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14粒目

「なんだい、珍しいお客さんが続くねっ!」

勿論歓迎するよ!と逞しきは女将。

「夕食も任せな!今日は“あたしの”快気祝いでたんまり仕込んでるからね!!」

何とも頼もしい。

男が、教授たちを鳥便屋へ案内し、我と狸擬きと狼男は宿で留守番。

部屋でなく広間代わりの食堂のテーブルに陣取っていたら、

「暇なら手伝ってちょうだいなっ!」

蒸かした芋の入った大きな鍋をどんと置かれ。

熱い芋をひたすら剥き上げながら。

『先刻の様な出来事は、珍しくない事柄なのか?』

狼男に問われた。

「のの、大変に珍しい事象であるの」

男もそう伝えていたはずだけれど。

『それにしては、キミたちはとても落ち着いている』

ふぬぬ。

「それは、あの男は長く旅をして、色々な経験を積んでいるからであろうの」

『……』

狼男は、今はもう夕陽の射し込む窓の外へ目を向けてから。

『キミは、どうなんだ』

我に視線を戻した。

我であるか。

「我は、そうの」

剥いた芋を器に移しながら、

「つい最近、純粋に人の身でありながら、人の、獣の心すら持たない(むすめ)に出会っているからの」

あんな黒い靄程度、なんとも可愛い類いである。

『こころ。ええと、この部分にあるはずの“気”を持たないのか?』

狼男が胸に手を当てる。

「そうの。お主など、特に大層珍しい個体であるからの。あやつに出会っていたら、一体、何をされるか解らなかったの」

「フーン」

全くです、と剥いた芋の皮を口に放り込む狸擬きまでも同意するため。

『……その人間は、今もいるのか』

そっと声を潜めて問われた。

狼男は、

「危険な人間」

と判断したらしい。

「いるの」

我も神妙な顔をして見せれば。

『……』

分かりやすく顔を青くするため。

「まぁ多少、あやつの移動は不便になっているからの」

ただ隣の国へ行く時は少し気を付けるのと忠告はしておく。

『あぁ、気を付ける』

生真面目に頷く狼男。

ほこほこした芋を剥きつつ、先刻のふわふわした食べ物はとても美味しかったと、あれはスフレパンケーキと言うものらしいのと話していると。

「あっらまぁ!?あんたたち仕事早いね!!1/3も行けばいいと思ったのに!」

厨房にいた女将が剥いた芋を回収しに来る頃には、ほぼ剥き終わっていた。

「あんたもさぁ、その小ささでなんだい、お手伝いや住み込みで働いてた過去でもあるの!?」

言葉は解らないふりをすれば、

「はぁー!世の中広いね!!」

それでも勝手に納得し、ガハハと笑い、

「助かったよ!!」

と大きなボールを抱えて厨房へ戻っていく。

入れ違いに男が戻ってきた。

「ただいま」

駆け寄れば男が我を抱き上げ、

「おかえりの」

そんな男の頬に手を当てれば。

「?……蒸かした芋の匂いがする」

手を取られ、スンスンと匂いを嗅がれた。

「くふふ」

教授たちは、鳥便屋で仲間からの返事を待つと言う。

夕食までには戻ると言うため、

「我は身体を拭きたいの」

狸擬きと狼男は食堂へ残し、我は男と部屋へ戻り、濡らした布で身体を拭き上げつつ。

「……君は」

背中を向けたまま男に問われた。

「?」

「おかしくなった彼女に、何か訊ねていたな」

はは、耳敏いの。

「そうの。ただ答えを貰う前に、靄は消滅してしまったの」

男は、我が、

「何を」

訊ねたと、我に聞かない。

我も、口にしない。

それでも、ワンピースを羽織り、靴下を履き直し、男を振り返れば。

背中を向けていた男も振り返り、口を開きかけたけれど。

階下から賑やかな気配。

教授たちが戻ってきたらしい。

黙って男に両手を伸ばすと、

「あぁ、行こうか」

溜め息混じりに、それでも笑みを向け、我を抱き上げてきた。

ただの憶測を、安易に口にしたくはない。

我の瞳で黒い靄に見えているだけで、もしかしたら、黒い靄たちは、それぞれに全く異なる「何か」なのかもしれない。

食堂に戻ると教授たちだけでなく、宿の客たちも食堂に現れ、大変に賑やかになる。

教授たちも旅人たちも、互いに物珍しい者同士、自己紹介から情報交換、各国の話と、話題には事欠かない様子。

教授と青年が消耗していたのは、長旅のためではなく、大事な仲間が突如消えたからであって、無事に眼鏡女と合流した今は、精力的に食事をし、酒を飲み、積極的に話をしている。

勿論眼鏡女も、よく食べよく飲んでいる。

男は我を理由に早々と席を立ち部屋へ戻ったけれど、階下の賑やかさは、夜が更けてからも続いていた。


「お世話になりました!凄く名残惜しいけどみんな待ってるし帰りますっ!あ、手紙は必ず送りますね教授のお小遣いから!」

教授のお小遣いからであるか。

教授は苦笑い程度であるから、そこそこに小金持ちなのかもしぬ。

教授の話では、他国との交流の多いお嬢様学校の繋がりをより密接にしつつ、

「長い道程にはなりそうですが、私たちがやってきた道程を、国と国を繋ぐ道として整備したいと考えています」

と、大学の教授であるのに、大変に活動的である。

机にかじりつくより、自身の足で見て回る側の教授らしい。

「今回も思わぬ体験が出来て、大変に楽しかった」

愛弟子の好奇心が仇となり、そしてその奇行のお陰で、消耗するどころか予想外の場所まで来られたと喜んでいるのだから、大概肝が座っているし、変わり者でもある。

「あなた方とは、生きている間に、是非、もう一度だけでも、お会いできたら嬉しい」

教授が男と握手し、

「またね、ありがとうね!!」

「フーン」

もう拾い食いはするなと狸擬き。

元気な眼鏡女たちを乗せた馬車を見送り。

小さな嵐が去ったような。

にしても。

(あれの、黒い靄も色々であるの……)

