10・パーティ
ミリアをパーティに加え、俺たちは再び洞窟に入ることにした。
「騎士にモンクに歌姫か・・・クリスが俺たちにバフを掛けておいて、戦闘になったら俺が開幕でヘイトを稼ぎ、その間にミリアが横から殴っていくって感じかな」
ナタが簡単にだが役割を確認した。タンクにアタッカー、サポーターと意外とバランスよくパーティを組めていたのでそれぞれの担当が分かりやすかった。
「じゃあ、最初は戦神の歌だね・・・戦神の歌!」
とりあえず俺は戦神の歌を皆に掛ける、体力が減ってきたら祈りの歌を、無理だと思ったら翼人の歌を重ねるつもりだ。
「♪~『あ、この状態でも会話できるから、遠慮しなくていいよ』♫~」
ミリアに歌の最中でも会話できることを伝えた。
会話できるのと出来無いのでは雲泥の差あるしな。
俺の歌で全員に攻撃力アップのバフがかかる。問題はMPが減っていくことだったが、MPポーションを飲めばなんとかなるだろう。
「なんか・・・すごいね」
ミリアがなんとも言えない顔で言ってきた。
まぁ俺の口から2つの声が出てるからな、リアルじゃ絶対に無理なことをやってるのは自覚している。
そんなことしてると、エネミーと遭遇した。
内容はゴブリンファイター・ゴブリンアーチャー・ナイトバットだ
俺が一番危惧するのはナイトバットだ。
バット・・・蝙蝠というだけあってその体は小さく早い、そのため、ナタでは攻撃しづらいのか、俺をターゲットをしてくることが多かったからだ。
だが、それは杞憂だとすぐに解った。
「いくぞ、騎士の威光!」
ナタが盾を掲げ、敵のヘイトを稼ぐスキル『騎士の威光』を使った。
元々騎士はヘイトが稼ぎやすいが、騎士の威光を使うことでさらにヘイトを稼ぐことで自分に攻撃してくる可能性を高めてる。
エネミー達がナタに集中攻撃をかけていく、だが、前と違ってナタは防御に徹することができるからか殆どを盾で防いでいた。
「・・・フッ!」
エネミーがナタに殺到してるなか、ミリアは敵陣に突っ込んだ。
元々レベルが上なのにアタッカーで、バフもかかってるからか次々と殴り倒していく。
「(うわぁ・・・リアルじゃあんな動き絶対に無理だな・・・)」
俺はミリアさんは強いというより『上手い』と思った。
ミリアのクラスはモンク・・・超火力というより、そこそこ高い攻撃力をスピードを活かして何度も叩きこむスタイルだ。
しかし、そのスピードを活かすためか、前衛なのに重装備ができないみたいだ。だがミリアは相手の反撃を紙一重で躱し、的確に殴っていっていた。
当たらなければなんとやらってやつだな。
俺たちはこの後も似たような戦闘を繰り返しながら、俺達は洞窟を突き進んでいった。
「・・・ちょっといいかな?」
ある程度進むとミリアが俺たちを引き止めた。
「いいけど・・・なにかするの?」
ステータスを確認したが別に状態異常にかかってるわけでもなく、HPとMPにもまだ余裕はあった。
「素材集め」
そう言うと、アイテム袋からピッケルを取り出し、壁に向かって掘り始めた。
ミリアが掘っている壁には確かに金属のようなものが見えており、ミリアはこれを採掘するようだ。
「あー・・・私もピッケル買っておけばよかったなぁ・・・」
俺も採掘のスキルを持っていたがピッケルを持ってなかった。
壁をよく見れば、ここ周辺には鉱石が多いことに気がつけたがそもそも採掘できないので意味がなかった。
「・・・クリスの分も採っておくね」
いつのまにか俺はミリアの鉱石を物欲しげに眺めていたようだ。
それに気がついたのかミリアがそう言ってくれた。
「な、なんか悪いね」
ピッケルを買わなかったのは俺のミスだし、心苦しいが、俺はマイクを作るためにも素材となる鉱石が欲しかったのも事実だったので好意に甘える事にした。
待っている間、俺とナタは休憩することにした。俺たちはそこそこMPを減らしていたのでMPポーションの節約のために時間経過の回復に頼ることにした。
「な、なぁ、ミリアが俺とあまり会話してくれないんだが・・・」
ウィスパーでナタが俺に相談してきた。
確かに、ミリアは俺とばかり話していた。ナタは移動中何度か話しかけてたが
ミリアは
「・・・そう」
だけで会話をしていた。・・・会話といえるのかこれ?
「今日初めて会ったし、所謂、友達の友達状態だから緊張してるんだろ」
外で友達と偶然あって、そいつが他の友だちと一緒にいる時って変な気まずさがあるしな。
「うーん・・・それだけか・・・?、なんか違う気がするんだよな」
「これから仲良くなっていけばいいだろ、そんなに気にすることじゃないと思うぞ」
ナタは納得してなさそうだったが、友達付き合いが上手いやつだし、なんとかなると俺は思った。
俺達がそんな話をしてるとミリアが戻ってきた。どうやら採掘を終えたようだ。
「俺達もMPがそこそこ回復したし、そろそろ行くか」
俺もナタもMPが半分くらいには回復してた。ミリアがいることだし、これでも十分だろう。
俺たちはナタを先頭に、俺達は再び洞窟を突き進んでいった。




