幻想の始まり 30
「え?私が巫女?」
「そう。お前は元々ここの娘だった。だけどあの当時戦があってこの神社ではお前のことは育てられなくなった。その時信頼の置ける人にお前のことを預けた。それがここの巫女の知り合いの陰陽師だったわけだ」
「母と彼は知り合いだったんですか…」
「実際にはお前の産みの親じゃない。というより巫女は神に嫁いでる存在だから、他人と恋仲になれない。とは言っても私は女神だから別に気にしなかったのだがな。お前の本当の親は知らない。この神社では孤児で巫女の才能あるものを拾っている。巫女に子供はできないし、普通の親は自分の娘を巫女にしたがらないからな。彼は君を一度ここに連れてきてくれた人だ。君が赤子の時だった」
麗夢は何も知らないで生きてきた。だからこの事実は衝撃的だった。本当の親も何もわからなかったが、自分の過去について、そしてなぜ今までこのような環境で育ってきたかも知ることができた。
「彼は私をどうやって見つけたんですかね…不思議です」
「彼は君の両親と友人だったらしい。だけど君が生まれてすぐ君の地域は病気が流行っていて、無事でいて欲しいからと君だけは彼にあずけたらしい。この時代にしては珍しく苗字のある家だったそうだ」
「私に苗字があったんですか?!」
この時代、苗字はまだ全員にあるものではなかった。いやこの地域は田舎過ぎた。そのためまだ苗字が全員にあるものではなかった。
1870年、日本では平民苗字許可例によって苗字を認められた。だがしかし当時平民はあえて苗字を名乗ろうとしなかったため、1875年に平民苗字必称義務令が発令された。
それは国民全体には届いたが、この地域はあまりにも田舎過ぎた。そのためにこの発令もこの地域にはまだ届いていなかったのである。
そんな麗夢に何故苗字があるかというと源平合戦の頃からある苗字だったからだ。
「今は教えることができない。君の生き方次第で苗字が変わるのだから」
龍神は背を向ける。そしてそのまま麗夢と紫に語りかける。
「君たちの望みは何かな。君たちは本当にどうしたいのか、それ次第でこれからの君たちの人生も何もかもが決まる。とは言っても紫、君の願いは知っているけれどね」
名乗ってない名前を呼ばれたことも驚いたのに、願いすらも知っているという。その事実に紫は驚きを隠せない。
「え…?なんで?知ってるんですか?」
「まぁ…神だからということにしておこうか。妖怪や人間という種族に囚われず自由な世界が創りたいんだろう。私ならそれを叶えてあげることができる」
紫はそれを聞いて驚く。本当に願いを当てられたからだ。願った通りのことだったからだ。この瞬間にどれほど力があるかどうかはわからないが目の前の少女が神だと悟った。
「そして麗夢、君はそれに対してどう思うんだ。君の本当の願いはどこにある?君がいれば紫の願いも何もかも叶えてあげることができなくはない」
龍神は振り向き麗夢を真剣な眼差しで見つめる。麗夢はその目に気持ちが引き込まれそうになる。龍神の目は少し光ったように見えた。
「私は…私の願いは…」
お久しぶりです。この話ももう30ですか。長いことかかりましたね…この章はもっと早く終わるはずだったのですが、妄想してると色々変わってきて、長引いてしまいました。
さて、最近は以前より更新が遅くなってます。申し訳ございません。もっと早く更新したいのですが、学校が始まってしまうとどうしても遅くなってしまいますね…
ちょっと言い訳になってしまいましたが、最近あまり更新できない理由でした。
では今日の更新はこれで。次の更新はいつになるかわかりませんがよろしくお願いします。この章も多分もうそろそろ終わりです。