段々と興味が湧いてきた。


我等は、村の散策のため、少し大きめの道に出る。

なかなかに大きな村であり、相乗り馬車もあるため、走ってくるのを待って皆で乗り込めば。

「……」

対面に座る、少なくとも見た目は我と同じ年頃の小さな娘が、我をじーっと眺めている。

我は珍しい見た目であるし、視線には慣れっこである。

娘は、隣にいる母親に何か問い掛け、母親は少し困った顔でかぶりを振っている。

隣には地味とは言え目新しい獣が、更に隣には頭から獣の耳を生やした者がいると言うのに、小さな娘の視線は、じっと我に向いている。

「フーン」

今、ケーキの描かれた看板が見えましたと狸擬き。

「おやの」

ちょうど馬車が停まったため、馬車を降りる。

乗り合い馬車には乗らず歩いている人間も多く、村の端から端まで程度なら、歩く人間も多いらしい。

かなりの距離があると思うのだけれど。

空は快晴。

赤と橙色の屋根に陽が当たり、木彫りの看板を指差した狼男が、

「これは、美味しいもののマークだ」

尻尾を揺らす。

飾り気のない1ピースのケーキが乗った木彫りの看板。

チーズケーキと思われる。

盛況な店内は村の人間と旅人半分といったところか。

大きなテーブルが埋まっているとカウンターを勧められ、客は途切れそうにないため、我は男の膝に乗れば。

空いた隣の席に、1人の客が案内された。

「ラッキー、席、ありがと♪」

我を乗せた男の隣に腰掛け、

「ハァイ、あら偶然♪」

と片手を上げたのは、我等が山の麓に陣取っている時に、あの山から下り降りてきた、胸のボタンを無駄に外した若い女だった。


「随分とゆっくりだったみたいね?」

呆れた顔で鞄から煙草を取り出す。

お主はずっと村に居たのかと問えば、

「まっさか、街へ行って、また戻ってきたのよ」

なぜ。

「買い物を頼まれてね、ついでにあなたたちもいるかなぁって思ったの」

ニコッと他意なく微笑まれ。

この再会は。

「本当に偶然。ここのチーズケーキ買ってくるように頼まれたの」

ほう。

「私、薬屋なのよ」

ほうほう。

「まだ半人前だけどね」

魔女の村の男の様に、植物を育てているのかと思いきや。

「ううん、植物も育ててるけど、私の先生は、動物から採れたり作れたりする薬が得意なの」

それは大変に興味深い。

話を聞きたいけれど、目の前に置かれたチーズケーキに、我も若い女も意識を持っていかれる。

色の淡いチーズケーキに色鮮やかなソースが掛かっており。

「フーン?」

スンスンとお行儀悪く匂いを嗅ぐ狸。

「これは、ラズベリーかな」

「そ、色合いがとても綺麗よね」

男がフォークで切り分け、口許に運んでくれる。

「あーむぬ」

むぬむぬ咀嚼すれば。

(ぬんぬん)

ほどよいソースの酸味と癖の少なめなチーズの滑らかさが。

「とても美味の♪」

「旬のラズベリーもいいけど、私はしっかりジャムにした甘さ強めのこのソースが好きなの」

「フンフン」

人の手が加わったものは美味だからなと同意狸。

「お主はどうの?」

狸擬き越しに狼男に問えば。

『うん、甘いチーズも美味しい』

ご機嫌で食べるけれど。

『あっという間に食べ終わる』

「くふふ、そうの」

おかわりを所望すると、私もおかわりお願いと手を上げる女に、

「今日はお仕事なの?」

不思議そうに男が問われた。

「そうですね、一応」

「ふぅーん?」

男の曖昧な返事に、頬杖を付き、小首を傾げる若い女。

そして男の膝の上に座る我に対し、意味ありげに片目を閉じて見せる。

(ぬぬん……?)

この女が興味があるのは、男や狼男ではなく。

色気たっぷりに誘われているのは、もしや我なのであろうか。

「ね、街の方のお店に来てよ、地図描くから」

今日はすぐ帰らなくちゃだからと、おかわりのチーズケーキもパクパクと食べ終えた若い女は、ホールでチーズケーキを買うと。

「街で待ってるからねー!」

馬車に乗り込み、あっさりと帰って行く。

我等は歩いて村の散策を続けながら。

狼男に、

「お主は、あの若い女の豊満な乳房に何か思わぬのかの」

乳房だけでない、括れた脇腹に張りのある尻と太もも。

さぞかし魅力的であろうのと問うて見れば。

『あぁ、見た目が女性だと解りやすくて、とても助かる』

のん。

狼男は、“若い女でござい”と言わんばかりの人間には、惹かれにくいのか。

『どうだろう。俺はどうやら、君たちよりも、目はそんなに良くないらしい』

だから見た目はあまり気にならないと。

のの?

