幻想の始まり 3
彼女は人里にやっと辿り着いた。
すでに彼女は空腹と疲労で、人里に辿り着くだけで精一杯だった。
目は虚ろで、言葉を発するのも大変な状態だった。若干意識が朦朧としていた。
里の住人は、彼女を見て驚き、少し恐怖した。髪の色、顔立ち、服装など、彼らが見たことのないような容姿だったからだ。
それでも里の住人は彼女を助けることにした。
彼女は疲れきっているのが、周りから見てもよくわかるほど疲れていたからだ。
里の住人は彼女に水を飲ませ、とりあえず安全を確保した。
その後、ある家で彼女を保護することにしたが、食事はすぐに用意できなかった。
彼女は暑さもあって、かなり疲労が溜まっており、横になってすぐに寝てしまった。
「この娘、どこから来たのかしら。見慣れない服だし、髪の色も金色だし、顔もここらへんで見るような顔じゃないけれど…」
「それはわからないけれど、とりあえず今は彼女が起きるまで待たないと。それまでに食事の用意をしておこう。見殺しには出来ないし」
正直何者か分からない、というのは恐怖である。もしかすると彼女は悪人かもしれない。彼女が悪人でなくても、彼女が危険を呼び寄せる可能性だってある。
そうでなくても、彼女は人里の住人にとって服装も、髪の色も、顔も、見たことのない人物なのだ。顔は誰とも似つかないし、髪の色は金色、服装は生地も模様も何もかも違う。もしかしたらそれだけで攻撃される可能性だってあるのだ。
だけれど、ここの人達は優しかったようだ。
「ん…」
「あら、起きたのね。ご飯作っておいたわよ。お腹空いてるでしょう。と言ってもあなたが持っていた筍を使わせてもらったけれど大丈夫かしら」
「え…あ、ありがとうございます…」
「大丈夫か?かなり疲労もしていたようだし、長いこと食事していなさそうだし」
「いや、本当ありがとうございます…ご飯を食べさせてもらえるなんて…」
「まぁとりあえず今からご飯持ってくるね。ちょっとまってて」
どうやらここの家は夫婦二人で生活しているようだ。優しい人達に保護されて、ご飯まで作ってもらえるなんて、本当にありがたい。一時は真面目に死を覚悟していた。
そして目の前にご飯が出てくる。
「どうぞ召し上がれ」
「ありがとうございます。いただきます」
筍ご飯が出てくる。量もそれなりにある。食べればある程度満足できるだろう。他に魚もあるし、これだけ食べられるならば取り敢えず何とかなりそうだ。
「じゃあ私達も一緒に食べようか」
「そうだね。いただきます」
日は落ちかけている。遠くに見える夕焼けがとても赤く眩しい。
その夕日を横目に見ながら、彼女は、二人と一緒に夕食を食べるのだった。




