第52話 最終章 弐
私は喚き。この地に残った一匹の鬼。
私の手にはかつて大餓と呼ばれた鬼の太刀が握られている。
人となり、
美味サマの口に入り、
一振りの太刀になった鬼。
流石の私もこれは食べられないのです。
情?
いいえ。これを噛み砕くには今の私では力不足。
いつかこの刀身を噛み砕ける日までお預けなのです。
美味サマは天に上った。
鬼神として新たなる神としてこの地を見守る存在となった。
人食いの神に守護される国。
この国の人間達にはお似合いなのです。
ーーー
「喚き様! うちの婆がもう、もう、」
人の子の言葉に私は頷くと一軒の家に入る。
「喚き様? 今日はおかしいの。誰も居なくて、知らない人ばかり。わたしの人見知りはまだ直ってないのに」
「そうですね。でもすぐに皆に会えるのですよ」
私は異能を発現する。
かつての、私の記憶にもある、かつての姿を再現し、そして旅立った知人も再現する。
不安そうな顔が安堵に変わる。
「よかった。皆、何処に行ってたの? わたしはずっとここに居たのに」
その安堵の表情と涙と喜びと、その最中に、私はその首を刎ねる。
幸せに逝くのですよ。
私が見届けるのです。
その最後まで。
人の味などわからないのです。
みな同じ味。
私は手を合わせ感謝を捧げる。
人と食事に感謝を。
ーーー
「喚き様。何故来られたっちゃ?」
そこには血に飢え、人ならざる望みを持ったかつての人間が、
いえ、まだ人間のまま。
「おらぁ。もう許せねぇだ。このままじゃ死に切れねぇ。
おらも鬼に堕ちる。皆殺しだ。だれもかれも決して許さねぇ。
おらは、復讐に生きる鬼だぁ」
その瞳にかつての面影はない。
私はすぐさま首を刎ねる。
人のままで逝くのです。
その気高き魂のまま。
そのために最後までここに居ますよ。
その味は私が知る人間の味。
鬼にはなっていない。
人は人のまま。
鬼となっての復讐が許されるのは私だけなのです。
ーーー
「喚き様!」
そしてまた一人。
「ギャアアアア!!! お前らは老いるな! 死ぬななのです!
私はこうして人間に復讐しているだけなのです!」
本当に忙しい。
もはや私は人食いではなく、
人の煩悩、塵を食う鬼。
塵肉食いなのです。
人の魂は美しいままで逝くのです。
とても忙しい。
私の人間への復讐はまだまだ終わりが見えそうにないのです。