「そうなのか」

男も驚いている。

「お主はどうの?」

狸擬きに訊ねれば。

「フーン」

どうでしょう、あまり意識したことはありませんと。

とは言え、狸擬きも狼男も、少しの色彩の精度が下がる程度と見受けられる。

「彼には、君の黒髪はより深く、瞳の色も、より濃く見えているのかもしれないな」

狸擬きと共に、散策途中にあった小さな雑貨兼おもちゃ屋と思われる店を覗き込む狼男を見て、男は、我の髪を掬う。

仲良く尻尾をゆらりゆらりと揺らす1匹と1人は、同時にこちらを振り返り、男が肩を竦めて頷くと、いそいそと中へ入って行った。


「あららぁ……まぁた随分変わったお客様だことぉ」

年寄りの中でも、滅法長寿だと思われるおばばが、大きな椅子に埋もれるように、編み物をしながら迎えてくれた。

薄暗い建物の中。

あまり上手とは言えない誰かの肖像画、この村のどこかを描いた絵画、かごには子供用に編まれた小さなボール、どこから流れて来たのか、古そうな卓上遊戯板。

馬車の車輪に引っ掛けられる編まれた用途不明な紐たち。

ありとあらゆるガラクタがみちりと並べられている。

古そうな独楽もあるけれど、遊び道具としてでなく、木彫りと共に飾られている。

「フーン?」

「欲しいものがあればね、少しはおまけするよぉ」

少し箱を探ってみれば、ガラクタの中に紛れ、破けた鞘付きのナイフ。

けれど、見事な程に、

「錆びておるの……」

柄はなかなかに凝っている。

「研けば8割くらいは元に戻るかもねぇ」

8割。

『いいな』

隣で覗き込んでいた狼男が気に入った様子。

「磨ぎ方を教えられるし、いいかもしれない」

途端に狸擬きが店中を(せわ)しなく眺め、品物を漁り始める。

どうやら、弟分の狼男が玩具を買い与えられているのだから、自分も何か欲しいと、必死に自身に有益なものや、玩具になるものを探している。

(ののん……)

