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東方物語集  作者: Ra
幻想の歴史 始まりの物語
40/56

幻想の始まり 25

「…はぁ」



帰って早々ため息をつく紫。精神的にかなり疲れたらしい。

あの陰陽師達はいつも紫のことをよく思っていないのは知っていたが、紫との力量の差で何も言えなかった人たちだった。いや、力量の差があるために紫のことをよく思っていない人たちだった。



「紫様…」


「あぁ九尾、いろいろ悪いものを見せてしまったわね」


「いえ、こんなこと何度も見てきたので大丈夫ですよ、紫様こそ大丈夫ですか?」


「…どうして人ってこう醜いのかしらね」



九尾は何も答えれない。人間ではないから答えれなかった。いや、人間ではないから答えることができなかった。



「平和で楽しい世界を作るってそんなに難しいのかしら。全てを受け入れるってそんなに難しいことなのかしら。人間も妖怪も何もかも共存できる世界はないのかしら」



その時麗夢と師匠が帰ってきた。二人は紫を九尾を交互に見る。



「…おかえりなさい」


「…ただいま」



少しの沈黙。何かお互いに言いたいことはあるようだがなかなかそれを切り出せない。九尾は自分自身の存在のせいで主人が困っているということが申し訳ないと思っていた。



「…あのね、紫」


先に口を開いたのは麗夢だった。


「私は妖怪にあの人たちほど偏見は無いし、平和を求めるなら貴方のような考えは必要だとは思うんだけど…」


「私達は陰陽師だ。陰陽師の家に式神とは言え、元妖怪をあがらせておくわけにはいかないんだ。これはわかって欲しい」



紫はそれを理解していた。だけれどこの九尾を手放したいという気持ちは全くなかった。



「もしこのままこの九尾を式神にし続けるというならば私の家にはもう居られない。居させてあげたい気持ちはあるが陰陽師である以上私も困る。あの陰陽師の家には妖怪がいるって言われたら否定は出来ないからね。今日中にでも答えを出してもらわないといけない」



「わかり…ました…」



遠まわしに出て行けと言われている。それかこの式神を捨てなければいけない。

この狐に情なんてないはずなのに、どうしてか手放したくない。理由なんてわからなかった。理由なんてないのかもしれない。ただ何故たった一年前と今日見ただけの狐を手放したくない理由も紫にはわからなかった。











「また…変わらないのか…」

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