第43話 風穴
その地は巨大な風穴であった。
俺が大字と呼ぶ侍武者の案内で来たそこは城の中庭。
そこに結界が張られ中の餓鬼を押しとどめている。
その行く先は城の真下。斜めに伸びている。
「光輪!」
俺は喚きの姿で光臨を結界の中で炸裂させると餓鬼が消え失せる。
「なんという力!」
驚きの声が結界を張っていた術士の喉から漏れる。
「この程度の力。神を食らった鬼神美味様の借り物にすぎません。さあ、先へ」
どよめきの声が聞こえるが俺は無視して進む。
結界に触れるが問題ない。鏡も無事だ。
それほど強力なものではない。
更にどよめきが起こる。
「あないを。臆しましたか? 鬼とはいえ女人を先に立たせるとは何事です」
神妙な面持ちで顔を見合わせる術士達。
そこで一歩を踏み出したのは先の侍の一人、大字だ。
「ならば某が。術士達は更なる結界を。某が先導いたす」
ーーー
中は広い。鬼の俺でも通れる大きさだ。
大字を先頭に俺が続き後ろに術士が二人。
餓鬼への備えではないな。俺への警戒だろう。
そして大字が話しかけて来た。
「喚き殿。先程美味殿が神を食らったと申したか?」
「いかにも」
「ならば此度の大事は無関係とも言えますまい」
「それは?」
「今回の件は要である神が居なくなったことに起因するもの。それによって黄泉の蓋が軽くなったと申せばわかり申すか?」
「わかります。ではこの道は黄泉への道だと?」
「その通り。これを守護するための城であり、我々でもありもうした。それの抑えが効かなくなった。大事の規模は我々の想定以上。喚き殿に治められると?」
「勿論。神が如き鬼神の力を借り受けた私にこの程度の大事は小事。すぐにでも片付けましょう」
ーーー
辿り着いたそこには更に深い縦穴が待ち構えていた。
それは松明で囲われその穴の上に何かの祭壇でもあったのだろう。
それを支えていたであろう床の残骸だけが残っている。
「さて、ここが終点で御座る。喚き殿」
俺が振り合えると縦穴ではなく出口に陣取る大字と術士達。
「かような危険な鬼。ここから出すわけにもいかぬ。心中仕る」
ほう。まさかここまで肝が据わっているとは驚きだ。
俺は光輪で目くらましをすると鏡を割り喚きを影から呼び出す。
「なんと! 新たに鬼を呼び出すとは!」
「俺は大餓だ。俺に食われに来たとは殊勝な人間だ。最後に残す言葉はあるか?」
「ない。それはもう残してきた。存分に殺し合おうぞ鬼よ」