従獣は主に似ると言うけれど、主の我でも、ここまでのがめつさは持ち合わせてはおらず。

ならばこれは狸擬き本来の性分なのであろう。

それでも。

「慌てずとも、お主にも何か買ってやるから、ガラクタ、でなく商品を壊す勢いで漁るのはやめるの」

従獣の行いによっては、主である我の品位が問われるのだ。

その我の従獣は、今は深いかごの中に頭から突っ込み、後ろ足と尻尾をバタバタさせている。

「……フーン」

まんまと自力では抜け出せなくなっている模様。

男が狸擬きの後ろ足を持ち上げて引き抜くと、

「ののぅ」

『おっ……』

見事なくらい、上半分のみ、埃で白く染まっている。

「……フー、ブシュンッ!!」

そして盛大にくしゃみをかます狸擬き。

「あららぁ。そう言えば、そっちの掃除をしたのも、いつだったかしらねぇ……」

男が狸擬きをぶら下げて外に出ると、地面に下ろされた狸擬きは盛大に身体を震わせ埃を落としている。

「おわ……っ」

そう、男が数歩引く程には埃が舞う。

「……」

店には老婆1人。

人様の店よりも、我等が荷台を掃除しなくてはならないと思いつつ。

皆で顔を見合せ。

余計なお世話かとは思いますがと、男が片付けを請け負おうかと持ち掛ければ。

「あらあらあらぁまぁ助かるわぁ……♪」

あっさり了承された。


物はとかく多いけれど、ガラクタ、でなく小物たちは、カゴに箱に纏められているため。

男2人が運び出せば、手前の棚の方だけは、おばばが気持ち埃を落としており、そう汚れていない。

「の、これを使っていいか聞いて欲しいの」

「ええと、これは売り物ですか?」

「あらそうよぉ、それも売り物だけどねぇ、他にないから、使っていいわぁ」

おばば曰く、売り物らしい丈の短い箒で埃を吐き出し、

「ムーン」

鼻先を覆うように我にハンカチを巻かれた狸擬きは、案外器用に、物を取り出した後の店の奥の棚に上がり、棚を壁を拭いている。

外で箱の中のガラクタをひっくり返していた狼男は、我が指先で摘まんでいるものを見て、

『それは?』

「ネズミのミイラの」

『お、おぉ……』

山ではあまりミイラにはなることはないらしい。

「あらまぁまぁ、こんなところにあったわ」

売り物ではない、おばばが落としたネックレスが出てきたり。

「これは嫁に行った孫の宝物だったわねぇ」

ただの石ころだったり。

額縁に収められた風景画は。

「この絵はねぇ、あたしの旦那が描いたものなんだよ……」

ぬぬ、不用意に下手くそだと口に出さなくて良かった。

外で品物を広げ始めたお陰か、村人だけでなく、旅人も立ち止まって小物などを眺めている。

「これはなんだい?」

「ええと多分、馬車の部品だと思います」

男の声が聞こえてくる。

建物の(すみ)からは、カラカラに乾いた万能石が出てくる。

少し小洒落たランタンを見つけ、外に出せば、狼男が埃を払い、

「おおっ!これを、言い値でいい、ぜひ売って貰えないか?」

裕福そうな、多分村へやって来た街の人間と思われるじじが、おばばの言い値の、割りと高値で品物を買って行ったり。

ちらほらと物が売れ、独楽(こま)はこうやって使うと男が適当な紐を巻き付ければ、

