魔法っていいねぇ
今年ももう終わりますね。
来年も……続くといいなぁ…(切実)
「うん、やっぱ魔法っていいねぇ」
そう、間延びした声でつぶやくアイスの前には、凍りつき活動を休止している草木がオブジェクトのように鎮座している。まあ、鎮座というほどの大きさでは無いが。
「あーやっぱり魔法も存在するのなー」
「あの人の書斎から魔導書かっぱらってきて正解だったわ~♪」
かなりご満悦の様子で。って、
「盗って来たのかよ!」
「盗んで無いから。それに盗んでもいいんじゃん?勇者の特権ってやつさ」
俺達勇者じゃないし。
「で、どうよ?魔法とやらの使い心地は」
「えーと…僕が今使ったのは氷属性の初級魔法がなんちゃら。対象をある程度の範囲でなんちゃらするなんちゃら」
「なんちゃらって何だよ分かりづらい」
「いやこれ日本語じゃないからさ?製作段階でそんな文字作った記憶があるからある程度解読出来たけど」
…………ん?
「アイスってこのゲームの製作者なのか!?」
ここに来て製作者チートとか……いやさすがにそれはないだろうがゲームクリアの糧になるんじゃなかろうか。
「残念だったね。シナリオとかほっとんど改変されてるよ。本当にすごいねPA-51xとやら」
そういやそんなのあったな。全く危機感無かったけど。
ていうか危機感無さすぎ。いい意味で冷静なのかこいつ。
「なあそれ地味に結構やばいよな」
「…まあそうなんだけど、今のところほとんど情報が無いんだよね。メッセージも受信しか出来ないから相手騙して情報戦なんてことも無理だし」
「これゲームクリアしてる暇も無さそうだしな」
「そうそう。それでさらに動機が分からないわけよ。迂闊に動けない」
「そうか?ゲーム世界で邪魔無いんだから好き勝手暴れた方がいいんじゃね?」
ゲームは楽しんだもの勝ちさ。by作者
「この低能力な体、そしてデスゲームかも知れないこの世界で暴れられる君に驚きだよ。あとは___」
「……あとは?」
「__メッセージの送り主が使い魔をこの世界に送ってきているとしたら?」
そういいながらアイスは、俺の背後を指差した。
「………え?」
再び意識を戦闘へと持って行く。
例の狼とは戦い慣れはしたが、油断すると足元を掬われかねない。
しかも………
「同時に三匹………か」
…今まさに、狼の三匹のうち一匹が俺に襲いかかろうとしていたってわけだ。
「……誰か頑張れー」
「はぁっ!?」
「冗談冗談。大丈夫さ、今までとは戦力が違うはずだよ?」
アイスの回りに小規模の何か(魔方陣とでも言うのか?想像とは少し違った)が展開される。
気付いた時には、俺の50cm前で狼の四肢が凍り付いていた。狼は移動を急に封じられたためか、頭やらを必死に動かしている。
……魔法って、いいねぇ。