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東方物語集  作者: Ra
幻想の歴史 始まりの物語
31/56

幻想の始まり 16

帰路でのこと。



「はーぁ。それにしてもあなたの能力が本当に羨ましいわ」


「そんなにですか?」


「だーからー。敬語はいいって言ってるでしょもう」



言われて思い出した。敬語が抜けきってない。

「あっ…そうでし…そうだったわね」


わざわざ言い直す。少し気恥ずかしい。



「境界ってね、結界の最上位のものなのよ。というより、結界は境界の中の一つの種類みたいなものね。だから私の長年の努力があの一瞬で無駄になった気分よ」


「いや、そんなつもりじゃ…それにしても境界が結界の最上位ってどういうことなの?前の九尾を閉じ込めるようなことはできないんじゃない?」


「境界で閉じ込めるなんて簡単よ。そうね…あの九尾の光弾があった世界。仮にそれを境界の世界と呼ぶわ。その世界にその対象を閉じ込めてしまえばいいのよ。私達の扱う結界なんかよりずっと強固な結界よ。結界は物理的なもので壊れてしまうこともあるけれど、あの世界では地球が壊れる力で攻撃しても影響すら及ばないの。あの世界に閉じ込められたらあなたの力でしか返せないの。しかもあなた以上の力を持っていないといけないでしょうね」



そういえば確かに。結界は物理的に包まなくてはいけないけれど、境界は境界の中の世界に対象を入れることによってその対象を結界に包むような形と変わらない。

だからこそ昨日師匠の陰陽師が直接攻撃をしてこなかったのだった。



「結界はそれに何かの対象を守るためにもある。あの日九尾の攻撃を結界を盾のように使って身を守っていたのだけれど、境界は盾にもなるし、昨日境界の世界から光弾が出てきたように、攻撃にも使えるわ。結界で出来る攻撃と言ったら跳ね返すくらいしかできないわね。境界は相手の真後ろからでもその攻撃を返すことが出来るわ。それにあなたならあの世界から出てこれる事を考えると、最悪あの世界に逃げこむことだって可能よ」


「あの世界に入るんですか?!あ、いや入るの?!」


「貴方なら入っても問題ないわ。なんも境界はあの世界に入るためのものじゃない。あの世界からこっちの世界に戻る境界を作ってみればいいじゃない。それで解決よ」


「なるほど…となるともしかして今この世界の何処かに繋がる境界を今開けるということ?」


「それもできるでしょうね。今ちょっとやってみたら?」



そう言われて先ほどの要領ですっと境界を開く。まだその感覚が慣れないけれど境界が現れる。



「本当だ。家が見えるなぁ」


「…あれ?ちょっとまってその境界もっと広げることできる?」


「うーんと…、はい!」


「はぁ…なんで気づかなかったのかしら。これで帰れるじゃない…」


「えぇっ?!そうなんですか?!」



陰陽師は無言で境界の中に入っていった。後を追うように彼女も境界の中に入って行った。

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