「あらまぁ、へんてこな置物だとばかり思っていたわ」

おばばは笑い、玩具を積めた箱に並べる。

これらは、おばばの父親が半分仕事半分趣味で仕入れてきたものだと。

どうりで、この世界でさえ古臭さが拭えないわけである。


片付けたお礼に好きなもの持ってっていいとおばばがご機嫌で建物の中を見回した時には、すでに陽は西から射し込み。

狼男は、気に入ったナイフだけ礼に受け取り、狸擬きは、

「フーン」

わたくしめの食べたいものを主様に作って頂きたいですと物より食の狸。

結局、目ぼしいものが見つからず、代わりに(あるじ)である我に報酬をねだってきた。

とばっちり、いや、これも主の役目であるか。

「君はどうする?」

我も。

「特にないの」

それより、

「お風呂に浸かりたいのの」

浸かれなくてもせめて身体を流したい。

それくらい埃まみれである。

「そうだな」

感謝するよと手を振るおばばに見送られ徒歩で宿へ向かい、出迎えてくれた女将に、住居の方の風呂を少しばかり貸して貰えないかと男が頼むと、

「風呂?勿論いいよ!使いな使いなっ!」

太っ腹な女将は、埃まみれの我等を笑い。

レディファーストで、我から。

水を溜め、万能石で温めもらった湯を頭から被る。

「ぬー♪」

頭を身体をごしごし洗いさっぱりして出ると、次は狼男が身体を流している間に、我は男に髪を乾かして貰う。

続いて出てきた狼男の髪と尻尾を男が乾かすと、

「フーンッ!!」

相も変わらずジタバタする狸擬きを小脇に抱えて男が浴室へ消える。

そんな姿を見送りながら、

『俺も、髪を切った方がいいんじゃないかと思っている』

と狼男。

我の髪は長いとはいえ、所詮幼子の髪の量。

それに比べると、狼男は成人男子の獣の多量。

どうにも、男に乾かして貰うのが居たたまれない様子。

「ふぬ」

その気持ちも解るけれど。

「少し勿体なく感じるの」

『勿体ない?』

「ふわふわもふもふで、狸擬きとはまた違う手触りであるしの」

それに何より、

「お主に似合っておるからの」

男の長髪も珍しいものであるし。

『この長さは、俺に、似合っているか』

「の」

『そうか……』

少し照れ臭そうな、そんな狼男の髪の毛を三つ編みにして遊んでいると、

「フーン……」

不満気な狸擬きがノコノコと先に出てきた。

我も男に耳の上で三つ編みにしてらった髪を、くるりと巻き付けられ、茶色いリボンで留められる。

「うん、可愛い」

『あぁ、獣の耳みたいでとても可愛い』

「フーン」

情報量が多いですねと、1匹を除き褒められた。

男が運び込んでいた茶色いワンピースに着替えると、やってきた女将に、

「あんらぁ、まぁた可愛くなっちゃって!!」

衣装道楽なんだねぇ!

と、褒められたのか呆れられたのか。

しかし。

これは全て男の趣味であり、我は冤罪である。

「あんたの兄さんは、もうあんたが可愛くて可愛くて堪らないんだろうねぇ!」

あっはっはと女将。

のぅ。

男の仕業なことには、とうに気付かれていた。


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