第50話 遊び
「結局アレは何だったのだ?」
俺と喚きは金棒と鬼太刀で切り合っている。
「なにもこれも酷かったのです。徹底して人間同士で殺し合わせて。私は誰も殺していないのです。見ているこっちが復讐されている気分でした。当分夢に出そうなのです」
なるほどな。
ただの喚きの精神を操る異能で、誰かを鬼に変えたわけではない。
鬼と思わせ、疑心暗鬼で殺し合いをさせていたのか。
自分自身は決して手を出さない。
それがあの怨念の復讐だったのだろう。
「私の復讐も考えないといけませんね。私の手を使わずに殺させるなんて、そんなもの復讐ではないのです! 大餓サマ! お覚悟ください!」
それで俺は喚きに復讐されている最中だ。
精神系の異能に長けた鬼が刀で切りつけてどうするのか。
鬼太刀と同化して硬くはなっているが本気を出せば折れてしまうな。
ギィィィン!どころかビィィィン!という所だ。
「大餓と喚きばかりで遊んでないで。あーしも一緒に遊びたい」
「ヒィィィ! 美味サマそれを抜くのは止めてください!」
美味の抜いた破邪の剣に喚きが喚く。
「ならば俺と遊ぶか」
遊びじゃないのです、と喚く喚きは無視だ。
満面の笑みで斬りかかってくる美味。
フッと視線から消える。
俺が金棒を背に回すと衝撃が走る。
その金棒を支点に振り替えると美味の斬撃が走ってくる。
これは早いだけだ。致死の一撃を狙っているわけではない。
ただ切りつけているだけのただの遊びだ。
だが俺の意識が加速していく。強者を前に意識が開いていく。
遂に美味の息が切れ、膝をつく。
「ハァ、ハァ。楽しいね。大餓」
「確かにな。お前は強さまで鬼神と呼ぶに相応しいものになりそうだな」
俺は俺の腕から流れる血を見ながら返す。
「ねぇ。大餓。あーし、喚きの時に血を使ったから少し分けてもらってもいい?」
俺が返事を返すと俺の腕の血を嘗めとる美味。
「ん。大餓のいつもの味」
「変わるものか?」
「大餓はあーしの血の違いわかってたじゃない。今のあーしの血。どうだか教えて?」
俺に背を向け首元をはだける美味。
血が足りないのではなかったのか?
それでも俺は口にする。
「確かに変わっては来ているな。俺も喚きの様に首だけでも元に戻るのか?」
「流石に大餓は無理だよ。あーしの血が無くなっちゃう」
「大餓サマばかりズルいのです! 私も!」
「お前は散々吸い尽くした後だろうが」
「ギャアアアア!!! ならば奪い取ってやるのです!」
切りかかる喚きの鬼太刀を指で絡めて放り投げると喚きの力も弱まる。
「ギャアアアア!!! 馬鹿にするななのです!!!」
そう言って噛みついてくるが、文字通り歯が立たない。
こいつも殺意が消えない奴だ。
復讐の仕方を変えるだけで、復讐心自体が消えたわけではないのだな。




