二人の秘密を封ずるための 12
何かがおかしかった。
そして急に訪れる収まっていたはずの吐気と頭痛。
助けを求めようと声を出そうとする。しかし声は出なかった。
賽銭箱の後ろ側の空間から境界が現れる。彼女はそれを激痛でただ見ているしか出来なかった。
境界が展開されて、その境界が大きく開いた。大量の目が彼女を見つめていた。
それだけではない。それ以外にも大小は異なるが、大量の境界が展開されている。
あまりの異様な光景に彼女は激痛や吐気も忘れて怯えるしかなかった。
彼女が怯えている間にも新しく境界は展開されていく。
しかもその新しく展開される境界と彼女との距離は縮まっている。
声が出せないのでわけのわからないものから逃げるしか無かった。
自分を見つめながら止まっている友人の方に向かって走りだす。
境界はそれを追うかのように、今までより速い速度で展開されていった。
境界の追ってくる速さは速く、彼女の真後ろや真横からも展開されている。
友人に手が届きそうになったその時に、その自分と友人の僅かな空間から大きな境界が展開される。友人の姿は境界の陰に隠れてしまった。その瞬間に彼女は一瞬だけ絶望した。彼女が見えなくなったという恐怖と、自分から境界に飛び込みそうになっていることに。
走った勢いを止めながら友人に助けを求めて伸ばしたはずの手を一瞬のうちに引っ込めようとする。
しかしその瞬間に友人ではない何者かの手が自分の手をつかむ。友人に伸ばしたはずの手は何者かに掴まれた。
走った勢いを止めることも出来ず、ダメ押しするかのようにその何者かは自分の手を軽く引っ張った。
唯一の助けである友人が見えなくなった絶望と、何者かに掴まれ境界の向こう側に入る恐怖。彼女は目の前に境界がされてからの一瞬のうちに起きた何もかもを理解することが出来なかった。
全てを理解することができないまま、彼女は境界の向こう側に飲み込まれていった。
彼女が飲み込まれた後全ての境界は消えていった。
博麗神社の前にいる女性が一人いた。
強い風が草木を揺らした。
チャリーン…
何か不自然な、乾いた音がした。




