紅月と七色の宵闇 2
「お母様お父様。今日は忙しそうですが何かあるんですか?」
そう聞くのは女の子の割には短い綺麗な金色の髪をしたまだまだ幼い女の子。目は少し赤みを帯びていて、肌は白っぽくて顔は幼いながらも整っている。
「今日じゃないけれどね。もう少しで引越しをするの。別のおうちがあるからそっちにこれから住むのよ。こことは違って大きなおうちにね」
母親は父親と忙しそうに荷造りをしながら、娘の顔を見ずに答える。
「えっ?引っ越すのですか。私達もお手伝いしたほうがいいですよね?」
彼女が私達といったのは、彼女には一人妹がいるからだ。
「そう言ってくれるのは嬉しいけれど、あなたにはこの量は大変だし大丈夫よ。ありがとうね」
母親にそう言われて少しだけ寂しく思う年の娘。少し背伸びを始めるくらいの年頃のせいか。
「あとあなたたち二人にお姉ちゃんができるわよ」
「え?!私にもおねえちゃんができるの?!」
娘は目を輝かせながら嬉しそうに言葉を聞き返す。普段から両親に使っている敬語を忘れる程に衝撃的で嬉しかったらしい。
普段妹の前で彼女なりに姉で在り続けようとしているのか、姉という甘えられる存在ができるのが彼女にとっては嬉しいのかもしれない。
「そうよ、本当のお姉ちゃんじゃないけれどね。これからはずっと一緒に住むことになるから実質お姉ちゃんみたいなものね」
「やった!私にもおねえちゃんが出来るなんて!お姉ちゃん優しい?!」
「う、うーん…実際私も会ったことないけれどとても良い家のお嬢さんだしきっと優しいと思うわよ。あ、それとあなたたちもこの家から持っていきたいものだけはちゃんとまとめおくようにね。それとフランにも持っていきたいものまとめておくように言っておいてね」
フランと呼ばれたのは彼女の妹、フランドールのことだ。
「はーい!フランにも言っておきまーす!」
そう言うと娘はどたどたどたと元気よく走りながら妹の部屋に向った。




