第44話 黄泉地
「普通の人間の味。まるで何かを託し終えた終わった魂の味がするよ」
俺達は大字たちを美味しく頂いてたが美味は訝しげだ。
「あれほどの胆力を備えた人間が普通の人間と変わらないのか?」
「あーしにも不思議。この人間を模した角が出てこない。形が無い。こんなのは初めて」
「きっと見掛け倒しだったのですよ。それよりもこの穴に潜るのです?」
そう言いながら喚きは穴の中を覗き込んでいる。
今の所何かが這い出てくる気配はない。
「きっと打ち止めなのですよ。さあさ、帰りましょう。残った人間でもつまんで帰るのです」
ーーー
「ギャアアアア!!!」
落下する縦穴の中で喚きが喚く。
帰ろうとする喚きを抱えて縦穴に突入だ。
美味は寧ろ嬉しそうな嬌声を上げている。
壁を蹴り、減速しながら降りていくと蠢く餓鬼が見えてくる。
これは縦穴と底の間に空間がある。
餓鬼では登れないほどの空間だ。
俺は着地前に光輪を放つ。
そこに見えるのは岩肌だ。
着地して周りを見渡しても岩ばかり。
これが黄泉の国か。
「ギャアアアア!!! どうして私まで連れてくるのです! 暗いのです!」
相変わらず贅沢な奴だ。
「光明」
俺は神の力で光を生み出す。
持続する光を手当たり次第辺りに投げる。
天井はあるが、横はだいぶ広い。
壁はないが天井の穴までは俺の背の五倍くらいか。
これは餓鬼が登れるようには見えない。
俺は光輪を辺りかまわず投げつける。
やはり壁はない。
ある程度の距離で光輪を広げてみても見えるのは起伏のみ。
この中身は魑魅魍魎で溢れかえっていると思ったが何も居ない死の大地だ。
「帰るか」
「ギャアアアア!!! 何しにここまで来たのです!」
「魑魅魍魎を始末しにだ。俺の人間を横取りに来たのかと思ったが何も居ないな」
「そうだね。あーしも興味があったけどこんな何もない所じゃね」
「死んだ人間は魂が天に帰り、体は腐って地に返るのでしょう? そんな汚いものが詰まった場所に良い所なんてあるわけないですよ美味サマ。さあさ、帰りましょう」
「待てーーーい!!!」
ようやく何かがやってきたようだ。
だが、暗すぎるな。
俺は光輪を矢継ぎ早に投げつけ光源にする。
照らされて何かが見えるが確認する前に溶けて消える。
こちらに来るのは声の主だけか。
「貴様ら神の手先か! この程度で黄泉の国の神が討てるなどと思いあがるな!」
光明の光に照らされて黒い煙を上げる人型がこちらに来る。
また神か。
またコイツ等は人間を無駄に消費しているのか。
この餓鬼夜行の源にかける言葉などないな。




