いつかなかったし、そろそろLV10なので追加でポイントを振れるかもしれなかったからだ。
「ミリア、鍛冶場貸してくれてありがとう!」
俺は上機嫌でミリアのいるカウンターに行き、お礼を言った。
ミリアはというと看板・・・のようなものを作っていたようだ。
「よかったね・・・私もこれが完成したし、ちょうど良かった」
ミリアもちょっと機嫌が良さそうに話す。
うん?その看板らしき物が完成したのはわかるが、なぜ、ちょうど良いんだ?
「頼みたいことがあるんだけどいい?」
俺がミリアの言葉の意味を測りかねているとミリアが俺に頼み事をしてきた。
「良いよ、今まで助けてもらってばっかりだしね」
俺は貸しを返したかったし、頼みごとを受けることにした。
「ありがと・・・じゃあ、これ着て」
とアイテム袋から服を取り出し、俺に差し出してきた。
「?」
受け取ってそれを広げてみると
メイド服だった。
「あ、あのー・・・ミリアさん、これは・・・?」
「メイド服」
ちがう、そういうことを聞きたいんじゃない。
「それ着て、店の呼びこみをして欲しい」
流石に俺の言葉の意図はわかってるらしい。
正直なところ、俺はやりたくない。この格好もそこそこ恥ずかしいが、あくまでも格好だけで、やってることは戦闘だったし。
だけどメイド服で、しかも呼びこみをしないといけないとなると笑顔を振りまいたり、相手に店に行ってもらうように声をかけないといけない。
「ほ、他の方法でお客さんを集めようよ、看板とか作ったり、掲示板で店の宣伝したりとか」
俺はなんとかしてこの危機を脱したかった。
中身男ですよ?女装趣味とか男の娘とかじゃない、ただの男子学生ですよ?
呼び込みすれば相手は俺を可愛い女の子だと思って接してくるだろうけど、実際に喋ってるのは野郎なんですよ?
だが頭のなかでそんな言い訳をしている俺に対し、ミリアは
「・・・鉱石・・・MPポーション・・・鍛冶場・・・」
と小さく、だけど俺の耳に入ってくるようにつぶやいた。
「(めっちゃ貸しとして認識してたぁぁぁぁーー!)」
ミリアはちゃんと貸しとして認識してたのだ。
ど、どうりで妙に優しいとは思っていたが・・・
「・・・やります」
完全に逃げ場を塞がれ、俺は仕方なくメイド服を着ることにした。
「・・・似合ってるよ」
メイド服をきた俺に対し、ミリアがそう言ってくれたが、俺としてはフクザツな心境だ。
メイド服は白と空色を基調とし、リボンなどは黒だった。
幸いスカートが長いのでちょっとだけ恥ずかしさが紛れた。
「最後にこれつけて」
とミリアが俺に差し出してきたのは白い猫耳がついたヘッドドレスだった。
長いスカートのおかげで恥ずかしさが紛れたと思ってたが、新たに恥ずかしくなる要因が増えた。
まぁ・・・それでもつけるしか無い、ここまできたら猫耳があろうがなかろうが恥ずかしいことには変わらない。
「はぁ・・・とにかくこれで呼びこみをすればいいんだよね?」
「うん、あと、これも持って行って」
と看板のようなものを差し出してきた。
看板には『こぬこ屋』と大きく書かれていた。
ああ、これプラカードだったのか・・・てか、この店の名前、こぬこ屋っていうのか、初めて知ったわ。
店の中にいるのどう見ても子猫ではないけど・・・突っ込んだら負けだな・・・・。
「それじゃ、いってくるよ」
俺はプラカードを持ち、店の外(戦場)に赴くのであった。
昔、歩いてたら呼びこみのお兄さんに声をかけられ、断ろうと思いましたが断る適当な理由が思い浮かばずとっさに「すみませんお金持ってないです!」と言ってしまったことがあります。




