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東方物語集  作者: Ra
幻想の歴史 始まりの物語
21/56

幻想の始まり 6

彼女は驚きと混乱で何も理解することができなかった。

目の前の二人は何かを理解すると、急に立ち上がる。二人で何かわけのわからない式神だとかなんとかを話している。彼女は何も理解できないままその場に立ち尽くしていた。



「一旦状況を把握するから、あなたは私たちについてきて。外に出るわよ」


「ちょ、ちょ、え?何があったんですか?」


「良いから危ないから早くきて。ここにいたらどっちにしてもわからない。早くついてきて」



状況を理解できないので彼女は黙って陰陽師二人についていくことにした。二人が外に出る準備が終わるまで、彼女は黙って二人を見ているしかなかった。

その間にも外からは何か悲鳴のような声や、怒りも含んでいるような声、それに何か時々動物の唸り声や、雄叫びのようなものも聞こえる。



「準備が整ったわ。そろそろ行くわよ。ちょっと急ぐけどあなたのためについてきて」




家から出ると、そこは先ほどと変わらない風景だった。彼女は何があったのだろうと思っていると、右側から雄叫びが聞こえてきた。




「あっちね。行くわよ!」


「はい!」



駆け足で雄叫びが聞こえた方向に向かう。向かってる最中そちら側から逃げてくる人とすれ違う。なにかから逃げている。恐ろしいものから逃げるように。

駆け足で現場に向かう途中に、だんだんと悲惨な光景が見えてきた。家が壊れている。それも進行方向に向かえば向かうほど壊れている。


この惨状の全ての原因に向かっている彼女は、この惨状をみて恐怖心が大きくなっていった。




そして全ての原因の元にたどり着いた。全ての原因は見ることはできなかった。すでにそこには何人もの陰陽師がいたからだ。




「あなたは私たちの後ろにいて。あれは強力な妖怪よ」




原因の近くの家は殆ど全壊していた。彼女は陰陽師のいうことを黙って聞くしかなかった。それ以外の行動は彼女に思いつかなかった。

逃げたところでどこに逃げればいいのか。そして逃げれば安全かどうかもわからない。わからないという恐怖心から、彼女は目の前の希望にすがるしかなかったのだ。



そんな中雄叫びが鳴り響く。咄嗟に彼女は耳を両手で塞ぐ。遠くで聞いたときはそこまで大きいものだと思っていなかったから、その雄叫びの力強さに彼女は目眩がした。



「来るぞ!構えろ!」



その後に衝撃が走る。陰陽師達が妖怪からの攻撃を防いでいるらしい。妖怪側からの攻撃が陰陽師達の結界か何かとぶつかり合って、大きな衝撃が地面を伝わってくるようだ。




「九尾を囲め!攻撃させないようにするんだ!」





どうやら攻撃してきた妖怪は九尾らしい。九尾と言えば大妖怪だ。彼女は初めて遭遇した妖怪を、しかもそれが九尾とわかって少しみたいと思った。戦っている陰陽師越しに見たものとは




大きさは人間と同じくらいの大きさ。おそらく170cm程度。美しい金色の体毛。そして怒りを表すかのように動くしなやかなその名前に相応しいその妖怪の体長を超える長さを持つ九つの尾。その毛を綺麗に逆立てて、先ほどまでの力強い憎しみのような感情がこもっているような雄叫びをあげるとは思えないほど見とれるような美しさを持つ狐がそこにいた。

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