第32話 恨み
「ギャアアアア!!!」
いつもの喚きの喚きから始まる。
今は喚きとの特訓中だ。
この前の影読みに囚われたのがよほど堪えたらしい。
「人間を全滅させようとするな」
それは俺が影読みで喚きと同期しているときに起こった。
いつぞやの影潜りで喚きが異能を使っているように見せかけた奴の強化版だ。
今回は影読みで俺が喚きの思考を読み取り異能を発現させている。
その発想は良かったのだが・・・。
ーーー
(水牢電炎爆!)
俺は標的の丸太を水牢で閉じ込めると雷を流し炎を中心に発生させる。
(凄いのです! 丸太が木っ端みじんに!)
次の標的はどれだ?
(多水風渦回転!)
俺は喚きが指定した丸太の欠片を水で包むと風の渦で巻きあげる。
(これがあれば喚きは最強なのです! 人間どもは皆殺しなのです!)
人間を全滅させようとするな。
「ギャアアアア!!!」
という訳だ。
喚きが余計なことを考えると、俺の思考が止めに入って実質的な精神操作になってしまう。
「余計なことを考えるな。なぜ人間を皆殺しにする」
「わ、私はそんなこと考えていません! 人間は貴重な食糧です!」
嘘だな。だが取り敢えずは問題ないか。
「ギャアアアア!!!」
駄目だ。問題だらけだ。こいつは人間の恨みで渦巻いているのか。
俺は喚きの精神支配を行わないように影から出る。そして鏡の異能を使った。
「喚き。お前の渦巻く人間への憎悪は何なのです?」
喚きの姿で喚きに問いかける。
「な、なんの真似ですかコレは!」
「いいから答えるのです。私の事は嘆きと呼びなさい」
「それは喚きが考えた名なのです! お前になんてやらないのです!」
ヤレヤレ。
俺は嘆くと水牢電炎爆と多水風渦回転を繋げるように発動して喚きに見せつける。
「私を受け入れればこの力が手に入るのですよ喚き。人間への憎悪を棄てろとは言いません。力を使う間忘れていればいいのです」
「ズルい! 嘆きはズルいのです! 私はこんなもの! こんなもの望んではいないのです! 私は! 貴女なんて望んでいなかった!!!」
? 何か、喚きの心の琴線に触れてしまったか?
「こんな顔、消えてなくなってしまえばいいのです!」
喚きが自分の顔に爪を立てる。それを止めたのは美味だった。
「喚き。あーしは好きだよ喚きの事。だから傷つけないで」
美味に抱きしめられた喚きは呆然とした様子で立ち尽くす。
「喚き。大好き。愛してる。ずっとここに居て」
「私、は。私は人間が憎いです。殺したいです」
「うん。知ってる。わかってる。あーし達は鬼だもの。それでいいんだよ喚き」
「はい。はい。美味サマ。美味サマが欲しいです」
「ん。いっぱい上げる。いっぱい吸って喚き。あーしはずっと一緒に居るよ」
美味は自分の指を噛み切るとその血を喚きに与える。
「美味サマ。美味しいです。とっても美味しいです」
「うん。これからもずっとこの旅は続くよ。ずっとずっと一緒だからね」
俺は鏡を割る。美味の視線が責めていたからだ。
さてこれはどうしたものか。




