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第46話 離別

「大餓サマ。美味サマ。ここでお別れです」

 それはいつもの喚きの喚きではなかった。


 俺達が地下の縦穴から出た後、そこには幾重にも張られた結界が待っていた。

 だが、物の数ではない。

 障害にもならなかったが最後の結界を突破した時に喚きが俺から降りた。


「喚き、聞いてもいい?」

「私はここでやりたいことが出来ました。ここでこの好機に乗りたいのです」

 喚きの顔が笑っている。

 それは猛禽を思わせる得物を見つけた時の目だ。

 喚きが狩るべき人間。それは復讐か。

「すぐ済むのか?」

「いいえ。時間をかけてじっくりとやるのです」


ーーー


 喚きと別れてしばらくの間美味は放心していた。

「ねぇ。大餓。どうして喚きを止めてくれなかったの?」

「あれは狩りだ。前にも言ったが、お前たちが人を食うのを俺は邪魔しない。それが終わるまでは待とうではないか」

「喚きは帰ってくるよね?」

「そう思うがな。その後でごねるのなら縄でもつけて引っ張ればいい」

「うん。そうだよね」


ーーー


「見つけ申した。鬼殺しの鬼肉喰い、鬼食い大餓殿とお見受けした。いかがか?」

 それは人間だった。身なりの良い侍。

 そしてその顔は何処かで見覚えがある。

「某は壱大字。侍で御座る。鬼退治を願いに参った」


 流石の俺も二の句が継げぬ。

 人間が俺に鬼退治だと?

 だが先の俺の呼び名の文言は何処かで聞いた。


「その前にそれをどこで聞いた。その対価は知っているのだろうな?」

「勿論で御座る。鬼討つ人間の魂。喚き殿の願いにて参上した。聞き届けられようか?」

「まずは話だ。死して言葉を話せる技を持ち合わせてはいまい」

「感謝を。喚き様の言葉は正しかったようで御座る」


 壱大事の語った内容は簡単だった。

 そこの城主が鬼になったと。

 そして喚きが止めに入ったが返り討ち。

 鬼の城主がそこを統治していると。

 そこは正に地獄のような日々であると。


 話は簡単だ。目的も簡単だ。だが。

「喚きが俺を?」

「そうで御座る。喚き殿には討てぬ程の鬼。大餓殿なら討てると」

「何故人間が鬼となった城主を討てない」

「我らには、討てませぬ。かつて忠誠を誓った主君が、今も尚意識を持っているので御座る。完全に鬼には堕ちては御座らぬ。仮に勝てたとはいえ、トドメは刺せませぬ」

「そこで俺か」

「無論、鬼に主君を討たせるとは鬼畜の所業。この命。ここで果てさせる所存。なにとぞ聞き届けていただきたい」


 これは、なんだ?

 出来過ぎている。

 まるで芝居の筋書きだ。

 これは喚きの調理か?

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