第29話 嘆き
俺は夜の森を駆ける。
雷で撃ち出した自身の体を風で覆って音を消す。
そして稲光とともに上空高く舞い上がる。
なるほど、見当は付いた。
「な、なにごとじゃあ!」
「嘆きの鬼切断包丁喚き! ここに推参!」
俺は件の鬼の隠れ家と思しき場所に金棒を打ち込み炎雷で燃やし尽くす。
この姿は先の鏡だ。
俺はいつもの姿だが他からは鉄扇を構えた喚きに見えるはずだ。
やはり鬼の巣窟か。人食い鬼がゴロゴロいるが鬼侍以下だな。
異能を使うまでもなく片付いていく。
喚きのお土産が増えていくな。俺が食うには足りなさすぎる鬼の角だ。
案の定親玉はいない。
好都合だ。お留守番のコイツラは逃げ出す事も出来ないのだろうな。
百鬼夜行にもならない雑兵の群れか。
これは生かしておいても旨くはならんのだろうな。
ーーー
「あなた方は衾爺の知り合いですか?」
俺は喚きの姿で牢を眺める。
老若男女、多数いるな。
見た感じは人間。妖怪ではない。
「アンタ衾の爺様の知り合いか!? 助けでいいんだよな!」
「ええ、勿論。私は鬼ですが」
俺は喚きの姿で牙と角を強調して見せる。
「わぁ! やっぱり衾の爺さまは人間じゃなかったんだ!」
「私らを見捨てたの!? だったらもう鬼は退治されたのかい!?」
「勿論。衾爺の尽力でかの鬼は討ち取られました」
嘘だがな。
「そっか。それであたしらは報酬って事か。だったらあの鬼の最後を聞いてから死にたいね」
俺は黙って牢の扉を破壊する。
「報酬はもう得られました。あなた方の命も含まれます。私の報酬になりたい方はこのままでどうぞ」
「ありがとう! 鬼の人!」
「私は嘆きの鬼切断包丁喚き。人間、見逃すのはこれで最初で最後。次の逢瀬は刈り尽くします。一人残らず」
「わかった! 次にアンタを見かけたら里ごと逃げ出すよ! あたしは椿! もう会わないように祈ってるよ!」
この喚きの姿は情報を得るのに最適だな。
ーーー
さて、俺は水で火を消し止める。
ブスブスと燻る屋敷からノコノコ出てきた鬼を狩る。
しかし、逃げた人間を追う者は無い。
親分の得物には手を付けないという事か。
だがこうもあからさまに逃がすものか?
さて、明らかな罠だと思ったが見誤ったか?
この雑兵鬼の親玉が衾に憑いていた鬼だとすると、
それで終い。
考え過ぎか。
▽
Tips
一般人は稲刈りなどの『刈り』取るで、
倒すべき人間や鬼は狩猟の『狩る』で。
統一します。




