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第8話 ふりかけ

「殺すなら殺しなさい!」


 俺は眼下に広がる城下を眺めながら縛り上げられた麗人の戯言を聞き流している。

 ここは城と城下を見渡せる丘だ。

 さしもの俺もあれを食い尽くすのは無理だ。勿体無い。

 あのガキが言っていた活かさず殺さずは的を射ていたな。

 人間ごはんを全滅させては意味がない。

 

 俺は荷馬車の護衛を水牢で奇麗にすると繋がれた馬を逃がす。

 妖怪はそこそこ食えたが動物は駄目だ。不味い。

 鬼であるなら人型のみを食らうのみか。


「命乞いなど致しません! 即刻首を跳ね飛ばすといいでしょう!」


 そしてこの荷馬車の積み荷をどうするか。

 非常食にするか、人間牧場を始めるか。

 なんにしても食いでがない麗人だ。

 野に放って生ませるのが吉だろう。


「大餓。あーしこれが欲しい。これと交換」


 美味が今しがた生えてきた自身の角を差し出してくる。

 食うのではなく遊ぶのか。

 人間(食事)で遊ぶようならここで始末するか。


「遊びたいのか?」


 俺は金棒の握りを確かめる。


「んーん。美味のため。美味しくなるよ」


 ほう。

 俺は荷馬車の鉄格子を金棒で砕くと喚き散らす麗人を差し出す。


「これか?」


 掴んでみるが、本当に食いでがないな。

 骨と皮の白粉女で子が産めるのか。

 野垂れ死ぬ前に食っておいた方が良さそうな代物だ。


「私は貴人です! 辱めなど、ングゥ!」


 喚き散らす麗人の口に美味の指が入る。

 噛み切ろうとして血が流れるがそれがそのまま麗人の中へ。


 変化はすぐに訪れた。

 細い体が音を立てて作り替えられる。

 見た目は変わらないが額に一本の角。

 美味と同じ型の鬼か。


 そしてすぐさま人間に食らいつく。

 俺が綺麗にしていた人間達を横取りだ。

 だがこれが美味となるなら問題ない。

 美味と一緒におかずになるか。


「ギャアアアア!!!」


 俺が喚き散らす麗人鬼の角を折る。

 ポリポリと喰ってみるが普通だな。

 美味ほどではない。


「どう?」


「お前の方が美味い。試みは面白いがな」


 俺はぱりぱりと麗人の角を砕くと人間ごはんに振りかける。

 美味はおかずになるがコレはふりかけが精一杯だな。

 だがふりかけにすると意外に旨い。人間ごはんを減らす価値はあるか。


 キンキンキンキン!


 喚き散らす麗人鬼が刀を持って切りつけてくる。

 角がない鬼は力が出ないのか。まるで傷がつかない。

 俺は鉄格子の女たちを水牢回転で奇麗に剥くと差し出す。

 訝しげだが食欲に負けて食らいだす。


 それでいい。

 このふりかけ、『喚き散らす』からきて『喚き』と呼ぶか。

 これはまた一つ美味への関心が高まったな。

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