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第35話 虐め

「ギャアアアア!!! 大餓サマに虐められたのです!」

「大餓。今のは流石にやり過ぎ」

 俺が喚きの殺意を抑えたことへの抗議だろうが、

「馬鹿を言うな。喚きの殺意は底なしだ。ここで抑えがないと人間を玩ぶ。それは俺が狩るべき鬼だ。人間(食事)で遊びだすようなら美味、お前ですらその対象だぞ」

「わかった。喚きを守ったってことで良いんだよね?」

「相違ない。タカが外れる前に止めただけだ。人間への復讐は人間の皆殺し以外の手段で果たしてもらおう」

「例えばどんなのです?」

「さてな。俺は復讐などとは縁遠い者だ。気に入らない奴は皆殺しにしてきたからな」

「全然役に立たないのです!」

「そういうな。お前も力を持てば変わるだろう。そうだな。喚き、お前の角の供与は止めても構わんぞ。その分は美味が肩代わりをしている」

「美味サマ!?」

「うん。喚きには強くなってもらいたいから。喚き、ずっと傍にいて。この旅を喚きと一緒に続けたい」

「勿論なのです! いつか大餓サマを用済みにしてやるのです!」


 ヤレヤレ。子供のお守りか。

 俺は喚きの頭に手を伸ばすと、


「ギャアアアア!!! 気持ち悪いです大餓サマ! 触らないでください!」

「大餓。そういうのはあーしがやってあげるよ。ほら、撫でて」

 嫌がる喚きと頭を差し出す美味。

 仕方なく美味の頭を撫でると美味が首筋をはだけて来た。

「血の方も試してみて。今のあーしの血はどう?」

 後ろから美味の首筋にそっと牙を立てる。

 以前との違いは感じるが飲み干したいと思えるほどではない。

「美味くはなっているのだろうが、角ほどではないな」

「そお? なら違いが分かるようにちゃんと味わって」

 血の味か。それを確かめるために身を乗り出すと美味が身じろぐ。

「ズルいのです! 私にも吸わせてください! 私は胸から!」

 喚きが美味の胸元に手を伸ばすとはだけていた着物が摺り落ちてしまう。

「駄目! おっぱいが出ちゃう!」

 珍しく慌てる美味。それに呆然とし熱を帯びる喚き。

「美味サマァ! 私、美味サマの・・・」

「そこまでだ。男の俺でも引くぞ。自重しろ」

 俺は喚きを剥がして美味の着物を元に戻す。

「ごめんね。喚き」

「ち、違うのです! 私にとって美味サマの血は食事! その取り方で味が変わると思ったのです!」

 苦しい言い訳だな。俺の視線に反応して喚きが反論する。

「鬼なんだから性別は関係ありません! 美味しい飲み方はきっとあるはずです!」

「そのために美味の身包みを剝ぐのか。恥を知れ、恥を」

「ギャアアアア!!! そんなことはわかっているのです! 気の迷いです! 大餓サマが美味サマを独り占めするのが悪いのです!」


 どこが独り占めだ。美味がどれだけ喚きの事を気にかけてるか。

 俺などただのおまけだ。

 だが、喚きが自分で気づくまでは口にすべきではないな。

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