第16話 美味
「ギャアアアア!!!」
いつも喚きの声で物語が始まる。
先の旨味の切れた鬼武器に歯を立てているのだが、歯が立たない。
「お前の歯はもう一つあるだろう。刃の方だ」
それを聞いた喚きは鬼包丁を取り出してトントントンではなく、
コ、キン。コ、キン。コ、キン。
という奇妙な切断音で鬼武器を捌いていく。
「美味サマ! 召し上がれ!」
こいつは自分で食えないものを押し付けるな。
「ごめんね、喚き。あーしは鬼武器が駄目なんだ」
美味が一口サイズの鬼武器を口にするが口に合わない様子だ。
「意外だな。悪食のお前が鬼武器が駄目とはな」
「あーしも意外なんだけど鬼の匂いしかしない。鬼武器は食べても栄養に出来ないよ」
ほう。
確かに俺も旨味を感じるものでなければ口にしないが、
鬼の武器は美味には合わんのか。
「ギャアアアア!!!」
また喚きか。先の鬼武器を吐き出している。
こいつは噛み砕かずに飲み込んだな。
仮にも鬼を武器に加工したものだぞ。
そんなものは俺でも飲み込めんぞ。
俺も残った鬼武器をぱりぽりと食っていく。
やはり粗悪品か。
喚きの方もガシガシと音を立てて噛み砕いている。
そうかこいつは鬼の角初体験だったか。それであの反応か。
ーーー
「美味サマァ~!」
ようやく鬼武器を食い終えた喚きが美味の下ににじり寄る。
見ていると美味の指から血を吸っているようだ。
喚きは美味に鬼にされたが、まだ血が必要なのか。
それを聞くと美味が俺に首筋を差し出してくる。
この前のように噴き出さないように慎重に牙を進める。
噴き出す事は無かったが、その血は飲みたいと思えるほどではない。
だが鬼の匂いがしないな。
喚きの血はどうだ?
「ギャアアアア!!!」
俺は喚きの方も調べてみるがこちらの血は臭い。
不味い。ただの鬼の血だ。
怒った喚きが俺の腕に噛みつくが文字通り歯が立たない。
ほれ、と血を流してやると、
「ギャアアアア!!!」
喚きの喚きだ。
やはり俺の血は駄目なようだ。
美味だけが特別か。
鬼武器を食せない事と関係があるのだろうな。
ーーー
鬼武器とはなんだろうなという話をしていた。
そこで美味が自身の角を刀状に作り上げる。
それを手にして口にしてみるが、旨味の抜けた鬼武器だな。
だが美味い。ぱりぽりとした歯応えに力の流れも感じられる。
やはり美味の出す角は美味だ。
そろそろおかずの領域を超えてきたな。
「あーしは人間こそが美味の元だと思ってるもの」
確かにな。鬼の角が美味いのも人間を食っているからこそだ。
美味が居るのなら鬼は全滅させても構わんか。




