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第42話 餓鬼夜行

「ギャアアアア!!! しつこいのですコイツラ!」

 いつもの如くこの物語は喚きの喚きから始まる。


 それは湧き出るように出て来た餓鬼の大群だった。

 それが道なりに百鬼夜行を敷いている。

 夜道の森が百足の如くのたうち回っていた。


鬼角雷閃刃・走きかくらいじんは・そう!」

 俺はそれに沿うように右腕から発した雷の刃を走らせる。

 道なりに走る雷の一閃が餓鬼の体を消し飛ばしていく。

 その体が消えていく。

 これは悪霊の類か。死体が残らない。


 喚く喚きと静かな美味を抱えて俺は宙を舞う。

 この悪霊夜行の発生源。そこは赤く燃えていた。


ーーー


「光輪!」


 その城は赤く燃えていた。城も城下も地獄絵図だ。

 俺は鏡の異能で喚きの姿になるとその全てを覆う光の輪を作る。

 そしてそれが収束すると悪霊の姿は消え失せた。


「なんという力。貴方様は天女か」


 俺の姿を見つけて侍達がやってくる。

 

「いいえ。私は喚き。鬼神美味が配下の一人。嘆きの鬼切断包丁喚き。我が主君の命によりこの地に来た一匹の鬼。人間。この地の大事を話すのです」


 鬼と聞いてざわつく侍達。しかし喚き姿の俺の佇まいに虚勢を張る。


「お初にお目にかかる。我が名は大字。某を探しに来たわけではないだろう? 鬼よ。何しにここへ来られた」


「ならば大字殿。私はこの地の平定に参りました。わが主、鬼神美味様は無駄に流れる血を好みません。人間を無駄に食いつくすこの餓鬼にお怒りです。これは、あなた方の仕業ですか?」


「某達にもわからぬ。城の地下から溢れ出したのだ。手の施しようがない。だが先の力で此度の大事を納めてくださるなら是非もない。あないしよう。いかがか」


「僥倖です、人間。鬼神美味様もお喜びになるでしょう」


 流石は貴人喚きの姿だな。人間どもがぺらぺらと話し出す。

 鬼が女人に化けるというのはこういう事か。

 なんとも便利だ。


「して某は知らぬが鬼神美味とはいったいどこの御仁か」


「知らぬのも無理はありません。美味様は鬼の神。名の通り美味を好みます。鬼討つほどの英傑を求めておられます。故に人が育つ地を襲う事はありません。大字殿がそれに値する英傑であれば知ることになるでしょう」


「なるほど。人が育つ地とは美味殿が好む人間の発祥地。そこを横取りされてお怒りという事か」


「理解が早い。大字殿。美味様が訪れるのも近いでしょう。その魂の対価として望むものを決めておくと良いでしょう」


「某の望みはここの日常。そのためならばこの身を死地に晒す事も厭わぬ恐れしらずの武者となるぞ。この地の平定の後はいつでもお相手いたそう」


 これは美味好みの侍武者がやってきたな。

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