ある日、家出少女、不思議な少女を拾う
マッチ売りの少女でもいつかお姫様のようなロマンチックな恋愛をしたいなんて夢を見ていたのかな……。
幼いころに読んだマッチ売りの少女を読んだ私は、そう答えもしない本の中に居る少女に問いかけてみてた。
「どうぞ受け取ってください。」
ここは池袋サンシャイン通りの〇ッテリア前、ティッシュ配りやら、脱毛勧誘などの勧誘競争区。
東京とはいえ、12月は冷える。そんな寒空の中、私はティッシュをもくもくと配り歩く。
学校にも行かず、家出してたどり着いたこの街。
私は毎日なんとはなしに生活のためにティッシュを配り生計を立ててた。
17歳であった私は賃貸の契約は保護者サインが必要なため家を借りれず、マンガ喫茶に泊まる毎日。
そこまでしてどうして家出したかって?それは、今は言わないでおこう。
私は美人でもないし、頭もそれなりの成績しか取れず、運動神経も人並みにしかできない。
学校の先生には褒めず褒められず普通の印象を与える。クラスに絶対に一人はいる個性の薄い子だ。
印象が薄いからこそ、みんなからは頭が良く思われ、印象が薄いからこそ大人しい子といわれる。
だからある意味、私がここでどんなに頑張ってティッシュを配っても、一人も「あ、あの子どうしたのかな?」なんていうもの珍しい事を言う人もいないというわけだ。
今日のノルマを終え、私は今日の宿へと向かう。すると、私の目の前のマンホールが不気味に開きだした。
中から真っ白でかわいらしくそれでいてやけに汚い手が出てきた。
「すみません。ここからわたしを出してくれませんか?」
か細く、それでいて可愛いらしい声でわたしにマンホールの手の主は言った。
私はこの非常識的な状況をなかなか理解できず、考え込んでいるとマンホールの主は今にも落ちてしまいそうな声を出し始めたため、慌てて私は少女らしき小さな汚い手を引き上げた。
引き上げると、彼女は真っ赤なフードをかぶり、ぼさぼさに編まれた三つ編みを揺らし、それでいて瞳は真っ青なフランス人形のようなかわいらしいおとぎ話に出てきそうな女の子だった。
彼女はあたりを見回し、私に動揺を隠せない感じでふるえる声をしながら聞いてきた。
「……。こ、ここは、ど、ど、どこでしょうか?」
「……え?ここは池袋だよ。」
私はすかさず彼女に返答をする。
「池の近くですか……わたくしってば、随分と遠くまで来てしまいました。」
わざとぼけている割には面白味のない冗談……。
「池の近くじゃなくて、ここは東京の中の池袋!あなたはどこから来たの?」
フォローの仕方など知らなかった私は彼女の冗談をスルーし、質問をする。
「と、う、きょう?あ、私ってばご挨拶なしで申し訳ございません!
私はお伽の国からやってきました。フィーユと申します。」
「お伽の国?そこはどこですか?」
すかさず聞く私に彼女の顔は蒼白になり、ガタガタと震えだした。
「わたくしったら、あの方に逃げるためにメビウスの輪をくぐってしまったのだわ……。」
絶望を隠し切れない彼女はついに涙を流し始める。都会の真ん中、いくら影の薄い存在だからといい目立つ少女を泣かせていたら周りは気が付く。公衆の見えない視線が私の体中をくまなく刺激した。
その状況に耐えかねず私は思わず彼女の痩せこけた腕をつかみ、人の海をもがきながらある公園に向かった。
「ごめん。あなたの事情は知らないけど、とにかくあの場所は私には都合が悪かったから無理やりここに連れてきて……。」
「い、いいんです。」
泣きやんだ彼女はそう私に微笑んだ。
「あの、あなたさっき、メビウスがどうやらって言ってたけど、どういう事なんですか?」
彼女は一瞬曇った顔をしたが、覚悟したような瞳なった。
「あなたには、わたくしの事を話す義務がありますね。今からお話します。私のすべてを…そして、あなたにお頼みしたいことがあります。」
彼女は、ゆっくりとした口調で彼女自身のここに至るまでの話を始めた。